#14、高峰美麗は無口じゃない
学級長と劇について話しこむ。
………………そうか、俺のか。
どうやら暑さで思考が鈍ってるよう。どうにも夏は苦手。雰囲気暗いかね、好きなのは。暑い、水でも被ったらすっきりするだろうか。休み時間、蛇口で冷やしとこう。
台本を読む。紙川の下に矢印、そして友田慎太郎と名前が入っている。友田慎太郎、名前からはどんな輩か、毛ほども想像できないが、まぁ友達にはなれそうだな。山崎や安田、七咲と違って、詩丘さんにとって俺の性格は、又聞きではなく直接知ってるし、予想だがコイツの性格は俺に似せてあるだろう。そのほうが演じやすいんで、そう願う。でも、あの詩丘さんなら逆を行きそうだよな。
逆か、
俺がどんな奴なのか主観でしか知らないから、俺の逆は分からんが、周りを見てみれば、アホっ子学級長、冷静で冷徹な安田、細身の山崎、ヤンキーの七咲、がそれにあたるのだろう。おっと、最後のは本性だった。じゃあ、ヤンキーだけど素は大人しい七咲かな。
こうして並べてみると見たい気もするし、そうでもない気もする。
アホっ子学級長が一番見てみたいな。対岸の学級長を見る。すると、台本をパラパラさせていた。風を送ってるのかな? 今日、暑いし。んなら、仕方ない。一見すると無邪気な動作に見えたのだが、そうでもなかったようで、学級長は口を開く。
「これで全部でしょうか?」
俺に一言。つまりなんだ? 俺、これ以外の台本はもらってないが。
「全部って、多分な。詩丘さんにもらったのは、これで全部だし、あとそういや、完成だっ、つってたから、これ以上もないんじゃないかな」
「なるほど、じゃあ、ラストは読者への挑戦って形になりますね。………………これでもいいですが、後味が悪いのと、消化不良を感じます。不完全燃焼っていうか」
………………なんと、さっきのパラパラで完全把握したらしい。いわゆる、速読、ってやつな。精読に比べると、遥かに劣るが、こういう時は使えなくもない。俺も練習しようか。
「速読ってのですか? 学級長」
「いや、どちらかというと、映像記憶です。文字を情報に置き換えるというより、文字の形を覚えるイメージで」
「へぇ、じゃあ、暗記パンみたいですね」
「うーん、そうかな」
あと全身の骨格が金属で出来てそうだ。是非とも今度、電話帳で試してもらいたい。
そういや、さっきボリューム不足とか、煮え切らないとか、そんな感じのこと言ってたな。まだ読んでないから、判断しかねるが。あと、読者への挑戦だって? ————————————聞いたことあるようなー、ないよーな。なんだったか? 脳みそから疑問が液体金属のように流れ出して舌先を濡らす。うーん、あー、えっと。喉元まで来てるんだが。
ギブ、聞いてみる。
「えっと、あー、高峰さん。読者への挑戦ってのはつまり、なんでしょうか」
「………………この場合は、視聴者なんですけどね」
「ははぁ」
自作映画だもんな。
「ミステリーの手法でして、答え合わせの章の前とかで、事件を整理して、受け取り手に、見せるんです。それを使ったら解けますよ、みたいな? でも映像作品では余り、聞きませんかね」
「答え合わせのショー。アレか、探偵が集まって推理しあう」
つまり推理ショー。なるほど、理解、理解。
「そうですそうです、推理大会の場合もありますよね。噛ませ犬が出てくるのが、お約束なんです」
噛ませ犬。
「話を戻しましょう。私、思うのですが、今回の映画、種明かしが無いのは尖りすぎてるかなって。………………そこらへん、また詩丘さんと相談しておきましょうか。えっと、詩丘さんは?」
「お、詩丘さんと言えば、図書館に用事があって、今日来れないそうですよ」
「ん。了解しました。そう言えばそうでしたね」
なんか、学級長、よくしゃべってるな。もっと無口なイメージがあったが、学級長。ミステリとか、好きなんかね? ほほぉ、新鮮。
「次回までには、頑張って許可、取っておきます」
「そうっすか、了解です」
次回、集まるのは三日後だから、十分時間がある。頑張らなくても取れるさ。まったく、真面目なんだから。いいことだ。
「つおいっ!紙川ぁ」
「ああ?なんだ」
「準備しようぜぇ!」
安田が声をかけると、学級長は委縮したように一歩下がった。相性悪いな、水と油か。俺というより安田が嫌いなのかもしれない。そりゃあ、奇遇だ。ってか俺、あいつと一緒に行動してたから、きっと学級長に一緒くたにされてたんだな。
「じゃあなあ、あっしが、指示を取りませう。ミンナ、俺に従ってくれい!」
山崎が喉仏を震わせる。
「おうよ」
まず俺が答える。続けて、
「うっし!」
「はぁーい!」
「はい」
三者は三様に返事をした。
粗筋はなかなか気に入ってるので、暫く改良しながら使いまわしそうです。スマホは画面比率的にxxの文字が余るかもしれません。あと暑いが熱いに変換されてしまっていたことを発見しました。ブルー・デビルと言う奴に飲まれそうです。