中国、20年2.3%成長 10~12月は6.5%増と回復拡大

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滝田洋一さん他1名の投稿滝田洋一高井宏章
不動産開発投資が経済持ち直しに大きく貢献した

【北京=川手伊織】中国国家統計局が18日発表した2020年の国内総生産(GDP)は、物価の変動を除く実質で前年比2.3%増えた。新型コロナウイルスを早期に抑えこみ、投資など企業部門が回復をけん引した。主要国で唯一プラス成長を維持したもようだ。20年10~12月は前年同期比6.5%増と、7~9月(4.9%増)より拡大した。

中国経済は新型コロナが直撃した20年1~3月、1992年に公表を始めた四半期ベースで初のマイナス成長に沈んだ。その後、新型コロナを抑え込んで生産を立て直した。投資や輸出が成長を押し上げ、成長率は4~6月以降拡大した。

ただ20年暦年の伸び率は、文化大革命の最終年で経済が混乱した1976年以来、44年ぶりの低さとなった。20年の実質GDPは10年の1.94倍にとどまり、中国共産党が掲げた倍増目標は未達だった。

20年10~12月の実質成長率は日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調査した市場予想の平均(5.9%)より上振れした。新型コロナの感染が広がる前の19年10~12月(6.0%)を上回った。生活実感に近い名目成長率は6.6%と、7~9月(5.5%)より拡大した。

前期比の実質成長率(季節調整済み)は2.6%だった。7~9月(3.0%)よりやや鈍化した。先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は11%程度となる。

18日はGDPとは別に他の経済統計も発表した。工場やオフィスビルの建設など固定資産投資は20年通年で前年比2.9%増えた。春以降、政府がインフラ投資を加速。主な担い手である国有企業の投資は堅調で、鋼材やセメントの生産も好調だった。一方、民間投資は伸び悩み、設備投資は減少した。

投資のうちマンション建設など不動産開発投資は7.0%上回った。新型コロナ対応の金融緩和であふれたマネーが金融市場に流れ込み、1月からの累計額は6月にいち早く前年同期比プラスに転じた。

外需も成長を押し上げた。輸出(ドル建て)は前年を3.6%上回った。輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は27%の大幅増となり、金額も最高だった15年に次ぐ過去2番目の大きさとなった。

百貨店やスーパー、電子商取引(EC)などの売上高を合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は20年通年で3.9%減少した。比較可能な1994年以降で初めてマイナスとなった。家計調査でみた消費支出も実質4.0%減少した。

要因は経済の正常化に対して所得の改善が遅れたことだ。1人あたりの実質可処分所得の伸びが2.1%にとどまり、6%前後だった新型コロナ前と比べて見劣りする。

工業生産は2.8%増えた。投資関連の原材料のほか、リモート需要が追い風となったパソコンなどの生産が伸びた。

足元の経済成長率はすでに新型コロナ前の水準に戻った。21年は前年の反動増もあり、中国当局は8%前後の高成長を見込む。ただ新型コロナの感染が局所的にぶり返している。省をまたぐ移動制限が消費など経済活動を鈍らせる可能性もある。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • 滝田洋一のアバター
    滝田洋一日本経済新聞社 編集委員
    別の視点

    記事に「主要国で唯一プラス成長を維持」とあります。が、「国・地域」で見るならば、2020年にプラス成長を記録したところがあります。しかも実質成長率は中国より高い。台湾です。20年11月27日に成長率の見通しを、1.56%から2.54%に上方修正しています。 2つの「ぼうえき」が実りました。コロナ発生に伴い、いち早く中国との人の往来を規制し、その後も徹底的な防疫体制を敷いた。貿易では、中国依存からの脱却を図る一方、世界的なDX化が台湾の半導体産業に追い風となった。 しっかりした民主主義と安定した経済実績を誇る台湾。日本とは自由や民主主義の価値観を共有するだけに、もっと注目してよいと思います。

    (更新)
  • 高井宏章のアバター
    高井宏章日本経済新聞社 編集委員
    ひとこと解説

    成長率の底堅さより、企業の設備投資が弱いこと、小売売上高が大きなマイナスを記録したことが目を引きます。 輸出への依存や、インフラ投資・不動産投資に依存した形の成長は、内需の充実や過剰債務問題といった宿題とは逆行しています。 2021年の成長率目標の目線は高いですが、20年の延長線上の経済構造が温存されるとしたら、課題は残ったままとなります。新型コロナの感染再拡大や、政権交代した米国との関係など不確定要素も多い。 中国共産党結党100年の節目の年は、まだ視界不良です。

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