犬種紹介
アラスカンマラミュートについて
◎ マラミュートの魅力
北極地方で何世紀も昔から、人間のために使役されてきた大変原始的な犬種です。太くがっちりしたモノトーンのマラミュートが、力強く、尚且つ流麗に動く様子は見る者を圧倒し、オオカミのような逞しさと野生的なイメージを彷彿とさせるものです。人間により無理な改良を加えられた形跡が少ない、犬の中でももっとも自然に近い犬種の一つです。
しかしながら、マラミュートの一番の魅力は、その迫力溢れる重厚な外見とは裏腹に、人間には誰にでも友好的で優しく、家族との愛情の絆は強く、知性が高く機転がきき、人の言葉や感情を解する能力がきわめて高いところでしょう。彼らの行動には時に意図的なユーモアさえ溢れています。
また自主性と自立心に富んでいるため、上手に服従させるには理由付けして犬自身が納得するよう訓育するのが効果的です。いったん確固たる信頼と上下関係の絆が確立されると、それは生涯にわたって続くでしょう。 今日では、マラミュートは極地の作業犬としてよりも、一般の家庭犬として歓迎されていて、アウトドアで家族とともにキャンプやハイキングを楽しんだり、室内では居間で家族と一緒にくつろぐことも喜ぶ犬です。
あらゆる犬種の中でも、人間の感情の動きを察知する本能が秀でているため、関係が出来上がってしまうと‟目と目で会話ができる”かけがえのない人生の伴侶にもなります。そのため、一度マラミュートと共に暮らしたことがある人は、その、深くて不思議な魅力が忘れられなくなり、犬を再び飼うなら次回もきっとマラミュートと共に暮らすことを願うのでしょう。
◎ 沿革と用途
アラスカ北西部沿岸地方のイニュイット、マラミュート族により何世紀も昔から愛育されてきた実用犬種。極地の公認されたソリ犬4種の中では最大で、最もパワーがあるといわれています。マラミュート族は特に犬を大切にし愛情を注ぐことで知られた民族でした。元々は北極地方で重い荷の運搬に従事させたり、舟の曳航、ホッキョクグマやオオカミの動向を察知し人間の生活を守るなどの作業犬でした。
現代では一般家庭の愛情深い伴侶犬として世界に普及しています。日本で急速に数が増えたのは1980年代後半~90年代半ばがピークでしょう。一部のペット繁殖業者が高級ブランド犬として大々的に売り出し、関連業者が次々と繁殖ビジネスを始めたのがこの頃です。その後、ハスキーブームの終息、バブル時代の大型犬人気から小型犬に人々の関心が移ったのと並行して、マラミュートの数はみるみる減少しました。ザベリワンでは、マラミュートの知名度や人気の有無に関わらず、80年代から一貫してこの犬種のみに取り組んできました。日本で一般的な繁殖所や営利ブリーダーとは全く違う形で、海外の名門育成家との連携により、古典的系統に比重を重くした独自のラインを国内で確立し、守る努力を続けています。
◎ 体 格
代表的なソリ犬4種の中ではもっともサイズが大きい。ハスキーのようにサイズの上限下限は決められていないが、スタンダードではオスで約38キロ、メスで約34キロが本来の仕事を効率的にこなせる理想的サイズと定められている。しかしサイズより重視されるべきはタイプ、構成、それにより生み出される歩様である。そしてパワーとスタミナを合わせ持ち、骨量豊かで厚く粗いダブルコートに包まれている。少ないエネルギーで効率良く走り続けられる健全な四肢は何より重要。普段の動きは静かでのんびりしているが、必要があれば大きさを感じさせない機能的な動き、圧倒的な体力も発揮できる。
◎ 性格的特徴と一緒に暮らすコツ
愛情深く人間には常に友好的で、警戒的に吠えることは少ない。理知的でもあり、本能的な察知能力や感覚に優れている。しかし犬同士の集団になると序列意識が強い。生活を共にする人間までが階級争いに巻き込まれないよう、普段から家族全員で、人と犬の違いを身をもって分別できるように徹底したケジメをつけて接すること。また幼少期の様々な社会経験はこの犬種には特に必要。社会化は母犬の胎内にある内から繁殖者により母犬に施され、産まれてすぐから新生子に開始され、やがて新しい飼い主が引き継ぎ、更に幅を広げていくことで身に付く。幼少期の充分な社会化により、生涯にわたって、どこにでも連れ出せる、扱いやすい円満な基本的性格が形成される。生後100日までに100人の人と接触させることが理想といわれている。
◎ 仔犬の選び方と遺伝性疾患・罹りやすい疾患
同じマラミュートでも系統によってタイプに大きな違いがある。マラミュートの専門書は海外発行のものしか見当たらないが、それらの専門書を取り寄せて写真だけでも見比べたり、海外の著作で翻訳された犬種紹介本などである程度の知識を得てから(ネット上の個人ブログからは参考情報は得られない)繁殖者に色々尋ねてみると良い。その犬舎の犬たちの特徴や長所・弱点なども誠実に教えてくれるだろう。
現在では国内のマラミュートの数は非常に少なくなり、繁殖もいつでもどこでも行なわれていないので、好みのタイプに出会ったら予約して待つのが一般的。
→→遺伝性疾患について
どの犬種にも必ず色々あるようにマラミュートにも特有の遺伝性疾患がある。主なものは股関節形成不全、進行性中心性網膜萎縮、若年性白内障、ポリニューロパシー(末梢神経系の麻痺→歩行不能に)など。子犬や親犬を直接見ても判断できず、多くはある程度成長した以降に異常が現れてくるので要注意である。「何の弱点も無い犬。病気にかからない犬」など存在しないが、繁殖育成に於いて、何と何を比較し、何を重視してその種を繋げているのか、それぞれの犬舎の犬たちには繁殖者の信条が反映されているはずだ。正直で誠実に犬種育成に取り組み、勉強熱心な育成者を見極めよう。
また近親交配による繁殖の場合は、仔犬に不健全なものが現れる確率が非常に高くなるので、家庭犬として迎えるなら避けた方が良い。外見で判別できる異常ならわかりやすいが、溶血性貧血や心臓の弁膜の奇形や異常、細く脆弱な消化器管や消化酵素の分泌不全、ホルモン異常、脆弱な皮膚や粘膜、外的因子に対する異常な過敏体質、また極端な臆病や攻撃性、極度の不安症やそれによる常動行動など精神的な異常も現れやすい。血統書上の両親や祖父母の名前などにより、一見近親交配ではないように思われても、数代の祖先を辿ると全て同じ祖犬に辿り着く、などというケースもみられるので、子犬選びにあたっては慎重を要する。この点も繁殖者の誠実な事前告知が求められる。
→→この犬種に多く見られる、または罹りやすい疾患や症状
ブロート(急性胃拡張・胃捻転症)、熱中症、鼓脹、膿皮症(脂漏性湿疹)、悪性リンパ腫、骨腫瘍(死に至る骨の癌。大型犬なので四肢が多く肺への転移が頻発)、自己免疫性疾患、癲癇(てんかん)、甲状腺機能低下などホルモン失調とそれに起因する皮膚症状、メスでは例外なく子宮蓄膿症、乳腺腫。
(たくさん挙げたが、上記のように、どの犬種にも必ず色々あるものなので特にマラミュートが多いということではない)
骨腫瘍と悪性リンパ腫は体重が重くなるほど罹患リスクは高くなる傾向があるので過体重にさせないよう注意が必要。特に骨腫瘍は「生後12か月未満など早期に避妊去勢を済ませた骨量の重い犬または過体重の犬に、アスファルト道路など硬い路面で定期的に引き運動を行ない、足の同じ部分に繰り返し強い負荷がかかり続けること」が発症の引き金となりやすい。
ブロートは逆に、壮年期以上の痩せた犬および急激な減量をした犬に発生しやすい。癲癇、甲状腺機能低下、自己免疫性疾患は特にハスキーやマラミュートなど北方犬に非常に多いといわれている。癲癇はそもそも脳のある動物には種を問わず起こる恐れがあるが、北方犬ではおよそ4%の高頻出というデータがある。膿皮症は「被毛の密度が高い状態+高脂肪濃厚食+高湿度(皮膚が蒸れる)」の条件が重なると起きやすい。
その子犬、また祖先や血縁犬の健康状態や病歴、死因などについて、最も多くの情報や経験をもっているのは繁殖者である。子犬譲受後も引き続き付き合える、誠実で熱心な繁殖者であれば色々教えてもらえる利点は計り知れない。
◎ シベリアン・ハスキーとはどこが違う?
似ているようで間違われることも多い2犬種だが、並べてみるとかなり異なる。
☆ サイズ
マラミュートのほうが一回り以上大きく、太く、骨量はずっとある。サイズの具体的な数値を調べて比較してみよう。マラミュートはどっしりして丸みがあり骨太、力強さと表現の豊かさを感じさせるが、ハスキーはコンパクトにまとまり軽快さとスピードを感じさせるソリ犬である。
☆ 頭部の作り
マラミュートは頭頂部の幅が広く、やや丸みがあり、小さめの耳が広く離れてついている。頭部は全体的に量感に溢れ、マズルはやや短めで先端が角ばり、尖っていない。眼は濃い茶色が望ましく、青い眼は失格となる。S・ハスキーの頭部はコンパクトな体に釣り合った、軽く中位の大きさで、先端に行くに従って先細り、耳は高い位置に接近してつく。眼色は茶色と青のどちらも認められている。
☆ 尾の形状
静止時、マラミュートは、先端が背中に着く程度に緩やかに巻き上がった尾。しかし日本犬のようにきつく巻いてはいない。S・ハスキーは静止時は垂れ尾である。
☆ 性格的には?
マラミュートは家族への愛情が深い代わりに自我も執着も強い。基本的に放しても飼い主の声が届かないところへは行かず常に飼い主の動向が目の隅に入っている。S・ハスキーは淡白で執着が薄くマイペース、序列意識も少ないため集団飼育も困難でない。走り出すとひたすら前進する本能に裏打ちされた犬種なので、万一自宅から脱走し行方不明になると自分から帰宅することは少なく、とんでもない遠方で保護されたりする。重量引き競技や一緒に歩くハイキングにはマラミュートがぴったりだが、本格的な犬ぞり競技などスピードを競うハーネスワークにはS・ハスキーが向いている。