ノートPC向けCPUとして“最強クラス”のパフォーマンスを実現 最新「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」搭載ノートPCの魅力に迫る
高い処理性能とすぐれたコストパフォーマンスにより、大きな人気を集めてきたCPU(APU)「AMD Ryzen™ モバイル・プロセッサー」。その最新シリーズとして、「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」が2021年1月に登場した。最新の「Zen 3」アーキテクチャーを採用した本シリーズは、シングルスレッド処理とマルチスレッド処理双方のパフォーマンスが大きく向上したうえ、統合されたGPU「AMD Radeon™ グラフィックス」も強化されている。本特集では、そんな「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」の魅力を徹底解説していく。
新登場「Zen 3」アーキテクチャー採用で、処理性能が向上した「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」
コストを最大限に抑えつつも、独自の設計をふんだんに盛り込むことで高い処理性能を実現した「AMD Ryzen™ モバイル・プロセッサー」。CPUコアの数が多くマルチタスク処理性能にすぐれるうえ、パワフルなグラフィック性能を備えるGPUが統合されているため、本APU(CPUとGPUを統合したプロセッサー)を搭載するノートPCは、ビジネスシーンだけでなく、クリエイティブな作業やゲームプレイにおいてもすぐれたパフォーマンスを発揮。このバランスのよさにより、ノートPC市場でシェアを急拡大させてきた。そして、その評価を決定的なものとしたのが、2020年6月に登場した「AMD Ryzen™ 4000シリーズ モバイル・プロセッサー」だ。
「AMD Ryzen™ 4000シリーズ モバイル・プロセッサー」は、世界最高クラスの緻密さを誇る7nmプロセスルールを採用。これによってトランジスタ密度が飛躍的に高まり、処理性能の向上と消費電力の低減を一挙に実現した。また、画期的な「Zen 2」アーキテクチャーの採用により、従来の「Zen+」アーキテクチャーに比べて1クロックあたりの処理命令数がアップ。抜群のパフォーマンスを発揮し、その人気を不動のものにしたのである。
そんなAPUをさらに進化させたのが、2021年1月に登場した「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」である。本シリーズは、7nmプロセスルールを踏襲しつつ、最新の「Zen 3」アーキテクチャーを採用したことで、シングルスレッド処理とマルチスレッド処理のパフォーマンスを大幅に向上させているのが特徴だ。
「Cezanne」というコードネームで開発された「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」。隙がない仕上がりとなっていた「AMD Ryzen™ 4000シリーズ モバイル・プロセッサー」からさらなる進化を遂げており、現状のノートPC向けCPUとしては“最強クラス”のパフォーマンスを実現している
「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」には、TDP35W以上で動作するゲーミング・クリエイティブ用途向けの「Hシリーズ」 と、TDP15Wで動作する省電力の「Uシリーズ」がラインアップ。「Hシリーズ」には、3つのモデルが用意されており、最上位の「HX」はハイパフォーマンスの実現を徹底的に突き詰めた、ハイスペックなゲーミングノートPCなどに搭載されるモデルだ。それに次ぐ「HS」は薄型ゲーミングノートPCへの搭載に適したモデルで、「H」はコストパフォーマンスにすぐれたスタンダードモデルとなる。また、「Uシリーズ」は、省電力性能が高いため、モバイルノート向けのモデルに位置付けられる。
「Zen 3」アーキテクチャー採用「AMD Ryzen™ 5000シリーズ
モバイル・プロセッサー」のラインアップ
モデル名 | コア/ スレッド | 動作周波数 | TDP | キャッシュ |
---|---|---|---|---|
AMD Ryzen™ 9 5980HX モバイル・プロセッサー |
8コア/16スレッド | 3.3 GHz-最大4.8GHz | 45W | 20MB |
AMD Ryzen™ 9 5980HS モバイル・プロセッサー |
8コア/16スレッド | 3.0 GHz-最大4.8GHz | 35W | 20MB |
AMD Ryzen™ 9 5900HX モバイル・プロセッサー |
8コア/16スレッド | 3.3GHz-最大4.6GHz | 45W | 20MB |
AMD Ryzen™ 9 5900HS モバイル・プロセッサー |
8コア/16スレッド | 3.0GHz-最大4.6GHz | 35W | 20MB |
AMD Ryzen™ 7 5800H モバイル・プロセッサー |
8コア/16スレッド | 3.2GHz-最大4.4GHz | 45W | 20MB |
AMD Ryzen™ 7 5800HS モバイル・プロセッサー |
8コア/16スレッド | 2.8GHz-最大4.4GHz | 35W | 20MB |
AMD Ryzen™ 5 5600H モバイル・プロセッサー |
6コア/12スレッド | 3.3GHz-最大4.2GHz | 45W | 19MB |
AMD Ryzen™ 5 5600HS モバイル・プロセッサー |
6コア/12スレッド | 3.0GHz-最大4.2GHz | 35W | 19MB |
AMD Ryzen™ 7 5800U モバイル・プロセッサー |
8コア/16スレッド | 1.9GHz-最大4.4GHz | 15W | 20MB |
AMD Ryzen™ 5 5600U モバイル・プロセッサー |
6コア/12スレッド | 2.3GHz-最大4.2GHz | 15W | 19MB |
AMD Ryzen™ 3 5400U モバイル・プロセッサー |
4コア/8スレッド | 2.6GHz-最大4.0GHz | 15W | 10MB |
「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」の一番のトピックは何と言っても、従来の「Zen 2」アーキテクチャーをアップデートした、「Zen 3」アーキテクチャーの採用だ。このアーキテクチャーでは、高速アクセスが可能なAPU内のメモリー、L3キャッシュを強化。最大8MBから最大16MBに容量が倍増したため、多くの処理をこなせるようになり、それだけ処理が高速化された。
また、統合GPU「AMD Radeon™ グラフィックス」も、前シリーズからブラッシュアップ。グラフィック処理性能がより高くなっている。これらの進化によって、「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」は、総合的にパワーアップした新時代のAPUとなっているのだ。
性能検証負荷の高いゲームも十分こなせるパフォーマンスに驚愕
続いて、「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」を搭載したノートPCを用いて、実際のパフォーマンスを検証していこう。
メイン検証機として用意したのは、APUに「AMD Ryzen™ 9 5900HXモバイル・プロセッサー」(3.3GHz-最大4.6GHz)を搭載するほか、32GBのメモリー、NVMe接続の2TB SSD、外付けGPUとして「NVIDIA GeForce RTX 3080」を搭載したASUSの17.3型ノートPC「ROG Strix SCAR 17 G733QS」。また、比較用の検証機として、APUに「AMD Ryzen™ 9 5900HSモバイル・プロセッサー」(3.0GHz-最大4.6GHz)を搭載するほか、32GBメモリー、NVMe接続の1TB SSD、外付けGPUとして「NVIDIA GeForce GTX 1650」を搭載したASUSの13.4型ノートPC「ROG Flow X13 GV301」も用意した。
なお、「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」の純粋な処理性能を確認するため、いずれの検証機でも外付けGPUは使用せず、APUに統合されているGPU「AMD Radeon™ グラフィックス」に切り替えたうえで検証を行った。
「Zen 3」アーキテクチャーを採用した「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」は、前シリーズに比べて、シングルスレッド性能は最大23%、マルチスレッド性能は最大17%向上。このAPUを搭載したノートPCもまた、大きな注目を集めそうだ
CINEBENCH R23
まずは、APUの基本的なパフォーマンスを探るべく、CPUの処理性能を測定するベンチマークプログラム「CINEBENCH R23」を実施。「AMD Ryzen™ 9 5900HXモバイル・プロセッサー」を搭載した「ROG Strix SCAR 17 G733QS」では、マルチコアで「12357」、シングルコアで「1470」というスコアを記録した(左画像)。マルチコアは、ハイスペックなゲーミングデスクトップ向けCPUに匹敵するほどのスコアだ。また、シングルコアの「1470」というスコアは、ノートPC向けCPUのシングルコアのスコアとしては最高クラスで、圧倒的な処理性能の高さを感じられる。いっぽうの「AMD Ryzen™ 9 5900HSモバイル・プロセッサー」を搭載した「ROG Flow X13 GV301」では、マルチコアで「9504」、シングルコアで「1448」を記録(右画像)。マルチコアでは「ROG Strix SCAR 17 G733QS」ほどの伸びはないが、シングルコアはほぼ同等の処理性能と言える
まずは、APUの基本的なパフォーマンスを探るべく、CPUの処理性能を測定するベンチマークプログラム「CINEBENCH R23」を実施。「AMD Ryzen™ 9 5900HXモバイル・プロセッサー」を搭載した「ROG Strix SCAR 17 G733QS」では、マルチコアで「12357」、シングルコアで「1470」というスコアを記録した(上画像)。マルチコアは、ハイスペックなゲーミングデスクトップ向けCPUに匹敵するほどのスコアだ。また、シングルコアの「1470」というスコアは、ノートPC向けCPUのシングルコアのスコアとしては最高クラスで、圧倒的な処理性能の高さを感じられる。いっぽうの「AMD Ryzen™ 9 5900HSモバイル・プロセッサー」を搭載した「ROG Flow X13 GV301」では、マルチコアで「9504」、シングルコアで「1448」を記録(下画像)。マルチコアでは「ROG Strix SCAR 17 G733QS」ほどの伸びはないが、シングルコアはほぼ同等の処理性能と言える
PCMark 10
続いて、パソコンの総合的な処理性能を測定するベンチマークプログラム「PCMark 10」を実行してみたところ、「ROG Strix SCAR 17 G733QS」は、ハイエンドノートPCの基準となる「5000」を大きく超える、「6433」をマーク(左画像)。特に、写真や動画編集、3Dグラフィック処理などの性能を示す「Digital Content Creation」は、「7041」と高いため、4K動画の編集やCG制作などのヘビーなクリエイティブ作業もこなせるだろう。いっぽうの「ROG Flow X13 GV301」も「5723」をマークし(右画像)、こちらも高いパフォーマンスを備えていることが実証された
続いて、パソコンの総合的な処理性能を測定するベンチマークプログラム「PCMark 10」を実行してみたところ、「ROG Strix SCAR 17 G733QS」は、ハイエンドノートPCの基準となる「5000」を大きく超える、「6433」をマーク(上画像)。特に、写真や動画編集、3Dグラフィック処理などの性能を示す「Digital Content Creation」は、「7041」と高いため、4K動画の編集やCG制作などのヘビーなクリエイティブ作業もこなせるだろう。いっぽうの「ROG Flow X13 GV301」も「5723」をマークし(下画像)、こちらも高いパフォーマンスを備えていることが実証された
3DMark TIME SPY
高性能な統合GPU「AMD Radeon™ グラフィックス」のグラフィック性能を確かめるべく、「3DMark」を実行。DirectX 12対応ゲームを想定した「TIME SPY」テストを実行してみたところ、「ROG Strix SCAR 17 G733QS」では「1571」をマーク(左画像)。これは、エントリークラスの外付けGPUを搭載したゲーミングノートPCに匹敵するスコアであり、人気3Dゲームを十分快適にプレイできるグラフィック性能を備えていることがわかった。いっぽう、「ROG Flow X13 GV301」のスコアは、「1365」に留まった(右画像)
高性能な統合GPU「AMD Radeon™ グラフィックス」のグラフィック性能を確かめるべく、「3DMark」を実行。DirectX 12対応ゲームを想定した「TIME SPY」テストを実行してみたところ、「ROG Strix SCAR 17 G733QS」では「1571」をマーク(上画像)。これは、エントリークラスの外付けGPUを搭載したゲーミングノートPCに匹敵するスコアであり、人気3Dゲームを十分快適にプレイできるグラフィック性能を備えていることがわかった。いっぽう、「ROG Flow X13 GV301」のスコアは、「1365」に留まった(下画像)
さらに、実際のゲームプレイにおけるパフォーマンスを検証した。ここでは、比較的、グラフィック処理負荷が高いと言われるバトルロイヤルTPS「PlayerUnknown's Battlegrounds」(PUBG)をプレイしながらフレームレートをチェックしてみた。解像度はフルHD(1920×1080)に、画質は「中」(5段階中3番目に高い画質)に設定してプレイしてみたところ、「ROG Strix SCAR 17 G733QS」では40fps付近のフレームレートをキープ。相当になめらかとまでは言えないが、プレイについては十分なグラフィック処理が行えることを確認できた。
「AMD Ryzen™ 4000シリーズ モバイル・プロセッサー」も
コスパで選ぶなら十分アリ!
「Zen 2」アーキテクチャーを採用した前シリーズの「AMD Ryzen™ 4000シリーズ モバイル・プロセッサー」もまだまだ現役だ。このAPUを搭載したノートPCは、ビジネス用途はもちろんのこと、デジタルカメラで撮影した画像のRAW現像といった処理負荷の高いタスクも十分にこなせるほどパワフルなうえ、コストパフォーマンスにもすぐれている。予算を抑えつつすぐれた処理性能を備えるノートPCが欲しい人にとっては、有力な選択肢となるだろう。
製品紹介「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・
プロセッサー」搭載の注目ノートPCを紹介
最後に、「AMD Ryzen™ 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」を搭載した注目のノートPCを紹介しよう。ニーズに合わせて最適な1台をチョイスし、ノートPCとしては“最強クラス”のパフォーマンスを存分に堪能してほしい。