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2015年5月号より
三澤和則 ソルナ社長
みさわ・かずのり 1968年山口県生まれ。医療機器メーカーの執行役員として、全国の拠点およびサービスセンターを統括。2005年4名で不動産コンサルティング会社を創業し、専務に就任。設立から5年で、急成長を果たした同社の中心メンバーとして活躍。2010年、同社役員を退任し、翌年、ソルナを設立。
風評被害は予防が肝心
―― 東日本大震災から4年がたちました。ソルナが設立されたのは、震災の前日だそうですね。
三澤 設立の翌日に、あの大震災です。しばらくは東京ではビジネスにならないと考え、システム開発の技術者のいた広島に移転、さらには大阪に拠点を移し、2年前に再び東京に戻ってきました。
―― ソルナは、インターネット上の風評被害や誹謗中傷への対策を主たる業務としていますが、同様のサービスを行っている会社は何社もあります。ソルナの強みはどこにあるのでしょうか。
三澤 同じように見えますが、自前で優秀な技術者を抱え、自社で対策を行っているところは案外少ないのです。
ネット上の風評被害対策にはいろいろなやり方があります。たとえば「2ちゃんねる」のような掲示板に誹謗中傷やネガティブな情報が掲載された場合、情報自体を削除してもらう。それができない場合、逆SEO対策により、検索しても上位にその情報が上がってこないようにして、被害を最小限に抑えます。
ただしそれには、独自のスキルやノウハウが必要です。検索順位を下げるのは、上げるよりはるかに大変です。しかも主たる検索エンジンであるグーグルは、しょっちゅうアルゴリズムを変更します。それに対応する情報収集力、そのためのシステム開発力、データ分析力など、高度な専門性が必要です。そういう対策を、ソルナではすべて自社で責任をもって行っています。そのため、同等のサービスであれば、他社の半額から3分の2程度の料金で提供することが可能です。
―― 実際に、ネット上の風評被害は増えているんですか。
三澤 増えています。企業の評判を書き込めるサイトが増えていますし、スマホの普及が後押ししています。
たとえばリブセンスが運営する「転職会議」というサイトがあります。これは、転職を希望する人が、企業の評判を知るための口コミサイトですが、以前はこのようなサイトは転職会議だけでした。それが最近ではいくつもできている。それだけネガティブ情報を書き込む場所が増えているし、拡散する可能性も高くなっています。
―― 企業でも個人でも、一度拡散してしまうとネガティブ情報がひとり歩きを始めてしまう。それだけ対策がむずかしくなっています。
三澤 そのとおりで、風評被害が起きてから、それを打ち消すのは大変です。ですから、健康診断と同じで問題が起きたらいち早く発見できる仕組みが必要です。ソルナでは、風評監視対策も提供しています。ご契約いただいたクライアントのネガティブ情報が、ネット上に出たらすぐに手を打つ。これによって拡散を防ぐことができます。
ただこれを行うには、自動化抽出と言って、ネガティブ情報を効率よく収集するシステムを構築しなければなりません。また、どのサイトに出たら拡散しやすいのか、それもきちんと把握する必要がある。こうした技術力やスキルがあるからこそ、ネット上の膨大な情報を監視することができるのです。
―― 被害が増えているということは、売り上げも伸びているんじゃないですか。
三澤 設立から4年がたちましたが、だいたい倍々で伸びています。
―― それにしても、三澤さんはなぜ、このビジネスを始めようと思ったのですか。以前に立ち上げた不動産コンサルティング会社も順調だったと聞いています。三澤さんはその会社の専務の座を捨て、ソルナを設立しています。
三澤 前の会社のビジネスモデルは僕が中心となってつくったものですし、急成長させることもできた。
でも、ある時、2週間ほど入院することになった。その時、改めて自分が何をしたいのか、何をしたい時にいちばんモチベーションが上がるのか、自分と対話することができました。それで気づいたのは、これは自分が本当にしたい仕事ではない、ということでした。
前の会社も、創業当時は楽しかった。ところが会社が大きくなるにつれ、いつの間にか知らない社員が入り、いつの間にか辞めている。古参社員からも、創業時のほうが楽しかったという話を聞きました。それで気づいたのは、自分はもっと社員やお客様と密接に関わりたいということでした。それがソルナ設立につながっています。
退職者の本音を聞く
―― なぜ、風評被害対策を選んだのですか。
三澤 これも入院と関係するんですが、人間はケガや病気をすれば病院に行きます。ところが会社には病院がない。「会社+病院」で検索してもなかなかヒットしなかった。
しかもスマホ時代を迎えていたし、すでに飲食店の口コミサイトはいくつもありました。ここに悪口を書かれて閉店に追い込まれた店もある。いずれ企業にも同じようなことが起きるのでは、そう考えたのです。
しかも、天才的な技術者と巡り合うことができた。それでソルナを立ち上げることができたのです。
―― これからの目標は何ですか。
三澤 「会社の病院」です。病院には内科だけでなく、外科もあれば眼科、耳鼻科もある。会社の病院もそれと同じで、風評被害対策だけではありません。やがては、企業の経営問題をすべて解決できるようになりたい。経営者が悩んでいたら、まずソルナに相談する。そういう存在になりたいですね。
―― 「退職者匿名調査」というのをやっているそうですね。
三澤 社員が辞める理由はさまざまです。ただ、辞める時に、本音を言う社員はほとんどいません。一身上の都合といった具合です。でも本当は評価制度に不満があったり、上司のセクハラが原因かもしれない。これを放置していては、せっかく育てた社員にまた辞められてしまう。
そこで、会社に代わってわれわれが調査する。辞める時には言えなくても、辞めてしばらくしてなら、本音を言ってくれるかもしれない。そしてそこにこそ、会社をよくするヒント、経営の核心がある。それを明確にして対策を打つことで、会社の問題の根治につなげていくことができるはずです。
―― なかなか社員が定着しない会社があります。経営者もその理由がよくわからない。そういう会社にとっては重宝するでしょうね。
三澤 その一方で、顧客企業の考え方や魅力をしっかり伝え、企業ブランドを確立するお手伝いもしていきます。いままで会社案内というと紙が主体でしたが、そうではなく、ウェブを利用した「しゃべる会社案内」を提唱しています。
顧客訪問時に、自分たちのことを知ってもらうために紙の会社案内を渡すのではなく、タブレットなどでしゃべる会社案内を見てもらう。そうしたサービスも始めています。
ソルナという社名はソル(太陽)とルナ(月)を組み合わせたものです。風評被害対策のように会社を守る事業はルナ事業、しゃべる会社案内のように、会社や商品を売り込むお手伝いはソル事業です。
この2本柱で成長していこうと考えています。