イナバノシロウサギの神話とは?
―大国主神の最初の物語―
古事記の不思議を探る
2018年11月20日更新
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日本最古の書物『古事記』。世界のはじまりから神様の出現、皇位の継承まで、日本の成り立ちがドラマチックに描かれています。それぞれの印象的なエピソードには今日でも解明されていない「不思議」がたくさん潜んでいます。その1つ1つを探ることで、日本の信仰や文化のはじまりについて考えていきます。
スサノオの子孫の物語
日本の神話は、元は個別に伝承されていたものが多いのですが、古事記では神話の時代から天皇の時代へと流れる大まかなストーリーの中にそれぞれ配されています。
良く知られているイナバノシロウサギの神話は、スサノオの子孫であるオオナムチが、地上世界を完成させて、支配する神へと成長していく物語の最初に位置付けられています。
哀れなシロウサギを救ったオオムナチ
オオナムチにはたくさんの兄神がいたといいます。その兄神たちが因幡国に住む八上比売 に求婚に出かけた際に、末弟のオオナムチは荷物持ちとして同行します。道中、兄神たちは、ワニをだましたために皮を剥がれて苦しんでいる兎に出逢います。
兄神たちは兎からろくに事情も聞かずに、いいかげんな治療法を教えて却って辛い思いをさせてしまいます。その後に通りかかったオオナムチは、兎からきちんと話を聞いた上で、適切な治癒法を教え、それで兎は元通りに快復しました。
この兎が「イナバノシロウサギ」であると古事記は説明します。兎は、オオナムチこそが八上比売と結婚するだろうと予言します。この話はオオナムチの王としての資質を示す役割を持っているようです。
シロウサギは白い兎なのか?
ところで、「シロウサギ」は「素兎」と書かれています。古事記には「白犬」や「白鹿」など、神、もしくは神の使いの動物に「白」を冠することはありますが、「素」で表される動物は他にはいません。
「素」にも「白」の意味がありますので、「シロ」と読むことは出来るのですが、もしかしたら「モトウサギ」などの別の読み方であった可能性もないとは言えないのです。毛を剥がれた兎のことを「裸兎」と表現していますので、元に戻った兎を、恐らくは「白衣」を着た兎として表現したかったのではないかと思われます。
イナバノシロウサギを助け、八上比売と結婚したオオナムチは、この後、様々な試練を乗り越え、複数の女神と結婚し、やがては兄神たちを退けて地上の主となり、名前も大国主神となります。
~國學院大學は平成28年度文部科学省私立大学研究ブランディング事業に「『古事記学』の推進拠点形成」として選定されています。~