随分前になりますが、朝鮮からの引き揚げ体験を描いた、藤原てい著「流れる星は生きている」を読んだことがあります。これは、幼い男の子供たちを連れた母親てい氏の記したものでしたが、本書は、敗戦時11歳の川嶋擁子さんが著した母親と姉との3人の体験記録で、その時離れ離れで後から生きて帰れた兄の記録も同時に記されています。言わば、戦後の朝鮮半島の混乱状態を子供の目線から見た貴重な体験記です。
この本の続編「続・竹林はるか遠く」で『今でも悲しくてつらい過去を振り返ると、しばしば身震いする』と擁子さんが語っているように、感受性豊かな小学生高学年の女の子がこれ程克明に記憶しつつ、体験の過酷さを克服して、戦後からかなり経過した1986年に異国アメリカで英語本で出版された運命の巡り合わせに驚きました。もっと擁子さん自身が幼かったら、体験を共有していた家族がいなかったら、などと『もしも』の仮定をすると、この本の存在も難しかったことでしょう。
母国日本の敗戦を、遠く離れた外地―朝鮮半島の北部羅南―で迎えた家族が、父や兄と離ればなれになり、命からがら釜山を目指して一歩一歩前へ歩んでいく、その間のことだけでも、「この先一体、この家族は無事だろうか」と同じ人間として深い痛みや共感を覚えハラハラしながら読んでいきました。 しかしながら、本を読んで一番感動したところは、未だ幼い擁子さんを含め、母親サキさん、姉の好(こう)さんの3人が生死が問われる中で家族愛、人間の尊厳や労り、誇りを持ち続けていたことです。極度の飢えや疲労だけでなく、暴徒と化した人間たちの暴行や強姦への恐怖の中で、川嶋家の人はよくぞ人間性を保持していたと思います。ここでは述べるのを省きますが、それがはっきりと感じられるところは各所に書いてあります。日常でお父様、お母様と呼んでいる擁子さんの言葉づかい、食べるものもない状況の中で家族三人が取り交わす言葉遣いや思いやりには、地獄の中の蓮の花を見るような感じでした。
同じ朝鮮人といえ、敗戦に乗じ、虫けらのように日本人を殺す人間たちがいるかと思えば、兄の淑世の命を救ってくれ、これから家族として一緒に住もうと言ってくれた朝鮮人の金さん家族がいました。2006年に在米二世韓国人が、突然非難し始めた理由として「日本人を被害者にして、朝鮮人民の被害、犠牲、苦痛を書いていない」などという受け取り方はピント外れだと思います。
擁子さんはこの日本語版刊行に寄せて「平和を願うために」書いた、と言われています。上記の的外れの問題提起があったものの、今回このように日本語で出版されたことは戦争体験のない人で占められつつある日本の現状を考えると、とても有意義なことだと感じます。アメリカで副教材として多くのアメリカの子供たちが読んでいる本だと言われていますので、是非日本の学校でも読んでもらいたい本です。
竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2013/7/11
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本の長さ236ページ
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言語日本語
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出版社ハート出版
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発売日2013/7/11
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寸法18.54 x 12.95 x 2.03 cm
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ISBN-104892959219
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ISBN-13978-4892959219
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商品の説明
出版社からのコメント
youtubeで本書の内容を紹介した動画をごらんいただけます。
【動画】竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記
http://www.youtube.com/watch?v=OvpMNB9dnnY
「竹林はるか遠く」感想文に見る壮絶な引き揚げ体験
http://www.youtube.com/watch?v=zIu5RKuUSrs
【動画】竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記
http://www.youtube.com/watch?v=OvpMNB9dnnY
「竹林はるか遠く」感想文に見る壮絶な引き揚げ体験
http://www.youtube.com/watch?v=zIu5RKuUSrs
内容(「BOOK」データベースより)
終戦直後の朝鮮半島と日本で、日本人引き揚げ者が味わった壮絶な体験を赤裸々に綴る、息もつかせぬ、愛と涙のサバイバルストーリー。
登録情報
- 出版社 : ハート出版 (2013/7/11)
- 発売日 : 2013/7/11
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 236ページ
- ISBN-10 : 4892959219
- ISBN-13 : 978-4892959219
- 寸法 : 18.54 x 12.95 x 2.03 cm
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 304位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 1位戦記・体験記
- - 3位日本史一般の本
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
2015年6月27日に日本でレビュー済み
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役に立った
2018年10月13日に日本でレビュー済み
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「二日市保養所」や「通州事件」などに関して
詳しく書かれた書籍は怖くて読む気になれないという人に
是非お勧めしたい
柔らかな文体で書かれているため
おどろおどろしい体験談も若干ではあるが恐ろしさが和らいでいる
ただし、悲惨を極めた体験談であることに変わりはない
本書の著者であり、主人公である「擁子」
そして、その母親、兄、姉が朝鮮半島から引き揚げてくる時の
体験が綴られているのだが
「よくもまぁ、こんな苦難を乗り越えられたな」と
驚くことばかりだ
本文中に出てくる「共産軍」というのは
ソ連赤軍の配下にあるパルチザンのことだろう
この共産軍の追手から逃れ、無事に日本に辿り着くわけだが
京都駅で待ち受けている悲劇は、涙無くして読めない
私は、「現在、中国とは事実上戦争状態にあり、一旦緩急有れば武力行使もやむなし」
との考えの持ち主であるため
単純な「反戦平和思想」に与する者ではないが
やはり、戦時中の非戦闘員の悲劇は
このような良質な書籍などの形で後世まで語り継がれていって欲しいと思う
なお、本書が米国で教材として採用された時
韓国系の市民から反対・批判が相次いだそうだが
所謂「反韓」、「嫌韓」、「反朝鮮」の記述は一切無く
それどころか、朝鮮人に対する好意的な記述が散見される
ただし、共産主義者の朝鮮人は除く
詳しく書かれた書籍は怖くて読む気になれないという人に
是非お勧めしたい
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そして、その母親、兄、姉が朝鮮半島から引き揚げてくる時の
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「よくもまぁ、こんな苦難を乗り越えられたな」と
驚くことばかりだ
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ソ連赤軍の配下にあるパルチザンのことだろう
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京都駅で待ち受けている悲劇は、涙無くして読めない
私は、「現在、中国とは事実上戦争状態にあり、一旦緩急有れば武力行使もやむなし」
との考えの持ち主であるため
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なお、本書が米国で教材として採用された時
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所謂「反韓」、「嫌韓」、「反朝鮮」の記述は一切無く
それどころか、朝鮮人に対する好意的な記述が散見される
ただし、共産主義者の朝鮮人は除く
2015年2月24日に日本でレビュー済み
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羅南を出て釜山に向かわれている際の話は身の毛がよだつ思いで読みました。
授業や教科書では知ることのできなかった貴重な証拠です。アメリカでは教科書にも載っていたというのに、なぜ日本では載っていないのか不思議です。一度読んで欲しい本です。
授業や教科書では知ることのできなかった貴重な証拠です。アメリカでは教科書にも載っていたというのに、なぜ日本では載っていないのか不思議です。一度読んで欲しい本です。
2015年7月3日に日本でレビュー済み
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駅構内で雨風に耐え今日の食糧に困窮しながら暮らす少女達の脇を、空襲を免れ当時の日本としては奇跡的とも言える「日常」が残っていた京都で普通に仕事や家庭を持つ人達が通り過ぎる。彼らの目には少女たちはただの「ぼろ人形」。あの頃は他人を助けている余裕などなかったとよく聞く。もちろんそれは事実だろう。でも結局人間は今も昔もそんなに変わっていないではないか。
駅に寝床をつくりゴミ箱から拾ったみかんの皮を食べながらも、学びだけは譲れないと二人の娘を絶対に学校に行かせる母。ああ、こういう母が今の日本を作ったのだと感動した。
駅に寝床をつくりゴミ箱から拾ったみかんの皮を食べながらも、学びだけは譲れないと二人の娘を絶対に学校に行かせる母。ああ、こういう母が今の日本を作ったのだと感動した。
2014年10月18日に日本でレビュー済み
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第二次世界大戦で日本が敗れ、それまで日本軍として戦っていた韓国の軍人が避難する日本人を襲い金品を奪った。それを逃避行の途中で目撃し、この本の中にそのことが書かれています。ヨーコ・カワシマさんもとても大変な経験をしながら日本に辿り着きます。本の内容に韓国が反発、結局教科書から「竹林はるか遠く」削除されました。子供の目で見た真実を認めない人達に怒りを感じました。
2018年1月27日に日本でレビュー済み
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この本は、史実本として読んでも感慨深いが、物語として読んでも波瀾万丈で、まるで映画のようです。 映画化されて、道徳の授業で放映されても良いものだと思うのですが、今の日本では実現しないでしょう。
わたくしの曾祖父母や祖父母は出兵したりして戦中を生きた世代になるのですが、幼少時の優しかった場面を思い起こすと、どう例えたら良いのか解りませんが、優しさに「命に近い」感じがしました。 この本を読んで、当時の人は、人付合いの、その全てにおいて、命の現実さを知りながら接していたのだと改めて感じました。
この本を、反韓中ソ日と感じる人は、心にやましさがあるのだと思います。
作者は、恨みすら感じられないぐらいの大変な体験をしていて、例えるなら、野生動物の生死去来に近いものだと思います。
恨みや妬みは、生活に余裕がないと発生しないのですね。
60年以上が経ち、世界大戦の体験者が高齢で亡くなる中、読んでおいて損はない、数少ないオススメ本の一つです。
わたくしの曾祖父母や祖父母は出兵したりして戦中を生きた世代になるのですが、幼少時の優しかった場面を思い起こすと、どう例えたら良いのか解りませんが、優しさに「命に近い」感じがしました。 この本を読んで、当時の人は、人付合いの、その全てにおいて、命の現実さを知りながら接していたのだと改めて感じました。
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60年以上が経ち、世界大戦の体験者が高齢で亡くなる中、読んでおいて損はない、数少ないオススメ本の一つです。
2015年4月26日に日本でレビュー済み
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日本人なら、絶対読むべき
学校の図書室に置いてほしいです
日本人が戦後、どれ程苦労をしたかを知ってほしいです
学校の図書室に置いてほしいです
日本人が戦後、どれ程苦労をしたかを知ってほしいです