#11、七咲^3
七咲と出会う
そんな感じで下駄箱から左に伸びる廊下を不審者しながら歩く。すると、右手の壁が急に途切れて、円形の吹き抜け構造が姿を現す。手前の変わった階段を登ってちょっと行くと、待ち合わせである二年B組教室だ。
変わった階段。
明らかな脱線だが、俺の知識欲が声となって内に響き始めたので仕方ない、説明しよう。そうだな、台形を想像してほしい。坂になってるとこは階段、平行になってる辺は踊り場だ。踊り場の奥行きは階段の横幅の二倍とちょっと。そして、踊り場の奥まったところに階段が線対称に生えている。
分かりにくいって?
じゃあこうしよう。
真正面から見るとXの中心を水平に伸ばした感じ。鳥瞰してみると、Hの真ん中の線、即ち踊り場な、を太くした感じかな。
とにかく西高の校舎は変わっていた。
そして、吹き抜けの真下は一段、天井と同じ形に下がっているのである。その段差、吹き抜け下と廊下の境、その段差、ちょこんと座ってパンを
見るからにおとなしそうな感じ。だが、ちょっと待ってほしい。
まず茶髪。
天然ものだと主張してるが、それは無い。こいつは中学の時まで真っ黒だった。そうまるで、持ち主の心が練り込まれたかのような、カラス色。
次に髪質。
大人しそうな技術者の父親、その遺伝子を色濃く受け継いだ直毛だった。ウェ~ィ!ブでは無かったな。持ち主の心と相反するような、竹を割ったような直毛だった。
騙されてはいけない。
そうだな、安田風に言えば『花に擬態した、カニ蜘蛛の一種』なのだろう。
分かりにくい?
ならこうしよう。
『デイジーが一面に咲いてる塗装を施された、デイジーカッター』
気をつけろ、騙されてはいけない。ぬぉ、安田が不用意に爆弾に近づく。
「おっース、七咲さんじゃないっスかぁ。おはよっス。それ、パン、っスか?」
なんだその、スかした口調。…………ってかパン以外に何に見えたんだよ。わざわざ聞く必要性が皆無だろ、そんなん無視しろ。バッチいぞ。
「安田君、おはよー。これ?そうそう、パンだよー。早く学校についちゃってさー。鍵もないし、閉まってるしー、なかなか来ないから、パン齧って待ってたんだよねー」
ふん、先制攻撃、ボムアウエイだ、この野郎!
「太るぞ」
「あ゛ぁ?今なんつった?」
俺を下から睨みつける眼光は完全にネコ科のそれだった。隣の安田が目を丸くしてる、山崎もだ。ふっふっふ、策にかかったな七咲。いいか、これがこいつの本性だ。と言おうとした矢先、七咲が仕掛ける。
「っあ、違うよ。安田君。コーユーネタだから。ねー、紙川!」
ッ無駄に抵抗してみる。落ち着け俺、信管を叩いて渡るという奴だ、慎重に、慎重に叩け。深呼吸。
「………………………………スゥー―――」
「早く同意しろよ」
イライラとそう言った。???? なんのことやら。
気づけ、安田。今ので分かったろ。コイツの本性がよ!
「安田君。何度も言うけど、こういうネタだからね」
「っあ、そーゆー。流石っス!さ、流石、演劇部部長候補っ!!!」
「いやいや、それほどでもー」
安田はもう見捨てるしかない。でも山崎、信じてるぜ。
「お゛お゛っ。お世話になってます、姉貴ぃ゛」
「え? 山崎君。ネタだよね? ソレ」
駄目だこいつら救えねぇ。
ダッシュの文字が環境依存文字だと判明しました。いま、工事中です。