特効薬「イベルメクチン」を製薬会社が頑なに“隠す”理由 「開発中の新薬が売れなくなる」

国内 社会 週刊新潮 2021年3月25日号掲載

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効果を否定しているのは“お粗末な治験”

 花木氏もコロンビアのチームの治験について、

「プロトコル(実験計画)が4回も変更され、著者らもプロトコル違反を認めながら治験が継続された」

 と、寺嶋教授と同様の疑問を呈したうえで言う。

「イベルメクチンは、27カ国から報告された新型コロナへの効果も、全部錠剤で確認されているのに、この治験では水に溶かした水剤を使っている。水剤と錠剤で同等の吸収率や血中濃度が確保されるかどうかも不明です。またプラセボの作製が間に合わず、プラセボ群65人に5%デキストロース、つまり砂糖水が使われ、これでは見た目でも味でも容易にプラセボとわかってしまう。ありえない最たる点は、プラセボ群38名にイベルメクチンが投与され、イベルメクチン投与群の一部にプラセボが投与されていたこと。厳格な試験では考えられない凡ミスです。SNS上には、この論文をもとにイベルメクチンの有効性を否定する著名な専門家もいますが、信頼性が高い治験かどうか、しっかり読んで確認してほしいです」

 お粗末な治験だというのである。では、新型コロナへの有効性を否定したメルクについてはどうか。

「メルクには治験開始前に支援をお願いし、断られています。メルクは昨年4月、オーストラリアのモナシュ大学が発表した論文を根拠に、臨床レベルではイベルメクチンに効果がないと判断しているようです。モナシュ大学は、試験管レベルで新型コロナ抑制に効果があると発表しましたが、人に投与して効果を得るには、通常0・032マイクログラム/ミリリットルの血中濃度を4マイクログラム/ミリリットルと非常に高くしなければならない、と指摘している。しかし、この試験管試験にはサルの腎臓のベロ細胞が使われ、この細胞は人間の肺や気管支の細胞よりウイルスと結合しやすく、ウイルスを増殖させる力が千倍ほど強い。私たちの体内では、もっと低い血中濃度でも十分に効果を発揮できると思います」

大村博士「お金にかかわる問題がからんでいる」

 では、開発者の大村博士は、こうした状況をどう見ているのか。最初にコロンビアの論文について、

「よくあんな論文が名門雑誌に載ったと思う。海外の友人も“あの論文はアマチュアだ”と言っています」

 と述べたうえで、訴える。

「イベルメクチンの利点は飲むのが簡単で、服用回数が少なくてすむこと。ワクチンは変異株には効かなくなることも考えられますが、イベルメクチンは作用機序からいって変異株にも効くだろうと、私は考えています。しかし、特に製薬会社には、自分たちが作ろうとしている薬があるなどして、イベルメクチンを売りたくない、と考える人もいるのではないでしょうか」

 どういう意味か。

「私が“イベルメクチンを承認させ、もっと生産していこう”と持ちかけたとき、メルクは“やらない”とはっきり言いました。自分たちが開発しているワクチンが何種類かあって手が回らない、と。その後、2月4日の“コロナに効くという根拠がない”という発表を見て、メルクはイベルメクチンが使われては困るという考えだな、と悟りました。人命にかかわる問題以外に、お金にかかわる問題がからんでいるのだろうと。メルクの発表には、大勢の医療関係者がオープンレターを書いて反論してくれたようで、海外でも批判的な記事が出ていると聞きます。本来はメルク自身が治験をし、“使ってください”と言うべきですが、それができないのは、自分たちの薬を開発中だからでしょう」

「コロナと戦う武器は多いほどいい」

 医薬情報研究所SICの医薬情報部門責任者である堀美智子さんは、「臨床試験がすむまでは服用すべきではない」としたうえで、

「コロナと戦う武器は多いほどいい。人間は個別的存在で、いろいろな体質の人がいるのだから、さまざまな向き不向きがある薬やワクチンが何種かあるほうが、いいに決まっています。イベルメクチンはメカニズムを見るかぎり、変異ウイルスにも効果を失わないと思われ、臨床的効果が実証されることを願っています」

 と語る。現在、ワクチン接種が予定通りに進むかどうか予断を許さない。しかし、仮に順調に進んだとしても、同時に治療薬が必要であることは論をまたない。さる薬科大の教授は、

「イベルメクチンにはサイトカインストーム(免疫の暴走)を抑え、ウイルスがゲノムを細胞に送り込んで増殖するのを防ぐ効果が期待されています」

 と言い、さまざまな薬への期待をこう語る。

「サイトカインストームが起きると、微小血栓が脳や心臓にでき、命にかかわる症状を引き起こしますが、カモスタットはこれができるのを防いでくれます。同様にナファモスタット(フサン)も期待大。この二つは膵炎などの薬で、こういった内服薬の選択肢が増えるとありがたい」

高価な新薬を売りたい製薬会社

 しかし、カモスタットは臨床試験の結果が4月にも出そうだが、イベルメクチンは時間がかかる。ひとえにメルクが消極的だからだが、その理由を、さる製薬会社の関係者は大村博士の話を補うように、こう読む。

「メルクはワクチンの開発に失敗したのち、新治療薬候補モルヌピラビルの治験を進めています。イベルメクチンは1錠671円なのに対し、新薬は1錠数万円で売れますから、そちらを推したい気持ちはあるでしょう。レムデシビルも1人分が24万円です。廉価なイベルメクチンが有効だとわかってしまえば、新薬は不要になって、すでに投入した開発費なども回収できなくなりますから」

 また、大手製薬会社の幹部社員も言う。

「たとえば糖尿病にも、昔作られたピオグリタゾンという、安くて効く薬があるのですが、製薬会社は最近作られたSGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を売りたい。昔のものはあまり宣伝しません」

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