この商品はキャッチコピーがなぜか「CSR(企業の社会貢献)」になっている。飲料メーカーとして飲酒運転の撲滅に貢献したいということらしい。コマーシャルもゴルフカートがたくさん走り回っているもので、身もふたもないところがおかしい。確かにそこのところはこれだけ社会の目が厳しい中で秘かにいちばん危なっかしいところで、これで(運転手を自分でつけられるほどではない)企業の中堅幹部も心配なくゴルフに行けるだろうし、ゴルフ場にとっても場内で客に薦められるちょうど具合のいいものが出たと喜んでいるだろう。
肝心の味は好みが別れるようだが、自分としては、これまでのこの系統の飲料の中ではいちばん本物のビールに近く、安っぽい模造感がなくて、気に入った。元のものからダルマ落としのようにアルコール分だけをきれいに払いおとしたような味で、もちろんアルコールが入っていない分、腰がなく、底が抜けている感じはあるが、そこは割り切ってすっきりした味にまとめてあって、肉料理等によく合う。ドライブにいってバーベーキューをした時などに、運転手の人もそう違和感なく楽しめる味だ。
毎度のことながら、発泡酒や「第三のビール」も含め、日本のビールメーカーのあの手この手の企画力、製品開発力には感心させられる。酒造メーカーというと世界的に見ても最も保守的な部類の事業者で、新製品などはあまり出さない印象があるが、ここだけが完全に異次元の世界になっている。まるで酒税という不自然な硬いアスファルトを突き破って力強く伸びる「ど根性大根」のようなしぶとさで、そのために制度が無実化しておかしなことになっているけれども、それはたぶん制度の方にもともと問題があったのである。それに合わせて業界が最適化されてしまったため、もはやいじるにいじれない状態になっているが、思い切ってそこを正して、本来の成長力を存分に発揮させたら、自動車やコンビニなどと同じように世界に通用する分野の一つではないだろうか。