コロナ禍での医療現場の現状と感染予防の基本

三宅民夫の真剣勝負!

放送日:2021/01/12

#医療・健康#コロナウイルス#感染症#新しい生活様式

ざっくりいうと

1都3県では緊急事態宣言が出されたものの、新型コロナウイルスの感染者数が多い状態は依然続き、医療現場のひっ迫の度合いも増しています。その医療現場の現状はどうなっているのか。そして、緊急事態宣言の中で私たちはどう予防すればいいのか。感染症予防が専門の聖路加国際病院 感染管理室マネージャー坂本史衣さんにお話を伺いました。

【出演者】
坂本さん:坂本史衣さん(聖路加国際病院 感染管理室マネージャー)
田中キャスター:田中孝宜キャスター

増加する患者数、不足する病床

田中キャスター: 感染者数の増加が止まりません。この状況をどうご覧になっていますか?
坂本さん: 感染者数もそうですが、亡くなる方が増える速度も早くなっていまして、とても心配しています。
人との接触、特にマスクを着けない接触を減らす必要がありますが、繁華街の人出の様子を見ていると、去年の緊急事態宣言のころに比べて人出がそれほど減ってはいない。今回の宣言の実効性についても少し懸念を感じる部分はあります。
田中キャスター: 医療機関のひっ迫が伝えられていますが、最新の状況は今どんな様子ですか?
坂本さん: 東京都内に関していえば、重症な方を受け入れる新型コロナ用の病床がだいぶ埋まりつつあります。
特に冬場はほかの重い病気(たとえば心筋梗塞や脳卒中といった病気)も多いのですが、そういった重い病気を受け入れるには、「高度急性期医療」という集中治療室を持っているような病院に受け入れる必要があるのですが、そういう集中治療を提供できる病院のベッドがもう埋まってきている。「重い病気で救急車を呼んでもすぐに行く病院が見つからない」「搬送に30分以上かかる」「20か所以上受け入れられなくて、ようやく見つかった」といった例が増えているような状況です。
また、入院ができなくて自宅療養せざるをえない方が、東京で7000人を超えている状況です。そういう方が自宅で重症化することも心配です。
田中キャスター: 坂本さんのいらっしゃる病院では、具体的にどのようなことが起こっていますか?
坂本さん: 外来に関しては、具合が悪く熱が出て来られる方で、検査をして陽性になる方がとても多くなっている。そして、新型コロナだけではないのですが、集中治療室がいろいろな重症な病気でいっぱいになっています。
東京都は「集中治療のベッドを確保してください」とお願いしているのですが、そのためには三次救急、重い急患の患者さんの救急車を一部お断りせざるをえない。あるいは、手術後に集中治療室に入らないといけないような大きな手術は延期しないと、要請に従った病床の確保が難しくなっている状況になっています。
田中キャスター: コロナ以外の病気の方への影響も広がっているのですね。
坂本さん: 必ずしも新型コロナだけでなく、さまざまな重症な病気の方が医療を受けることが難しくなっている、と言っていいと思います。
田中キャスター: 集中治療室だけでなく、人工呼吸器などの数も足りなくなるなどとも考えられますか?
坂本さん: 機械が足りなくなるより、それを扱うことができる専門的な技術を持った医療従事者が、十分な数いない。もともとそんなにたくさんいないのですが、機械を使いこなせる人が今後足りなくなることも懸念されます。
田中キャスター: 医療現場の厳しい状況を少しでも改善するためには、私たちひとりひとりができるだけ感染しないようにしなければならないですよね。
坂本さん: すべての人に影響が出始めていると考えていいと思います。ですので、感染しないことが今とても大事です。

感染予防の3か条

田中キャスター: 緊急事態宣言が出た中で、私たちがどのように感染予防すればいいのかを伺ってまいります。前回の緊急事態宣言のときもいろいろ感染予防法が言われましたが、そのときと今回はどこが変わったのでしょうか?
坂本さん: ウイルスの弱点がいろいろとわかった。「どこを押さえていけばいいのか」ということがわかってきたんです。
ご記憶かもしれませんが、前は「スーパーへの買い物は1人で行きましょう」「家に帰ったらすぐにお風呂に入りましょう」「着たものはすぐに洗濯」「買ってきたものは外の袋を拭く」といったことを気にしてやっていらした方もいらっしゃると思います。そういったことは、やって悪くはないのですが、そんなに気にしなくてもいい。どちらかというと優先度は低いとわかってきました。
田中キャスター: 前回の緊急事態宣言のときは、「買い物は3日に1回」「1人で行きましょう」といわれましたが、気を付けなければいけないことと気を付けなくてもよいところがわかってきたのですね。
坂本さん: 「気を付けなくてもよい」というわけではなく、「そんなに力を入れなくても大丈夫」というのが、今お伝えしたポイントです。
田中キャスター: 感染予防に大切な重要な3つとは、どのようなことなのか教えていただけますか。
坂本さん: 最も大事なのは、ふだん一緒に暮らしていない人とのマスクのない会話には気を付けましょう。基本的に行わないほうがいいです。
「会食」というと、夜の飲み会や飲食店での食事を思い浮かべると思いますが、それだけではありません。たとえば、お昼に職場でとるランチ、休憩室や喫煙室といったところでマスクを取って話をする。今これだけ流行していますから、そこには感染するリスクがあります。
逆に、あまり混雑していないお店のカウンターに座ってひとりでラーメンを食べるといったことは、それほどリスクは高くないと考えていいと思います。
田中キャスター: 同居していない人とのマスクのない会話は全部気を付ける。「4人以下だったら大丈夫」ということはなく、とにかく気を付けなければいけない。
坂本さん: 「お昼だったら大丈夫」「20時以降が危険」ということもないです。
田中キャスター: 2つ目は何ですか?
坂本さん: 換気の悪い場所に長時間いないように気を付けていただければと思います。
たとえば、みんなマスクはしていても、窓のない小さな会議室にたくさんの人が集まって30分~1時間ずっと話しているような状況は危険だと思います。
マスクはとても有効なんですけれども、完璧ではありません。ですから、なるべく窓が開くような換気のよい場所での会議を行うか、サーキュレーターを併用する。あるいは対面ではなくすこと、リモートに変えていくといった工夫も大事だと思います。
田中キャスター: 会社にいても、会議室にこもって会議をするよりは、換気のいいところでリモート会議をやったほうがいいのではないか、ということですね。
坂本さん: 換気は大事だと思います。
田中キャスター: そして3つ目は?
坂本さん: 手洗いです。
新型コロナのためだけではないのですが、胃腸炎や肺炎など、手を介してうつるさまざまな病気を防ぐためにとても大事です。これを機に習慣づけをされるといいと思います。
手が荒れるほどしょっちゅうする必要はないです。たとえば、ごはんを食べる前、外から帰ったとき、トイレのあと、せっけんと流水で20秒ぐらいかけて丁寧に手を洗うことが、健康に過ごすためには大事だと思います。
田中キャスター: 手洗いは、新型コロナの予防にもなるのですね。
坂本さん: 顔の粘膜(目・鼻・口)に触れることで、うつることもあります。それを防ぐという意味でも、行ったほうがいいんです。
ただ、あまり神経質になり過ぎず、今お伝えしたような要所要所で行っていただくのがいいと思います。

孤独に感じたら

田中キャスター: 「同居していない人とのマスクのない会話に全部気を付ける」とありますが、たとえば、1人暮らしをしている人などは孤独に感じてしまうこともあるかと思います。このあたり、どのように考えればいいですか?
坂本さん: どうしても耐えられないこともあるかと思います。
一緒にお出かけする人を誰か1人決め、その人とペアになる。「バブル」という考え方です。家族に近いような「いつも一緒にいる人」をなるべく少人数で決めて、散歩や買い物に行ったりお話をするといったことをされてもいいと思います。
田中キャスター: 疑似家族のような形でどこかの家族に混ぜてもらう、あるいは親友2人でグループを組む、ということですか。
坂本さん: 高齢者や基礎疾患のある方は避けたほうがいいと思いますが、同じ年代ぐらいでいつもおつきあいをする人を1人決めておくというような形もあってもいいとは思います。

相談は、かかりつけ医・自治体の相談センターへ

田中キャスター: 日常生活で「コロナかな?」と疑うような症状が出たら、医療機関などに相談するタイミングはどう考えたらよいですか?
坂本さん: 高齢者や基礎疾患(高血圧、糖尿病、呼吸器疾患など)のある方、若くても肥満傾向の方や妊婦さん、たばこを吸われる方は、「かぜっぽい」「具合が悪い」「熱が下がらない」と思ったら、早めに受診の相談をしていただきたいと思います。
それ以外のふだん元気な方は、具合が悪くなったら、まずは職場に行かないで、うちで休む。「解熱剤を使っても熱が下がらない」「症状が強くなってきた」ということだったら、早めに受診・相談されるといいと思います。
田中キャスター: 受診が必要かどうか、どこに相談すればいいですか?
坂本さん: あれば、かかりつけの医師。東京・大阪などの大きな都市では#7119という電話番号で相談できますし、各自治体で相談センターを設けていますので、ホームページなどで確認をしてお電話されるといいと思います。
田中キャスター: 保健所には相談してはいけないのですね。
坂本さん: 保健所はそういう役割はないので、基本的にはかかりつけ医または今お伝えしたような相談センターなどへお電話していただくといいと思います。

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