新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 従来より感染力が強いとされる新型コロナウイルス変異株の感染者が栃木県内で相次ぎ確認されたことが24日、県内医療関係者などへの取材で分かった。県が既に公表している英国株とは別の変異株で、3月に入り県内在住者5人から検出された。5人はいずれも重症化していないという。関係者は、県内でこの変異株の感染が広がりつつある可能性を指摘し、「引き続き現状の感染対策を心掛ける必要がある」と呼び掛けている。

 今回確認された変異株はどの国から国内に流入したか不明で、「E484K」と呼ばれる変異が起きた株。県内在住者2人が感染したと県が発表した英国由来とは別の型だ。

 県北の感染者受け入れ病院が獨協医大と連携し、ウイルスの変異を特定する「ゲノム解析検査」の機器で調べた結果、今月22日、入院する陽性者2人から検出された。

 このほか、インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)が6日以降に診療した3人からも検出され、別の病院に入院するなどした。国立遺伝学研究所に解析を依頼して、見つかった。

 獨協医大の矢澤卓也(やざわたくや)病理学講座主任教授によると、今回の変異株は2月以降に東京都や新潟、千葉県など国内で計90件見つかっているという。

 国立感染症研究所の公表資料では、今回の変異株はワクチンの効果を弱める可能性が指摘されている。ただし、同大の増田道明(ますだみちあき)教授=ウイルス学、微生物学=は「従来株より感染力が強い可能性はあるが、強毒化(病原性が強化)している証拠はなく、過度に恐れる必要はない」と強調。「県内で新たな変異株が広まりつつある状況を踏まえ、現状の感染対策をしっかり続けるべきだ」と呼び掛けた。

 倉持呼吸器内科の倉持仁(くらもちじん)院長は「県内でかなり広がっている可能性がある。数が少ない今のうちに徹底的にデータを集め、拡大を抑え込まなければならない」と早急な対策の必要性を訴えた。