魅力的なコンテンツを発信し続けるVTuber(バーチャルYouTuber=3DCGのキャラクターによるYouTuber)は、いまや日本のエンターテインメントに不可欠な存在。今年ついに1万人を超えたVTuberのなかから、精力的に音楽活動を行っている“アーティスト”を紹介します。“VTuberの音楽活動って、どんなことやってるの?”というビギナー方も大丈夫。優れたシンガー、クリエイターが集結しているバーチャル・アーティストの世界へようこそ!
普通の女子高生みたいなユルいトーク、バキバキに踊りながらダンスチューンを歌うアーティストとしてのカッコ良さ。この際限ないギャップ萌えこそが、Marprilのチャームポイントだ。
谷田透佳(やた とうか/水色のブルゾンのほう)、立花鈴(たちばな りん/赤いパーカーのほう)によるガールズデュオ、Marpril。このユニット名は、谷田の誕生月(3月/March)立花の誕生月(4月/April)を組み合わせた言葉。当初は“Marple”と名乗っていたのだが、“アガサ・クリスティ作品に登場する探偵、ミス・マープルと登録商標が重なる”という“え?そんなことあるの?”という理由により、現在の名前になった。(表記を変更する際には「さよならMarple!商標問題にケリをつける初生放送」が配信された)
Marprilの魅力はまず、谷田、立花の普通の女子高生感に溢れたキャラクター、そして、二人の掛け合いのおもしろさと楽しさ。まずは「【新人】バーチャルYouTuber、やっぞ【Marple】」(2019/05/15)を見てほしい。大好きな梅干しのこだわりについて「塩分20%じゃないと許さねぇからな 覚えとけよ!」とドヤ顔で語る谷田。そして、福井県出身であることをアピールし、「毎日果物を食べるようにしています。してるっていうか、しちゃうです」といきなり萌えキャラになって自分で照れる立花。まったく自己紹介になってないリラックスしたトークとキュートなビジュアルによって、「なんて緊張感のない自己紹介なんだ… これは伸びる予感しかしない」「緩いトーク感、キャラ、動き、スタジオ全部いい出来で今後が楽しみ」とユーザーの興味を惹きつけた。この動画のなかで既に「ダンスと歌、このタレント性」(谷田)、「いつかダンスを披露する時があると思うので、その時にウチらがどれだけ成長したか見ててほしいぜ!」(立花)とアピールしているのもポイント。実際、この後Marprilは“ユルくてかわいい動画”“アーティストとしてのカッコ良さ”の両軸で人気を得ていくことになる。
その後、谷田が心療内科の医者役、立花が患者役になって“モテたいんです”“夜しか眠れません”と相談する「やたのメンタルクリニック」(2019/05/29)、VTuberの斗和キセキと一緒にダンスレッスンするコラボ動画「【とりま踊ろ】バーチャルダンスレッスンで爆踊り女【Marprilコラボ】」(2019/07/29)などバラエティ色のあるコンテンツを次々とアップする一方、音楽活動もスタートさせる。最初のオリジナル曲は、2019年7月に公開された「sheep in the light」。VTuberシーンで活躍するクリエイター、エハラミオリのプロデュースによるエレクトロ系のダンスチューンだ。
冒頭の30秒で2人のダンスをしっかり見せたあと、立花の「その現実を受け止めた 言葉に鮮やかな weekend」というフレーズによって楽曲に込められた世界観を映し出す。動画コンテンツのトークは二人とも少しハスキーな声質なのだが、歌うときは透明感を帯びた高音、厚みのある低音が印象的。最新鋭のエレクトロをポップに昇華した楽曲、映画「ブレードランナー」を想起させるサイバーパンク感を帯びたMVの映像を含め、アーティストとしての質の高さを証明した。
さらに、切なさと可愛さが共存したダンスチューン「ブレーカーシティ」(HAMA feat.Marpril)、エッジの立ったエレクトロ・サウンドと2人のキュートな歌声を前面に押し出した「Girly Cupid」(PSYQUI feat.Marpril)、バウンシーなトラックのなかで立花の低音を効かせたラップ、谷田のまっすぐな高音が刺激的なコントラストを形成する「シンフォニア」(KOUKIISH feat.Marpril)など、気鋭のクリエイターと組んだ楽曲を次々と発表。2019年12月22日には東京・秋葉原エンタスで初の単独VRライブ「sheep in the night」を成功させるなど、アーティストとしての活動を加速させた。
そして今年5月にはCD2枚組による1stアルバム『city hop』をリリース。既存のオリジナル曲に加え、バーチャルねことのコラボ曲「digitalize」、アルバムのためにエハラミオリが書き下ろしたリードトラック「city hop」などを収録。DISC2には既存曲のリミックスバージョンで構成され、ダンスミュージックとしての側面をアピールしている。また、アルバムと同時に2人のソロシングル「full bloom」(立花鈴)、「clear plait」(谷田透佳)も発表。今後はそれぞれの個性を活かしたソロ活動にも注目が集まっている。
1周年を記念した配信「超重大発表アリ!Marpril一周年記念生放送 #3」(2020/05/15)では、「(アルバム『city hop』のレコーディングを終えて)成長したなと思いました、自分で。みなさんにも“成長したな”と思ってもらえる自信がある」(谷田)「めっちゃいいじゃん、それ。尊敬しました」(立花)とリアルな思いを語り、その5日後の「突如として駄菓子を食う(2020/05/20)では、ただ楽しく駄菓子を食べるだけのユルユルのトークを展開。ギャップ萌えを加速させ続けるMarpril、今後のさらなるブレイクも大いに期待できそうだ。
文 / 森朋之
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立花鈴 オフィシャルTwitter
@Rin04ple
谷田透佳 オフィシャルTwitter
@Touka03mar