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経営者インタビュー

「月刊BOSS」と、日本最大のビジネスマッチングポータルサイト「WizBiz」との提携に伴い、 19万社を超えるWizBiz会員の中から伸び盛りの企業を毎月1社をピックアップ。トップの事業への情熱に迫る。

2018年12月号より

【BOSS×WizBiz】多様な価値観の衝突が新たなカルチャーを生み出す

人を惹きつける吸引力

―― 渋谷区は1990年代からビットバレーと呼ばれてベンチャー企業が集まりやすい土壌ができてきました。こうした状況をどのようにとらえていますか。
ポジティブ以外何物でもないですね。ぜひアクティブにやっていただければ嬉しいし、町に吸引力があることは誇らしいことです。現在でこそ、積極的になっていますが、もともと、区が先導して企業を集めてきたのかと言えば、決してそんなことはなかった。

この街が非常におもしろいと思うのは、いろんなものが生まれてきていることです。ファッションもそうですし、カルチャーもそう。それは行政が仕掛けたことではなくて、多様な価値観がぶつかり合って、交わり合って生まれてきています。

「渋谷区は街自体に多様性がある」と長谷部区長。

例えば私が小学生の時は、竹の子族とかロカビリー族、中学生の時はDCブランド、高校生の時にはアメカジや渋カジ、大人になってからはギャル、コギャルの登場などがありましたけど、これはストリートカルチャーです。街で様々なものが混ざり合うことで活力が生まれています。ターゲットとなる人たちが街にいて、最先端の文化が生まれる場ですから、企業はそこを価値として見出していると思います。

家賃が高騰しているのでベンチャー企業にとっては厳しくなっていると思いますが、それでも渋谷にはシェアオフィスといった環境もある。だからこそこの街のグルーヴ感というか、そういったものを求めてきてくれていると思います。街の魅力が積み重なってきているからこそ、企業が集まっている。

―― 渋谷区は、人口が約22万人と23区のなかでも少ないほう(18位)ですが、文化が集まるという意味では他の地域にはない珍しさを感じます。
人口については面積が小さいこともありますしね。原宿や渋谷あたりは確かに少ないですが、恵比寿は多いですし、甲州街道の両サイドは基本的に渋谷区です。衣食住のバランスが取れた区だと思います。

原宿や表参道と言うと、みなさんファッションストリートだと思っていますが、名前の通り「参道」なんです。多くの街が洋風に振ったなか、参道はけやきや灯籠がありますから、和の上にトッピングされている。交わり合って新しい価値を生み出している象徴ではないでしょうか。

9月13日にオープンした渋谷ストリームも、かつての東急東横線のホームを思い出させる造りになっています。そうした工夫が自然になされていて、温故知新、和洋折衷というおもしろいミックスカルチャーができていると思います。

―― 企業に対する支援策はありますか。
支援オフィスを区が用意してということはありませんが、商工会館などはそうした方向でリニューアルしていこうと思っています。また、渋谷未来デザインという一般社団法人では行政も出資していますが、十数社の民間企業も出資しています。こちらでは代々木公園でのスタジアムアリーナ構想を発表させていただきましたが、社会実験を含め、官だけじゃできないこと、民だけではできないことを一緒に取り組んでいく、それも違和感なくできるというのが渋谷区のよさでしょう。

商圏エリアの拡大

―― 東急グループが中心になって進めている再開発についてはいかがですか。
順調に進んでいます。急がせているわけではありませんが、願いとしては早く出来上がってほしい(笑)。今回の開発では、渋谷を中心とした商圏のエリアが繋がって広がります。いままでも原宿~表参道~渋谷が繋がっていて、例えば表参道で降りて渋谷から帰る、渋谷から降りて原宿、明治神宮前から帰るという方が多いです。渋谷ストリームの開発で恵比寿、代官山まで回遊ができるようになったり、街が広がっていくと思います。恵比寿のほうが食は充実していたりしますので、ナイトタイムエコノミーみたいなのが大きなテーマになってくるなか、原宿~渋谷~恵比寿が繋がると、東京、日本のエンジンになり得るのではないかと期待しています。

基本構想を手に取りやすい冊子に。

―― 恵比寿には企業も多く、人が集まる街になっていますね。
恵比寿駅周辺は、私が高校生くらいのときまでは山手線のなかでも特徴がない駅でしたが、恵比寿ガーデンプレイスの開発以降、昼間人口が増え、それを目当てに飲食店が増え、ファッションも入ってきて、現在では住みたい街ナンバーワンと言われる街に変化してきました。

同潤会アパートなど開発で寂しい思いをする部分もありますが、渋谷区はずっと景色が変わり続けています。他の自治体でこんな速度で変わる街はないと思いますし、我々はそれを武器として、表参道のように守るべきところは守りながら変化をしていけば、唯一無二の街になっていけるのではないかなと。

―― 渋谷区の場合、地域によってのカラーがぜんぜん違います。それぞれに人が集まるのもおもしろいですね。
町会のブロックで言うと、11ブロックに分かれています。笹塚ブロックと西原ブロックなどぜんぜん違う。幡ヶ谷もそうですが、笹塚と松濤も異なりますし、原宿と恵比寿も違う。高級住宅街と言われる広尾と上原も似ていない。街自体が多様ですね。インバウンドも増えてきたなかで、いろいろなハイブリッドが起きやすい街なのでしょう。歴史的にもそれはずっと続いてきたことです。

基本構想に基づいた提案を

―― 渋谷区は基本構想として「ちがいをちからに変える街」を打ち出しています。
多様性、インクルージョンみたいなことを多分に織り込んだ基本構想、それを象徴する言葉です。すべての政策はその言葉に紐づくように作る。基本構想に紐づいた提案だったら、僕らも受けやすい。区としてはどんどん提案が欲しいんですよ。だから基本構想を読んでもらいたいし、知ってもらいたい。

―― 一見、絵本のような基本構想の冊子も配布していますね。
基本構想や基本計画は、自治体はすべて持っています。政策の最上に置く重要なものです。ところが、基本構想を開いていない方が多い。確かに基本構想は最大公約数を取っているために、どの自治体も似たような形になりがちです。文化を継承しましょう、産業を育成しましょうといったものです。もちろん渋谷区にもそういったことは織り込まれていますが、もう少しそれをエモーショナルに伝えたい。

「ちがいをちからに変える街」を形成するためにABCDEFGの7つがあり、子育てや福祉など、それぞれに文章があり、その言葉から新しいことを発想できるような言葉をちりばめた作りにしています。

多様な人が集まるのが魅力。

―― 今後はどのような取り組みをしていきますか。
もっと渋谷の街は、エンタメとかクリエイティブとかインキュベーションとか、そういったものがもっと似合う、フィットする街へと、進んでいくように舵は切っていこうと思っています。そこに行政ができることは限界があって、結局主役になるのは人や企業ですから、基本構想にもとづいてご提案いただければタイアップした事業もあり得ると思うし、アクティブに活動してほしいなと思います。

私自身、この街に生まれて、住民として「渋谷区に住んでていいね」と言われて育ってきました。こういう評価が渋谷の活力です。常に先端で変化して、リードしていくのが、この街の誇りだと思っています。

(聞き手=本誌編集長・児玉智浩)

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