はじめに

この記事では魔法少女まどか☆マギカの登場人物であるインキュベーターについて、 MBTI による分類を考察する。異星人ではあるものの精神的に地球人と大差なく、十分な意思疎通を図れるため、 MBTI で区分けすることはできる。個人観ともいうべきモノがないが、実質的には大したことはない。不要な殺人を犯すような気質はなく、度し難い人物ではない。
作中でもっとも思考的な人物で、明らかに行動より思案を好む。入念な考慮を行った上で、クリティカルな行動を選択することができる。冷静沈着で、他人への干渉は控えめ。計画的という以上に予見的。大局観に優れ、強い好奇心がある。以上から、 INTJ と判断した。
まどマギ記事リンク
ESTP、美樹さやかESTP、佐倉杏子ENFJ、巴マミISTP、暁美ほむら,
旧版INFP、鹿目まどかINTJ、インキュベーター
魔法少女まどか☆マギカの振り返り
INTJ の Function Stuck
Dominant: Introverted Intuition (Ni)
Auxiliary: Extraverted Thinking (Te)
Tertiary: Introverted Feeling (Fi)
Inferior: Extraverted Sensing (Se)
I と E
臆病ではないが他者との接触をそう好まない、あるいは他者に大きな影響力を与えることを重要視しないと見え、 Introverted と考えている。無理やり魔法少女にさせることは禁則事項だったと考えるのが筋だが、それ以外の点でも意外なほど鹿目らに直接的な干渉をしていない。
社交性についても高くない。はっきりと言えば、魔法少女たちともっと多くの時間を共有し、多数の会話を重ねることで強い信頼を築くことができた。また、その事自体は感情があろうがなかろうが難しいことではなく、まさに一緒にいるだけとか、話を聞くだけでずいぶん信頼というものは得られるはずだ。
だが、インキュベーターはそういった事を重要視していなかった。実のところ羊の皮を被っているようでいて、元から結構ドライなところがあり、何も被っていない。巴はインキュベーターを大切な友達と話しているが、実質的にはそうではなかった。明らかにインキュベーターという理解者足る人物がいても、巴の孤独感は限界だった。インキュベーターは多少の努力をすれば、巴から真に友達扱いされただろう。究極、話すことのできない動物などでも、巴の孤独を和らげる物足り得た。それをやらなかったということはつまり、あまり関心がなかったということだ。
上記の内容は Fe がないと断じる理由ともなるが、それに限らず Extraverted であることを疑う理由ともなる。他人とともに時間を過ごすということ自体に価値を見ないというか。思った以上に干渉がなくて驚くとか、そういったことを巴がインキュベーターに感じていたとしても不思議ではない。多くの時間を魔法少女との付き合いに割くだけで、彼女らの信頼を得ることは可能だっただろうが、 Introverted はそういったことを比較的に軽視してしまう。
また、鹿目に対しても強力な干渉はなかった。あまり鹿目をコントロールする気配というのがなく、どこか鹿目の自発性を好む様なところがあった。これもまたその気になれば、鹿目あるいは美樹、巴に積極的に暁美の危険性を植え付け、巴を中心に強く団結させる事もできた。もちろんそのチームにインキュベーターも入って、である。
だが、やはりそういったことはしなかった。何をしたかと言うと、ほとんど自分たちに任せた。インキュベーター自身は個人的に推測と調査を重ねていた。他人との協力に割く労力を回避しがちで、自分の仕事に集中する事を好む。 ISJ, INFJ を除く Introverted に見られる傾向ではなかろうか。
N と S
推理力・想像力に長け、抽象的視野に強い。また、単純に業務的な人物ではなく、なによりも知的好奇心が図抜けている。暁美の素性、鹿目の異常な素質に強い関心を示し、最小限の行動と自分の知識から単独で正解にたどり着いた。
本来的にはインキュベーターの目的はグリーフシードの回収である。事情はどうあれ鹿目を魔法少女にしてしまえばそれ以上のことは考える必要がないのだ。だが、彼は周囲に現れた謎に強い好奇心を持ち、それを解明することに労力を支払った。それも分析と推理のみでだ。
何らかの異常事態にあって、根本的な原因が一体何であるのかを知ろうとするのは、 Intuition の役割だ。物事は現実で起きていようと、解明するべき謎は抽象的領域にあるものだ。インキュベーターの関心は暁美の排除ではなく、暁美の正体を解明することにあった。鹿目の素質についても、鹿目を魔法少女にするのと同等に、その異常の原因に興味を持っていた。
親交的な話術は絶望的だが、説明や教示という面で見るならば卓越している。知っていることを話すだけでなく、情報に生命を与えるような表現力を有している。字面というだけでなく根本原理を熟知しているからこそ、柔軟な形で他人に教示できる。こういったところが得意なのはやはり Intuition だろう。その分、話が抽象的なものになりやすいが。
表現力が高く説明が巧みというのはつまり、人間がどういう思考のルートを辿ることでいかなる結論に飛びつくか、それが予測できているということだ。彼はそういった巧妙な手口で佐倉を誘導することに成功した。また、暁美に鹿目の異常な魔力の理由を語ることで、暁美を心的に追い詰めることができた。単なる話術の話に留まらず、自分が動くのではなく他人・外的要素を動かすというのも Intuition よりであるかもしれない。
Ni と Ne という観点では単純にインキュベーターの発想が発散的というより集合的なものであったことを基に Ni と捉えた。同様に IN として仲間の鹿目 (INFP) は Ne で考えがなかなかまとまらない散逸的な印象があったが、インキュベーターは全く逆で、ゴールに至る遥か前から、ゴールが見えているような見識を感じさせる。収束的なのだ。
ロジックが変わった世界でも、貪欲な知的好奇心は健在で、元々研究者気質であることが窺える。暁美の過去のロジックの世界での話、今で言えば夢物語に変わらない話を聞いても蔑ろにせず、以下のセリフを返す。
「まあ確かに、浄化しきれなくなったソウルジェムが何故消滅してしまうのか、その原理は僕達にも解明できてない。その点、君の話にあった魔女の概念はなかなか興味深くはある。人間の感情エネルギーを収集する方法としては確かに魅力的だ。そんなうまい方法が有るなら僕たちインキュベーターの戦略も、もっと違ったものになっただろうね」T と F
非常に効率的な行動を好むこと、極めて理性的なことから Thinker と考えた。話しぶりは友好的だが、(彼にとって)必要以上の温かみというものがない。感情的に寄り添うということはできないが、知識から得た考察を他人に理解させる事を重んじ、自ずとそれが得意である。社交性は低いが、他者に教えるとか、周囲のリテラシーを向上するということは好むところがある。
柔らかい物腰から誤解しうるが、 Fe を使う能力は真に貧弱で、 Fe を軽視しきっているようにすら見える。「こういう言い方をしていれば、好ましいのだろう」という雑さがあるというか。他者との情報交換において、全く Fe 的な技能には頼らず、ひたすら Te でロジカルに訴えることしかしていない。
言ってしまえば、詐欺師とか悪人というには不器用すぎるぐらいだ。嘘はろくにつけず、自分が論理的に正しい限り、謝罪などは絶対にしない。インキュベーターの立場で考えてみれば、いずれの危機も巧妙に被害者面して、嘘を吐くことができれば、魔法少女に敵愾心を持たれることにはならなかった。事が起きたのちも、表面的な謝罪や反省を見せるだけで、恐らく敵意を低減できたように思われる。彼がそうしなかったのは、できないというよりは、そのような細かく感情に訴える曖昧な手段の効果を重視しなかったためであろう。
Te と Ti で比較した時、インキュベーターが再三行った、自分の考え、考察を他人にスマートに理解させるというのは、明らかに Te 的である。そういう意味でほとんど Ti は使っていない。ひたすらクリアーに事態を分析し、筋道の立った考察を行う。自分の哲理・ロジックを追求するようなところがなく、フラットだ。
Ni + Te らしく、非常に合理性を好む。魂をソウルジェムに入れ直す行為に関する話では、大きなメリットを軽視し、デメリットとすら言えない、無いも同然の違い(魂がどこにあるか)に対して、ゾンビだ、あんまりだなどと騒ぐ魔法少女に対して、以下の反応である。
「むしろ便利だろう?」
「……君たちはいつもそうだね……事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする。わけがわからないよ。どうして人間はそんなに、魂のありかにこだわるんだい?」 地球人とは違う個人観があるものの、 Fi が完全に欠落しているかというと到底そうはいい難い。大きな目的のために個人感情を切り捨てているものの、地球人にそういう物があることを理解しており、何より妙な寛容さがある。他、極めて強い好奇心も Fi が寄与している部分もあるかもしれない。
優しさはないのだが、鹿目に対しては明白に強い関心を寄せている。当然、異常な素質の持ち主であることが要因だが、それだけでなく鹿目の精神構造をよく理解し、自分の行動原理を理解してほしい、という心情が強く感じられるのだ。優しさはないが、寛容さは持ち合わせている。
8話では美樹に突き放された鹿目の相談役となった。インキュベーターからしてみれば真実をそのまま伝えただけだが、美樹が魔法少女になり苦労していることについて、鹿目の責任は一切ないというくだりは、鹿目には救いになっただろう。
9話では美樹が魔女とかしたことについて、強いショックを受けた鹿目に弁解に来ている。理論ずくの話しかできず、全く彼女を慰めることはできなかったが、彼なりに魔法少女にどれだけ素晴らしい価値があるかを伝えようとしている。魔法少女になる前に倒れられては困るということなのだが、彼女の心理的危機を救おうと努力している。
11話で、やはり憔悴した鹿目に理論ずくの慰めを展開する。慰めにはならないが、インキュベーターはどこか鹿目のためを思って、壮大な理念・摂理について鹿目を教化しようとしている、様に見える。そしてそれは、鹿目にとって重要な問答となった。
鹿目との問答はただ業務的に鹿目と関わるというより、インキュベーターなりに鹿目に力を貸そうという努力が見受けられ、この辺りは微かに弱者への思いやりのような物が見える。鹿目からすれば冷徹極まるインキュベーターであるのだが、それでも鹿目が自分の願いを見出したことに対する、インキュベーターの影響は計り知れないものがある。
いうまでもなく Thinker ではあるのだが、特に鹿目と話す際は Te 的な、特に NTJ 的な理論ずくの話を滔々(とうとう)と展開する。毎度毎度憔悴している鹿目に、超然的な話で元気づけようとしている様は、もはや天然ボケにすら見える。
J と P
当初より強固な計画を立て、そのとおりに実行するということはなかった。だが、現状を分析して後先をよく考え、丁寧にリスクを回避しリターンを得る事ができていた。ゴールを明白に設定し、そのために必要なリソースを考えて行動した。 Judging である。
Judging だが EJ でなく IJ なので幾分受動的だ( Ni Dom、つまり Perceiving が先頭)。さらに SJ でなく NJ なので細密な計画というよりも大まかな方針・ルート策定を好む。有り体に言ってしまえば、 Judging だが状況に応じた柔軟な対応も得意なタイプである。
状況判断・予測能力は登場人物の中では圧倒的で、大人と子供といってしまってよい。行動に無駄がなく的確である。鹿目・美樹の勧誘は巴が死んだ段階で、一時距離を置くことを選んだが、既に美樹の行動傾向を読み切っており、抜かりなく契約した。逆に鹿目はじっくりと時間をかけ理性的に問答を繰り返し、鹿目に知識を吸わせた。各人の個性をよく読み取ってプランを組んでいるといる。
巧みに佐倉を誘導し、人魚の魔女との戦闘で死亡する可能性を高めた。あくまでワルプルギスの夜との戦いに佐倉を参戦させないための、婉曲な作戦であることも重要だ。逆に暁美については彼女の独立性から、自分の作戦行動にとって大した脅威にならないと考えていたようで、直接的な接触はほとんどない。聞く耳持たない暁美と接触するより、遥かに話をよく聞く鹿目との接触に重きをおいた。
細かいところでは3話で美樹と共にグリーフシードを見張る役割を受け持った時の理屈に則った話や8話で暁美の能力を看破するなど、非常に機転が利き、血の巡りが良い。無駄な行動は避け、機会を逃さない。頑強な規範・計画を好むタイプではないが、 Judging である。
おわりに
INTJ だ。クリアーな分析・考察が得意で、理性的である。序盤と比べると終盤は全くもって異星人というか、あるいはむしろ人間的なのか、冷徹極まる。問答の相手である鹿目とは同じ言語を話していても、フィールドが違う。それでも鹿目に哲理的疑問を投げかける、容赦のなさも INTJ というべきか。ある意味、インキュベーターは鹿目の知性を幾分認めていると考えられる。
インキュベーターはどう見ても鹿目のことを気に入っており、非常に興味深い生徒の様に見ていた節がある。はっきりといってしまえば、鹿目に対しては声のトーンすらも優しい感じがある。鹿目の拒絶には不満を感じられ、8話での「君も僕のことを恨んでいるのかな」のセリフも結構感慨深い。
逆に同じ8話でも暁美に対するセリフのトーンは、鹿目と話していたときと比べると遥かに刺々しい。君の馬鹿につきあわされるのはウンザリなんだ、とでも言いたげである。12話の新しい世界では、暁美とは凸凹コンビといった感じだが。恐らくはインキュベーターの理屈っぽい話を暁美が雑に一蹴するような、そんな間柄に見える。
インキュベーターのセリフは、鹿目の傷口に塩を塗り込むようなものが多い。
「そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ」
「それを正しく認識するなら、どうして今更たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?」
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