ミュージカル『刀剣乱舞』 ―東京心覚― が、3月7日(日)~3月14日(日)までTOKYO DOME CITY HALLにて上演された。
名だたる刀剣が戦士の姿になった“刀剣男士”たちが、歴史改変を目論む敵と戦う大人気PCブラウザ・スマホアプリゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMM GAMES/Nitroplus)を原案とする、ミュージカル『刀剣乱舞』(通称・刀ミュ)シリーズの最新作。
今作では、大典太光世(雷太)、ソハヤノツルキ(中尾暢樹)、豊前江(立花裕大)、桑名江(福井巴也)、水心子正秀(小西成弥)、源清麿(佐藤信長)、五月雨江(山﨑晶吾)、村雲江(永田聖一朗)ら8振りの刀剣男士たちが驚きと挑戦に満ちた物語を届けた。
初日前日に行われたゲネプロの模様をレポートする。
取材・文・撮影 / 片桐ユウ
新たな8振りの刀剣男士たちが“東京”の歴史に寄り添う
今作に登場する刀剣男士たちは“新たな顔触れ”と言っていいだろう。
豊前江(立花裕大)と桑名江(福井巴也)は、今年1月に上演されたミュージカル『刀剣乱舞』 五周年記念 壽 乱舞音曲祭 に出陣、また豊前江は「静かの海のパライソ」、桑名江はミュージカル『刀剣乱舞』 歌合 乱舞狂乱 2019 にも出陣しているが、ほか6振りは本作がシリーズ初登場となる刀剣男士である。
さらにタイトルが「東京心覚(とうきょうこころおぼえ)」。“東京”というグッと身近に迫る現在の地名と、“心の中に覚えていること・忘れないためのしるし”といった意味を持つ言葉に、何か深いメッセージを探さずにはいられない。
ひと際、未知数な物語に期待を膨らませて開幕を迎えた。
冒頭、登場する1振りは水心子正秀(小西成弥)だ。彼は江戸を拠点とした名刀工「江戸三作」のひとり、水心子正秀作の打刀であった刀剣男士。江戸後期から「廃刀令」が発令されるまでに作られた日本刀、「新々刀」の祖として相応しくあろうと、理想を掲げ努力を惜しまない。
そんな水心子正秀の背後には都会の喧騒が響く。ところが一瞬にしてその音は途切れ、替わりに秒針の音が大きく鳴り出す。水心子正秀を囲むようにして赤いテープが交差し、上からはひと筋の砂が降り落ち、地に積もっていく。
謎めく場面に続き、メインテーマ曲「『刀剣乱舞』 ―東京心覚―」に乗せてオープニングが始まった。
可動式の舞台装置に乗り、ゆっくりと正面を向いてみせる刀剣男士たちが最高にクールだ。楽曲のアレンジもそうだが、振付やフォーメーションがスタイリッシュで圧倒される。
今回出陣する刀剣男士8振りのうち6振りが「打刀」であること、同じ刀工による刀剣が多く戦装束のテイストに共通している部分もあってか、より整然とした印象。
もちろん様々な時代の刀剣が登場することが“刀ミュ”の魅力だが、こうした統一性を持ってのオープニングナンバーは本公演では新鮮で、強いインパクトを感じさせた。
2015年のトライアル公演以来、平安時代や戦国時代、幕末期と様々な時代の流れを追ってきたミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ。
これまでの作品は、刀剣男士が“刀剣”であった頃の元・主(あるじ)の時代に赴き、そこに生きる人々の生き様に触れ、時に使命に対しての葛藤を覚えながらも、その「歴史」を守るべく奮闘することにフォーカスした物語が多かった。
だが今作は現在である「令和」、平将門(川隅美慎)の乱が起こった「承平」、太田道灌(有馬自由)が江戸城を築城している「康正」、さらに「寛永」や「慶応」といった、様々な時代を行き来していく。
各場面は断片的ではあるが、場所はいずれも関東、江戸。やがて“東京”となる地の話である。
その場面で起こる物事を刀剣男士たちは遠くから見守り、時にはするりと入り込みながら、“東京”の歴史に寄り添う。
水心子正秀は、勝海舟(三上市朗/二役)と西郷隆盛のやりとりや平将門が孤軍奮闘する様を眺めて物思いに耽る。「江戸三作」のひとりである源清麿の作、源清麿(佐藤信長)は、何かの答えを探す水心子正秀を優しく見守っている。
天下五剣のひとつで三池典太光世作の太刀である大典太光世(雷太)と、無銘であるが三池典太光世作と伝わる太刀、ソハヤノツルキ(中尾暢樹)は、天海(三上市朗)が結界を張っていく戦いをサポート。
越中国の刀工、郷義弘作の打刀である「江」の刀剣男士は4振りが登場。豊前江は太田道灌と交流し、かつて目にしたという西の海を語る。農業に親しむ桑名江は桑で土を耕しながら、その信念を歌い上げる。
五月雨江(山﨑晶吾)と村雲江(永田聖一朗)は「刀剣乱舞-ONLINE-」でも顕現したばかりの刀剣男士だが、戦場でも堂々とした戦いぶりを見せた。
彼らのチーム感や信頼関係が伝わってくる立ち回り、キャラクター性が覗く楽曲や掛け合いなど、この8振りならではの見どころが多数。天海や平将門、太田道灌らが見せる命の燃やし方、生き様も印象的だ。
場面転換をスムーズかつ美しく見せる舞台装置の動きや華やかな照明、刀剣男士たちのソロパートやデュエットソングも秀逸である。
明確なストーリーラインが提示されるわけではないが、スッと胸に染み入るような音楽やハッとする台詞は必ず見つかる。
この物語が訴えるものと、水心子正秀が見つけるものの正体は何なのか。これまでの“刀ミュ”シリーズと、今作の中に散りばめられた細やかな台詞や象徴から読み解いてみることも楽しみ方だろう。
「歴史」は“時”として連なりながら流れていくだけではなく、“土地”にも積み重なっているもの。そしてすべては、今我々が生きる“現在”に至っている。
浅慮でしかないかもしれないが、個人的にはそんな気づきを得たように思った。
この新たな挑戦に満ちた物語の先に、何が待っているのか。
今後の“刀ミュ”の展開も心待ちにしたい。
ミュージカル『刀剣乱舞』 ―東京心覚― は、3月20日(土・祝)から宮城、熊本、愛知、大阪と巡り、東京凱旋公演の5月23日(日)に大千秋楽を予定。
5月14日(金)の東京凱旋公演初日と5月23日(日)の大千秋楽公演は動画配信サービスDMM.comでライブ配信、さらに大千秋楽公演は全国各地の映画館でのライブビューイングも予定されている。
ミュージカル『刀剣乱舞』 ─東京心覚─
東京公演:2021年3月7日(日)~3月14日(日)TOKYO DOME CITY HALL
宮城公演:2021年3月20日(土・祝)~3月25日(木)多賀城市民会館 大ホール(多賀城市文化センター内)
熊本公演:2021年4月2日(金)~4月7日(水)熊本城ホール
愛知公演:2021年4月14日(水)~4月24日(土)アイプラザ豊橋
大阪公演:2021年5月1日(土)~5月8日(土)メルパルクホール大阪
東京凱旋公演:2021年5月14日(金)~5月23日(日)日本青年館ホール
<ライブ配信>
[配信公演]2021年5月14日(金)東京凱旋公演初日
2021年5月23日(日)大千秋楽公演
[配信サービス]DMM.com
[販売期間]各ライブ配信終了まで
[販売価格]東京凱旋公演初日<ライブ配信のみ>2,200円(税込)
大千秋楽公演<ライブ配信+見逃しパック(再ライブ配信+ディレイ配信)>3,800円(税込)
[ライブ配信時間]各公演開始30分前~各ライブ配信終了まで(予定)
[再ライブ配信時間(大千秋楽公演のみ)]2021年5月24日(月)20:00~再ライブ配信終了まで
[ディレイ配信期間(大千秋楽公演のみ)]2021年5月27日(木)18:00~5月30日(日)23:59まで
●詳細等はこちらにてご確認ください
<ライブビューイング>
[開催日時]2021年5月23日(日)18:30開演
[上映館]全国各地の映画館
[チケット代]3,800円(税込・全席指定)
[チケット一般発売]2021年5月15日(土)12:00〜(先着)
●詳細等はオフィシャルサイトにてご確認ください
原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMM GAMES/Nitroplus)
演出:茅野イサム
脚本:伊藤栄之進
振付・ステージング:<1部ミュージカル>當間里美 桜木涼介
<2部ライブ>當間里美
出演:
大典太光世 役:雷太
ソハヤノツルキ 役:中尾暢樹
豊前江 役:立花裕大
桑名江 役:福井巴也
水心子正秀 役:小西成弥
源清麿 役:佐藤信長
五月雨江 役:山﨑晶吾
村雲江 役:永田聖一朗
天海・勝海舟 役:三上市朗
平将門 役:川隅美慎
太田道灌 役:有馬自由
ほか
主催:ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
(ネルケプランニング ニトロプラス DMM GAMES ユークリッド・エージェンシー)
オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@musical_touken)
©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会