陸装研ロゴ ハイブリッド動力システムの試作車両 ATLAロゴ

1.「ハイブリッド動力システムの試作車両」とは?

 燃費のよいハイブリッド動力を持つ戦闘車両を目指して試作した大型のカタピラ式の車両です。
Hybrid カタピラ式の車両は、左右のカタピラの速度を変えて曲がります。そのため、エンジンと変速機(トランスミッション)で走る普通の車両では、どうしても変速機が複雑になります。しかし、車両にバッテリと、エンジンで動かす発電機を積み、その電気で左右のカタピラを別々に直接モータで動かす、という形式(「シリーズハイブリッド」といいます)にすれば、変速機をなくしてしまえます。シリーズハイブリッドならカタピラを動かすのはモータだけなので、エンジンを止めてバッテリの電気だけで静かに走ることも容易です。また、車体に発電機を積んでいるので、停車しているときは電源車としても使えます。

2.デモンストレーション

 ハイブリッド動力システムはカタピラを直接モータで動かす、と説明しました。普通のエンジンは高速回転しないと大きな力が出せませんが、モータは低速回転から強い力が出せる、という特徴があります。そのため、発進加速が速くなります。ご紹介する試作車両とほぼ同じ大きさ、重さの装備品に「73式装甲車」という車両があります。この二つの車両の発進加速を比べた動画(約16秒)をご紹介します。画面手前がハイブリッド動力システムの試作車両になります。

「ハイブリッド動力システムの試作車両」発進加速
(YouTube防衛装備庁公式チャンネルに飛びます)

 ハイブリッド動力システムの試作車両が、速い! 圧倒的に速い!! ことがわかっていただけるかと思います。
 さて、ハイブリッド動力システムはエンジンを止めて静かに走れる、と説明しました。それを確認できる動画もご紹介します。はじめはエンジンを動かして、次はエンジンを停止してバッテリの電気だけで、最低速度で走っている動画です(約32秒)。

「ハイブリッド動力システムの試作車両」バッテリ走行
(YouTube防衛装備庁公式チャンネルに飛びます)

 エンジンが動いていると、「ウォーン」というエンジン音が聞こえると思います。それに対して、バッテリの電気だけで走っているときは、カタピラのカタカタ鳴る音しか聞こえません。ただ残念なことに、この試作車両は金属製のカタピラを使っているため、この動画のようにコンクリート路面を走っているとカタピラの音が大きく響きます。そのため、動画では違いがわかりにくいかもしれませんが、ボリュームを上げるなどして、是非お確かめください。
 最後に、カタピラ式車両の人気のデモンストレーション、普通の、車輪のついた車両では絶対できない動き、その場でくるくる回る「超信地旋回」をご紹介します。超信地旋回は「軽量戦闘車両」(クリックすると別タブで開きます)でもご紹介しました。見比べるなどして、この動画をお楽しみください(約12秒)。

「ハイブリッド動力システムの試作車両」超信地旋回
(YouTube防衛装備庁公式チャンネルに飛びます)

 超信地旋回はとても力の必要な旋回です。モータはエンジンと違って低速回転でも大きな力を出してくれることから、通常のカタピラ式車両以上の速度で回転してくれます。
 ところで、説明でなぜ「カタピラ」と書いているのだろう、と不思議に思った方はございませんか? 皆様には、似ている別の言葉の方がなじみ深いかもしれませんが、その言葉はある会社の登録商標なのです。という訳で、法令(車両制限令、道路交通法施行規則など)で使用されている用語の「カタピラ」と書いております。ちなみに、カタピラは日本語では「履帯(りたい)」と呼びます。防衛省の人はこちらを使うことが多いです。もう一つ、「無限軌道(むげんきどう)」という呼び方もあります。こちらはちょっとロマンティックな響きがありますね。以上、豆知識でした。