味噌とホットケーキ

味噌メーカーのマルコメが既に溶いてあって味噌汁などにそのまま使える溶液状の新製品(マルコメ「だし入り液みそ」)を発売して、店頭に並びはじめている。これはなかなか意欲的な、注目商品だと思った。

マルコメ だし入り液みそ 液状タイプにするメリットは多く、数え上げると以下のようなことは容易に思いつく。

  • 溶く手間が省け、朝の忙しい中でも調理しやすい
  • 夜食などでちょっと食べたい時にも手軽に味噌汁が作れる
  • 取り分けるための余計な食器(味噌漉しなど)も汚れない
  • 溶くひと手間をはさむ必要がないので料理全般の調味料として使いやすい。今まで以外の新しい用途が広がる(洋風料理など)
  • 外国人にも扱いやすく、海外で(醤油のように)広く普及する起爆剤になる可能性がある
これらの利点を消費者にうまく浸透できれば、既存の利用者も今までよりもっと味噌を使う機会が増え、使用する機会がなかった人も手にとるようになるし、販路も今までと違うところまで広がるかもしれない。

カツオ節メーカーのヤマキやトマトジュースのカゴメにも同じことをいえるが、安直な多角化とは正反対のこの種の一点集中主義というか、自社の伝統的な中核製品を漫然と維持せずに、その潜在的な可能性をあらゆる方面から徹底的に深堀りして新しい提案を生み出し、そこを業績拡大の突破口にするという戦略は、好もしいものでもあり、理にかなってもいる。それは消費者の目から見ても、自社のアイデンティティに対する敬意と誇りを示すもので、それを上つらの言葉だけでなく実際の企業行動で何より強力に証明するものだからだ。ブランド育成という点でも、伝統の尊重と革新への挑戦という相反する因子が同時に強化されるという最良の効果をもたらす。

また、こういう「手間を省く」を訴求するやり方は馬鹿にならない。たとえば、マヨネーズという商品を考えた時に、あらかじめこうして作り置きされてチューブ容器に入っているから(それはマヨネーズメーカーが誇るたいへんな技術革新だった)、これだけ普及していろいろな可能性も試されているのであって、これが卵と酢から自分で毎回作らないといけないとなったら、それは既製品より作り立てで美味しいだろうから本当の愛好家はそうするかもしれないけれども、とてもここまで広く一般に普及して消費は伸びなかっただろう。同じようにこの製品も、ひょっとしたら近い将来、主客が入れ替わって、一般の商店で手に入るのは全部このタイプになってしまい、従来型の半固形タイプが入手しにくくなるということさえ起きるかもしれない。

ところでこの商品を見ていて、以前から同じようなものがないかと探していたのをあらためて思い出したのは、他でもないホットケーキである。もともと今一般に市販されているホットケーキミックス自体が、消費者が自分でしなくていいように複数の原料粉をあらかじめ混ぜてある省力型の商品なのであるが、それでもちょっとホットケーキを食べたいと思った時に、ミックス粉を買ってきて卵と牛乳も用意して自分でそれを混ぜて、という手順の多さからあきらめてしまい、見えないところで機会ロスになっているケースは相当あるのではないだろうか。これがもしあらかじめ練ってあるソフトチューブに入りのホットケーキミックスがあったなら、夜食なり朝食なり間食なりで手軽に作れて、食べる機会がはるかに増えるし、応用もずっと広がる。とはいえそんなことは誰でも考えるだろうから、製品が出ないのはたぶんそこにかなりの技術的な壁があるのだろう。一般に市販されているミックス粉には、ふっくら膨らませるためにベーキングパウダーが入っていて、説明書きには、調理の直前に材料を混ぜるよう指示してあるから、そこにハードルがあるのかもしれない。 が、なんらかの技術革新でそこが乗り越えられれば、もともと不況に強い商品で今も販売が伸びているホットケーキミックスの消費はさらに拡大するにちがいない。ホットケーキだけでなく、たこ焼き用、お好み焼き用、ピザ用等のバリエーションもいろいろ出てくれば楽しいし、チューブ入りマヨネーズと同様、食文化にとっても一つの期を画するようなインパクトのある大型商品になるかもしれない―― と、もっともらしいことを言いながら実のところ個人的な期待を書いているだけなのであるが、メーカーの人にはぜひ商品開発してもらいたいものである。





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2009/03/30 | TrackBack(0) | 商品・サービス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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