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紙川涼は探偵じゃない〈物語の限界・不可能推理〉~罪のアントは罰である、何故なら罪とは罰されない事であるから、ならば俺が罰することは罪なのだろうか?~ 現世ッ、推理無双!! 作者:高黄 森哉
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#7、人物紹介

人物紹介のパート。ここまでで世界観説明は終了。


 [消極的「主演俳優」決定戦]



「あ゛ぁ、うん゛、よし、————————————今日も、お知らせないかあ」


 担任の宮沢が咳をした後にそんなことを問うと、すかさず学級長が挙手をした。


「ん゛、高峰さんどうぞ」

「文化祭の配役を決めておきたいのですが、お時間もらえませんか」


 といって、ぐるっと皆の方を見る。同意を求めてるのだろう。


「あ、どうぞ」


 後ろにいた春日君がボソッと答えた。

 文化祭の方向性が決まって四日後の、帰りの会のこと。早速、司書の作哉さんに外注した映画のプロットが完成したらしく、現時点で出来る配役を決めちゃおう、となったのだ。


「では、男子二人、女子二人、誰か希望する人はいませんか」

「……………………」


 いないわな。投票した彼らの大部分は『人に任せておけば何とかなるだろ』の精神なわけで、ははぁ、難航しそうだ。かくいう自分もそうだから、あんま人のコト言えないな。俺も皆と同じく冷めた態度を取ってるのさ。それが学生のトレンドである。そんな気だるげの教室を、チョークの音だけが進んでいく。カッカッカッカ。

・女子A

・女子B

・男子C

・男子D

 書き終わって暫く、不備に気付いた書記が男女の欄の右に付け足す。

・監督→山崎英雄

 山崎英雄ねえ。所属してる部活は映画研究部。体形は巨漢、縦に長く、横に広い。性格はいたって真面目。今回の件は、文化祭を通して新入部員を獲得せねば、とかいう彼の部長としての焦りが発端である。

 彼曰く。


「部活はそもそも三人だけだった、が、————————————先輩が受験で抜けたせいで、今、オレ一人なんだぜい、部員がよ。このままだと同好会に格下げか、う゛う゛、何とかせにゃならん」


 らしい。

 あっそ、それに俺のクラスを巻き込むなよ。


「はぁーっい!」


 ラジオ番組のナレーターに『元気よく』と指示されたように、五百ジュールの明るさで弾き出すのは、…………七咲だな。最初に立候補したのは七咲美咲だった。

 カッカッカッカ

・登場人物A→七咲美咲

 七咲美咲、演劇部次期部長候補とか、まるでヤクザみたいな肩書を持つ彼女はエンドロールかどっかに部活の宣伝を入れることを目論んでいた。キャツめ、その肩書から候補を消すつもりか。これだけだと味気ないので、付け加えるとすれば、俺の幼馴染である。これ以上の情報が欲しいなら安田へGO。個人情報と引き換えで教えてくれるだろう。

 お勧めしないが。


「はっ、なに!?じゃあ、俺も、な、なぁ、原。俺もっ」


 カカカカカカカカカ

 安田と呼応するように焦って書く。落ち着け、その行為、何の意味も無いぞ。

・登場人物C→安田孝

 噂をすればなんとやら。安田が名乗りを挙げた。…………七咲につられる形で。安田、その真っすぐな、恋心を隠そうとしない姿勢は認めようぞ。だが、七咲とは相手を間違えた。というのも、七咲はだな。

 う゛、なんか見られてる気がする。この話はあとにしよう。

 えっと、この時点で三人名乗りを挙げたが、こいつらが特殊なだけで、あとに続こうとする酔狂な奴は、ケほども残っていない。

 視線感じるなと思ったが、あいつらかい。順に確認すると、やはり三人が念を送っていた。

 いや、お前等には利益があるかもしれないが、俺はないから。超能力者じゃあるまいし。凝視したって俺はココから動かんぞ。1mmたりともな! 俺も視線でその旨を伝える。お、帰ってきた、七咲からだ。え、『来ないと殺す?』よし、見なかったことにしよう。

 無視。


「………………………」

「ジャンケンにしよー」


 誰かが、そう提案する。『賛成ー』と所々で聞こえた。学級長が呼び掛け、全員一致を確認したのち(校則である)、男女別の輪を作る。教室の後ろへぞろぞろと集結。誰かの掛け声が、開戦の合図だった。

 息を吸う。

 スーーーーーーーー


「最初はグー!!」


 来た。

 俺もその声に便乗。誰かの声に重ねる。


「ジャンケン!!!」


 ぬっ! この速さ。ならアレが使えるか?

 説明しよう。ジャンケンに限らないが、人間、焦れば焦るほど、追い詰められればそうなるほど、戦闘態勢、いつでも手を出せる態勢、つまりグーを出しやすくなる。が、しかしこれは既に一般論。世に広まりすぎた。

 パーのカウンターでチョキを出す奴が、大半と予想。

 じゃあ、選ぶべきはグーだろうか? しかし今回のルールは貧乏くじの負け残り戦。なら安定を取るのが最適解。つまりチョキ出しで安定。多数派であり続ければ仮に負けても保険が多い。因みに本気で勝ちに行く場合は後出しを狙うとよい。集団戦では結構バレない。後出しは卑怯だと思うから今回はしないが。


「ポン!!!!」

「…………まじか」


 ジャンケンほど平等な不公平はない。………………まさか、一戦目、ストレート負けとは。今回の勝負で分かったことは、意外にもクラスの男子は素直である、ということだ。『ドンまーい』と慰めの言葉が飛んでくる。俺は適当なリアクション芸で流した。

 男子は決まった。

 カッカッカッカ。

・登場人物D→紙川涼

 女子の方は小競り合いがあって、仲裁という形で学級長が引き受けたとか。流石だぜ。学級長の人望はこういうとこからだろうな。

・登場人物B→高峰美麗

 確か、詩丘さんに台本を依頼したのは学級長だったか。

 そう、混乱してはいけない。俺が説明しよう。

 もともと、先述の通り、司書の作哉さんに外注したのだが。不幸なことに長年患ってた持病が急に悪化し、現在、入院中。その地点では、配役と骨子しか出来ていなかったので、映画製作が行き詰まったのだ。

 そこで!代打として、詩丘さんに台本制作を依頼したのである。裏でどんなやり取りがあったか、それは不透明である。想像するに、転校生である詩丘さんが学校に馴染むように、気を回したのだろう。学級長の匠な心遣い、劇的である。

 ただし。一つ条件として、ストーリを一新したいとのこと。かなり思い切った提案だと思うが、学級長の言葉を借りると『熱意を感じたので思わず了承してしまった』らしい。某、通話用アプリの自作映画製作委員会なるコミュニティーからの引用。んで、作哉さんに連絡を取って、配役そのまま、書き直したってわけだ。


 映画製作ねぇ……………………。

 と言っても、ハンドカメラで撮影する、チープなものだが。



 ようやく前置きが終わり、これから物語が動き出します。ややこしい、話なので、簡単に説明できるよう努めます。

 

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