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降圧比4倍以上を実現、高効率の非絶縁形コンバータを開発
―次世代の低消費電力型マイクロプロセッサ(MPU)に対応―

2010年9月14日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人 大分大学
TDKラムダ株式会社

大分大学西嶋仁浩助教は、TDK株式会社のグループ会社であるTDKラムダ株式会社(社長:広田嘉章、本社:東京都中央区日本橋)と共に、大幅な降圧比(注1)が得られる高効率な非絶縁形コンバータ(注2)の開発に成功しました。(図1)
 この成果は、NEDOの若手研究グラント(注3)およびマッチングファンド(注4)を活用して得られたものです。
 今回開発した電源は、従来技術に比べて4倍以上の降圧比が得られるのが特徴で、これまで複数の回路で多段階に電圧変換していた電源を、新規考案した技術によって1段階に減らすことで、電源システムの低コスト化と約10ポイントの効率改善を実現しています。
 この成果を活用することにより、コンピュータ・サーバ機器、OA機器、産業機器の省エネ化が実現できるだけでなく、1V以下で駆動する次世代の低消費電力型マイクロプロセッサ(MPU)にも対応が可能となります。また、将来的には、太陽光発電を備えた家庭内直流給電システム(DC48V)や自動車用電装品の次世代電源システム(DC42V)への応用も期待されます。
 この成果は、イノベーション・ジャパン2010―大学見本市(2010年9月29日~10月1日)および、CEATEC Suite(2010年10月6日~10月8日)等で展示が予定されています。


図1 開発した高降圧比非絶縁形コンバータ

(注1)降圧比 : 電源回路によって電圧を下げることのできる割合のこと
(注2)コンバータ : ある電圧から別の電圧に変換する回路のこと
(注3)若手研究グラント : 「産業技術研究助成事業」の一つ。若手研究者を対象に研究開発を助成する事業
(注4)マッチングファンド :「大学発事業創出実用化研究開発事業」の一つ。民間事業者と大学等が連携して行う実用化研究を支援する事業

1.開発背景

 LSIの高性能化が進む中、LSIに電力を供給する電源回路の設計が非常に難しくなってきています。これは、LSI動作電圧が、LSIの高速化と低消費電力化を両立させるために年々低電圧化していることが原因の一つです。例えばパソコンなどに利用されているマイクロプロセッサ(MPU)の動作電圧は、1997年当時は2.4Vでしたが、現在は1V前後に下がっており、2015年には0.6Vまで低電圧化が進むと予測されています(図2)。これに対し、現在、LSI用電源として一般的に用いられているバックコンバータでは、1V以下へ降圧することが容易ではなく、電力効率の低下などを招いています。
図2 LSIの動作電圧

2.特徴

低電圧・大電流出力0.7V~1.8V / 40A
高効率91%(12V入力 / 1V出力)
90%(24V入力 / 1V出力)
高降圧比対応24Vや48Vの入力からダイレクトに1V出力
過電圧保護内部素子短絡故障でも出力過電圧を防止
その他の機能出力電圧トラッキング機能
ON/OFF機能
用途コンピュータ・サーバのMPU用電源
OA機器・産業機器用電源

(1)低電圧・大電流出力

 LSIの高性能化に伴って、LSIの電圧は1V以下に低電圧化し、逆に消費電流は大電流化が進んでいます。これに対し、新コンバータでは、0.7V/40Aの低電圧大電流出力を実現しています。

(2)高効率

 新コンバータの電力効率は他社のバックコンバータに比べて12V入力/0.8V出力において6~10%改善されます(図3左)。また、新コンバータの入力電圧を24Vに上げたとしても、12V入力のバックコンバータに比べて3~5%高い効率を維持します(図3右)。

図3 バックコンバータとの電力効率比較

(3)高降圧比対応

 新コンバータは、24Vや48Vのような高い入力電圧から1V以下へダイレクトに降圧できるので、通信機器や産業機器から電源の構成数を削減することが可能となります(図4)。また、電源システムの効率が10%程度改善されるので、電源からの発熱も約40%低減できます。

図4 システムとしての電力効率比較

(4)過電圧保護

 従来のバックコンバータが故障すると、LSIの電圧が入力電圧まで上昇するので、LSIが壊れてしまいます。新コンバータでは、回路内のコンデンサが入出力の短絡を防いでくれるので、LSIを過電圧から保護することが出来ます。(図5)

図5 故障時の過電圧保護機能

3.今後の展開(予定)

 新技術は将来的に、太陽光発電を備えた家庭内直流給電システム(DC48V)や次世代自動車用電装電源システム(DC42V)への応用も期待されます。現在の交流給電方式では、図6に示すように、太陽電池パネルからパソコン内部のCPUに電力を供給する場合、6段階の電源回路を経由する必要がありました。これに対し、新技術を用いた直流給電方式では、電源を3段階に減らすことが出来るので、低コスト化やACアダプタレスが実現できるだけでなく、電源システムからの電力損失を大幅に削減(65%減)できます。

図6 太陽光発電を備えた直流給電システムの電力効率

4.お問い合わせ先

(本プレス発表の内容についての問い合わせ先)
国立大学法人 大分大学 工学部電気電子工学科 助教 西嶋 仁浩
TEL: 097-554-7853  FAX: 097-554-7853
E-mail: 

TDKラムダ株式会社 技術統括部 先行開発部 九州R&Dセンター 富岡 聡
TEL: 092-683-4471  FAX: 092-683-4471
E-mail: 

(NEDO制度内容についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 技術開発推進部 若手研究グラントグループ 鍵屋、松﨑
TEL: 044-520-5174
NEDO 技術開発推進部 イノベーション実用化推進グループ 角田、真鍋
TEL: 044-520-5175

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報室 田窪、廣瀬
TEL: 044-520-5151