NEXT STORY
【中小企業のM&A】M&Aアドバイザーや仲介者としての心得
M&Aの成立に不可欠なアドバイザーと仲介者。彼らの行動やモラルが問題になるケースに出くわすことがある。特に多いのが中小企業間でのM&A。今一度、案件への取り組み姿勢や考え方について記しておきたい。
M&Aのマッチングやプロセス管理を取り仕切る業者には「FA(ファイナンシャルアドバイザー)」と「仲介」の2つが存在します。今回はご自身がどちらを選べばいいかのポイントについてお話します。
FAは売り手か買い手、一方の代理人(味方)を行う者、仲介については「中立の第三者」と言えます。ここでの「中立」とはM&Aの成立のために「その時々で、M&Aが成立に近づく方を味方する」という意味です。これが一つのポイントです。そのため最初は売り手の味方をしてくれますが、プロセスが終盤になるほど買い手側に付いてしまうという傾向があることは否めません。
FAは依頼者からのみ報酬を受け取る。いわゆる、「片手取り」です。ただし、アップフロントフィーのように初期費用がかかるケースが多いです。仲介は売り手、買い手双方から報酬を受取る「両手取り」となり、初期費用はなしのケースも散見されます。成功報酬の計算方式は同じように見えて実は各社バラバラなので最初に比較、検討しておくことをお勧めします。
⑴2~3社選んで比較する
初めてのM&Aで、比較もせずに業者の善しあしを見抜くのはまず無理です。ただし、いきなり5社以上もコンタクトしてしまうと悪質な業者に接触する確率が高まり、情報流出するリスクもあります。自分である程度下調べした上で会うのは2~3社にとどめましょう。
銀行や顧問税理士に相談してもいいのですが、彼らは必ずバックマージンを受け取っていますので、ご自分のスタンスはハッキリしておきましょう。紹介されて断りづらい関係であれば、最初から相談しないほうが賢明だと私は思います。
⑵こんな業者はアウト!
基本的には相性などで決めていただいていいのですが、以下に近い言動を感じたら将来的に不誠実な対応となるケースが多いので、契約しないほうがいいでしょう。
・複数の買い手を紹介しようとしない
・相手と価格交渉をすると言う(仲介会社の場合)
・よくわからない専門用語をよく使う
・早い段階で契約書にサインを求める
⑶「専任期間」が1年超なら要注意
専任期間とは、売り手が「その期間中は他の仲介やFAを利用しません」 と約束する条項で、業者にとっては顧客の囲い込み期間になります。この専任期間は「M&A成立の直前で別業者に乗り換えられては困る」というM&A業者の立場を保護するためものであり、設定すること自体は正当なことです。
ただ、1年を超えるようだと明らかに長すぎます。これは「とりあえず在庫として持っておいて、たまたま買い手が現れたらラッキー」程度に考えているということですので、そのような業者とは付き合わないほうが身のためです。
中小・零細企業M&Aは、市場が急激に拡大しており、また仲介は粗利益率がよく有望なビジネスとして士業や不動産関係者、コンサル系会社出身の人たちからも大いに注目されているようです。これによって「にわかM&A仲介業者」が爆発的に増えており、業界全体の低レベル化が深刻になってきているのも事実です。
M&Aなんてまったく関係のなかった異業種(人材紹介やITなど)が新規事業として唐突に参入したり、M&Aそのものをよく理解していない「口だけ」セールスマンが大手M&A仲介会社に転職したりと、素人同然の人間が相当数入り込んでいるのも容易に想像できます。
特に売り手はご自身にとって最初で最後の重大イベントです。少しでも不安になったらセカンドオピニオンとして、各県に設置されている公的機関の「事業引継ぎ支援センター」に相談してみるのも一つの手です。
文:Antribe社長 小林 伸行(FAアドバイザー)
これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。
M&Aの成立に不可欠なアドバイザーと仲介者。彼らの行動やモラルが問題になるケースに出くわすことがある。特に多いのが中小企業間でのM&A。今一度、案件への取り組み姿勢や考え方について記しておきたい。