カスタマーレビュー

2020年4月27日に日本でレビュー済み
私事だが、何年か前に祖父が亡くなった。
祖父は亡くなる半年前から病院に入院していた。認知症も患っていた祖父は、入院してから言葉をほとんど発しなくなり、昼も夜もベッドの上で時がわからないまま意識も途切れ途切れの、いわゆる「せん妄」状態にあった。
やがて死を待つだけの祖父に我々家族は、せめてもの慰めにと、iPodに祖父が好きだったクラシックの音楽を入れ、意識の薄い祖父の耳にイヤホンを繋げてあげた。

それからしばらくして祖父の意識は戻った。目も開き、表情が動くようになった。我々が見舞うと、声が聞こえているのか、呻くように返事をしてくれた。
私は長期入院をしたことがないのでわからないが、入院している間は患者にとっては、『誰かが見舞いにくる時』と、『そうでない時』の、2種類しかないと言われている。
我々が見舞えなかった時間に、イヤホンから聴こえてくる耳馴染みだった音楽が、祖父のせめてもの慰めなっていたのであれば良かったのだが、今となっては確かめようがない。

何十年後かわからないが同じように自分が入院し、同じようにベッドの上でただひたすら生命活動を行うのみとなったら、このアルバムをずっと聴いていたい。
点滴と尿瓶に繋がれ、食事もトイレもできず、やがて朝も夜もわからなくなり、病室の天井を見つめ、やがて見つめる気力も湧かなくなり、病室の機械の音しか聴こえなくなった日々となったとき
不意に耳からこのアルバムが流れてくるのだ。

『Bumpy-Jumpy』を聴きながら夏の海を思い浮かべ、『allegretto〜そらときみ〜』で空の青さを思い出し、『Imaginary affair』で何気ない日常の朝を思い出す。

こうして私は、死の淵から囁かな『生』を実感し、自らの青春を走馬灯のように思い出しながら、やがて穏やかに息を引き取るのだ。

11時間を超えるこの『集大成』は、ただのベストアルバムなどではない。
多くの人の、記憶の中にしかなかったであろう『青春』を、改めて『データ』として令和の時代に蘇らせ、保存してくれた、
文字通りの『アルバム』なのである。

老後まで後生大事に残さねばならぬ。
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