肝ぽん
肝ぽん
2011年冬[道場旬皿]もてなす心に触れる料理
和と生野菜の出逢い
伝説の人気料理
肝ぽん
河豚身皮 鮟肝 白菜 ぽんずタレ
常盤家時代の機転で生まれたサラダ風料理。
道場流転換期のきっかけにもなり今なお人気の一品。


肝ぽん01
「肝ぽん、やるか」と呟くと、即座に隣で「白菜サラダですか?」 と宮永料理長が応える。このやり取りで厨房はざざっと動き始めます。
肝ぽん02
奥では既に白菜の処理が始まってました。
「白菜!」の声に、即座に取り出された芯の部分はスムーズに料理長に手渡されます。
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それをざくざく切って深めの鉢にふっくらと盛り上げる道場六三郎の素早く優しい手の動き。
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例の柔らかい道場流鮟肝です。
肝ぽん05
日本料理では三寸に切るというのでしょうか。鮟肝は食べ易い、無理せず口に入る大きさになっていきます。
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ふっくらした白菜の上に鮟肝がちりばめられ・・・・
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河豚は素早い手さばきで薄く引きます。実にリズミカルで正確。
そして包丁の動きと左手の動きのコンビネーションが実に美しいです。ぜひ動画で見ていただきたいシーンです。
肝ぽん08
少し悩んで今回は・・・河豚の身は見た目と食感を楽しむために湯引きにすることにしました。
薄く引いた河豚の身を自ら湯に放り込んで、さっと上げて、氷水に落とし、若い衆に渡す。速い。収録した映像で測るとおよそ5秒。
肝ぽん09
昭和30年代のことです。「僕が常盤家(ときわや)でチーフをやってたときに、当時まだ青年代議士だった山中貞則さんが、60人くらいのお客様を連れてきて河豚を注文されたんですよ。そしてさらにおかわりって注文されて・・・」河豚60人分の仕事はちょっとやそっとではありません。さてどうしたものかと考えた末に、この「肝ぽん」が生まれました。
「白菜の芯の柔らかいところをぶつ切りにして、身皮とかとうとうみとか、河豚をぶつ切りにして、あさつき、ポン酢おろしで和えて。それで、それでだけじゃあれなんで、その時ちょうど鮟肝があったんでそれを刻んで出したんですよ。当時は和に生野菜って珍しかった。」
1993年10月。初めて「料理の鉄人」に出場した時、フォアグラ対決でこの料理をアレンジした「フォアグラの肝ぽん」を披露して勝利しています。対戦相手は服部幸應氏。フォアグラに良く似た日本の食材は何かと考え鮟肝を使ったのですが、逆にこのとき日本料理に縛られていてはだめだと強く感じたそうです。そういう意味では確かに料理の鉄人は道場流の転換期だったのかも知れません。
でも昔から、それも少年の頃から今も尚変わらない道場流もあります。この常盤家の伝説が伝える、逆境に立ち向かう強さや想像力、機転、それから闘争心の源は?それは「商売魂」なんじゃないかなと、それもセンスの良い。お客様に満足していただく料理を出すという「道場流ビジネス」に私たちは圧倒されている気がします。そういえば、子供の頃からリンゴを仕入れてきて売ったり、かつては店のコーナーにエレクトーンを置いて客が歌えるようにしたりと、いろんなユニークなエピソードが線のように、、、やっぱり繋がりますね。
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美しく白い河豚の身を散らし、
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これもまた美しく透き通る河豚皮を散らして。
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「長いあさつき!」と道場が要求すれば、料理長は厨房の奥に「あさつきそのまま持って来い!」手渡されたあさつきの束の長さを慎重に測って包丁を入れます。
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凛とした冬らしい景色になってきました。料理長が言った通り、これは品のいい、そして和の冬の風情をたっぷりと楽しませてくれそうなサラダですね。
「昔、こればっかり注文する銀座の女性がいたんだよ。いまでも人気のベスト料理だね。」とちょっと照れくさそうにそしてほんの少し誇らしげに笑う笑顔が素敵に子供っぽい。
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ポン酢にニンニクを少々。さっとかけ回します。
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紫芽(むらめ)と白ごまを振りかけて出来上がり。
他のいくつもの料理を作りながら、この料理にかかった時間はほぼ5分。常盤家での伝説、「それが困難でも、客に悟られず、客を待たせず、客を満足させる」という「道場流ビジネスの極意」がさらっと実証されてしまいました。


公開まで今しばらくお待ちください。お楽しみに。
活魚秘伝ダレ