#4、文化祭の展示決め投票
秋の文化祭の決定についての物語。もう少し続く。
[秋の文化祭の投票]
大前提、誰かが提案をしない限り、文化祭は適当に済ますという暗黙の了解が西高には存在する。多くの学校で自然発生して、伝統みたく居座ってるアイツのことだ。
だから例年の文化祭の規模や内容は、全国のを平均した値に近いもので、つまり無難な物になっている。が、今年は多少気合が入ってるかもしれないな。うちのクラスの担任、宮沢先生が授業する先々で『ウチんクラス、今年どえらいのやっからな、覚悟しとけや、お前等。絶対負けんわ』と煽ってるらしいのだ。はっきり言って迷惑だからやめてくれ。
あと西高の部活は数こそ少ないが質はいいからな。体育館で行われる、中国雑技団じみた演技は期待していい。えっと、長々と説明したが、結局何が言いたいか。
今年は盛り上がるってさ、ってことだ。
勘違いしないで欲しいのは、ハナから俺のクラスが、やる気満々!だったんじゃないこと、そしてそれは今も変わらないということ。言い換える。ウチのクラスは依然としてやる気無し、である。悲しいかな、文面に起こせばこうなった。
大体、自作映画とやらに積極的に名乗りを挙げたのは三人だけ。後の二人は本意ではない。他の奴らは知らない、部活がどうとか言って逃げた。だから少なくとも文化祭準備期間まで、————————————夏休みから秋までは、五人だけで撮影する必要があるのだ。おい、押しつけもいいとこだろ!
なんで、そんなクラスで映画製作が採用されたかって?
あれは遡ること二週間前、————————————うちのクラスも歴史ある伝統に倣って、写真展示とか、アンケート調査とか、暇で労働力も少なく無害で安全な案が多数挙がった。
「はーい」
「はい、どうぞ。…………赤川さん」
学級長の鋭い声。赤川ね、赤川はそうだな。あんま話したことないが、多分良い奴。良い奴そうな雰囲
気が漂ってる。性別は男。
「写真展示、どうでしょう」
「しゃしん展示」
書記の気の抜けた声が復唱。
白いチョークで箇条書きにしていくのは書記の原さんだった。…………箇条書きだと見にくいな。よし顔を少し左に傾けるか。原さんは背が低いから、最初の方は背伸びしてつま先立ちしてたのを、徐々に諦めて下の方に描き始めたので、黒板には右から、左に傾いた箇条書きが生成されていた。やや左に傾いた視界だと斜体に見えなくもない。学級長にまかせりゃいいのに。微妙に身長高いし。
「あ゛ーい」
「どうぞ、吉井さん」
学級長の冷たい声。吉井ね。吉井はそうだな、話したことないが、悪い奴じゃない。赤川と仲がいい。性別は男。
「アンケート調査」
「あんけーと調査」
どんどん下がってる。遂には、一番前の山崎と重なり俺にとっての死角になった。いうて、部分的に見えるがな。その山崎は腕組をして考え事をしてる。良からぬことを考えてるに違いない。静寂が訪れた。
順調だった発言の流れが止まったのだ。
なるほど、ネタは出尽くした。いや、それかココが落としどころだと踏んだか。俺もそろそろ決めとくか。………………こん中だったらアンケート調査かな。選択肢は七個。ざわざわと何にするか探り合う声が押し寄せる。声の断片から察するに、やはりアンケート調査が多いようで、決まりだな。
「投票に移ろうと思うのですが、他に案はありませんか?」
「……………………ありませーん」
なるほど。
「では投票を、」
「いやあ、待ってくださいよ。学級長、提案が」
よく知る野太い声が急ブレーキをかける。そのタイミングで待ったをかける奴、人生で初めて見たかもしんない。言いたいことがあんならもっと早めに言えよ。
そしてその提案こそが味噌だった。
「映画製作なんてどうでしょう」
ブザービート(?)
山崎が提案した案こそ、映画製作だったのである。
今日は本当にこれで終わりです。
こう、なんか。あんま楽しくない。
でも書ききりたいです。