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対面とオンラインの同時併用授業の実施方法と必要設備について

ここに記載されていない耳寄りな情報があれば、是非ともお寄せください!

目次

オーディオに関する対応

対面とオンラインを同時併用したライブ授業を実施する場合、オーディオ環境に最も注意を払って準備を行う必要がある。オーディオ環境が整っていないと、相手の声がよく聞こえない、音がこもって聞きづらい、エコー(音の回り込み)が発生して会話ができない等の支障が発生し、ライブ授業が成立しなくなる。このような聞く側における支障は、話す側に原因があることが多いが、話す側は自分で支障を実感することができないため、原因の特定が容易ではなく解決に時間がかかることが多い

このような問題の原因の一つであるエコーを防止するためには、Zoomのようなビデオ会議システムを利用する場合、一つの部屋の中でオーディオを扱う端末を1台に限定することが原則である。詳細については「複数端末を利用する場合の注意(エコーを起こさないために)」を参照。

その上で、一つの部屋の中でオーディオを扱う1台の端末に対して、必要に応じてスピーカやマイクなどの音響機器を追加することになるが、授業の形態によって、追加すべき機器が異なる。

以下では、ビデオ会議システムでオーディオを支障なく扱うために準備する際の考慮点について、授業形態や講義室形態ごとにいくつかに分類して説明する。(後ろに行くほど高度な内容となる。)

なお、いずれの場合も毎回の授業開始前に必ず声が聞こえているかどうかの確認を実施すること。また、講義中の音声トラブルに備え、音声の受信状況を監視するTAを置くか、受講者から容易に連絡できる体制を準備しておくことも重要である。(講義室内で別の端末にヘッドホン等を接続して監視する場合は、前述のエコーが発生しないよう十分注意すること。)

従来のオンライン授業向け設備の範囲で実施する場合

講師が講義室からオンライン授業を実施する場合、これまでの完全オンライン授業と同じ設備のみを利用する方法が最も準備が簡単である。

ただし、講義室に受講者も同居する場合は、エコーが発生しないように以下の配慮が必要であることを周知する必要がある。

講義室の音響設備と接続しない場合

1. 少人数の授業、講師が終始着席して行う授業

パソコンやスマートフォン等の端末に附属のスピーカとマイクの品質は向上しており、一人でオンライン授業に参加する場合は十分であることが多い。しかし、講師と受講者の複数人(少数)で一台の端末を共用する場合は、スピーカの音量が十分でない(小さい)、正面でない/遠くの声をマイクが拾いきれないなどの問題が発生する。

このような場合は、外付けの会議用スピーカーフォン(スピーカマイク、マイクスピーカなどとも呼ばれる)を用意することが、最も運用が簡単で安定的である。

また、iPadについては、ある程度広範囲の声を拾うことができ、スピーカやマイクを増設しなくても実用に耐えるという情報がある。 機種によって性能が異なる可能性があるので、一度試してから判断されることをお勧めする。 (ネットワーク環境に関する対応も参照)

2. 板書などで講師が動きながら行う授業

講師が定常的にマイクに向かって近くで話すことができない場合、マイクが講師の声を安定して拾うことができず、遠隔の受講者が声を聞き取りづらくなる。そのような場合は、講師の声を安定して遠隔側に届けるための方法を準備しておく必要がある。

A) 講義室の音響設備を「併用」する場合

講義室の音響設備に直接「接続」せずに「併用」する方法である。講義室の音響設備附属のワイヤレスマイクを利用できるスタイルの講義であれば、声が音響設備で安定して拡声されるようにしておくことで、その拡声された声をビデオ会議システム端末のマイクで拾うことにより、遠隔側にも声を安定して届けることができる。(この場合も、前項のスピーカーフォンを端末に接続しておくことが望ましい。)

ただし、講義室の音響設備のスピーカからの声は、室内での反響などによって不明瞭な(こもった)声になることがあるため、音響設備のスピーカとの位置関係を調整するなどの対応が必要となることがある。(マイクの指向性を調整することができる場合は、スピーカの方向からの音を優先的に拾うようにしておく。)講義室内での質疑等では、遠隔側にもやりとりが聞こえるように、講義室の受講者もマイクを利用すること。(あるいは、講師が質問を反復する。)

B) 講義室に音響設備がない(利用しない)場合

ビデオ会議システム端末のマイクとして、講師が常に身に着けて(持ち歩いて)利用できるマイクを用意する。

マイク形状ごとの注意点

いずれも、(講義室の音響設備であれば、室内拡声によって自分の声の大きさが確認できるが)室内拡声がない場合は確認が難しいため、自分の声をモニタする方法を用意しておくことが望ましい。ただし、ビデオ会議システムを経由した声をモニタすると遅延が大きく、自分の声が少し遅れて聞こえてくることで思考が妨げられ話すことが難しくなるため、ピンマイクで拾った声を直接モニタする仕組みを用意する方が良い。

接続方式ごとの注意点
複数のマイク(音声入力)を併用する方法

ビデオ会議システム端末(パソコンやスマートフォン)に複数のマイクやスピーカを接続しても、通常はどれか一つのマイクとスピーカしか利用することができない。講義室の中で、講師と受講者がともにマイクを利用する必要がある場合、一つのマイクを手渡しで利用するのは煩雑であるため、複数のマイクが利用できると便利である。ただし、複数のマイクを併用する場合は、個別にミュート操作ができることが望ましい。(端末側では、マイクを個別にミュート操作することができないため。) また、Bluetooth接続のマイクを混在させる場合は、伝送遅延が大きくエコーが発生する原因となることがあるので、利用するマイクの種類を合わせるか、個別にミュートできるものを利用することが望ましい。

複数のマイクを同時に利用するには、次の方法が考えられる。

1. 複数のマイクが附属した機器を利用する

ネットで検索すると、2人用のマイク(マイクが2つで接続端子は1つ)等が存在する。

2. ミキサー(機器)を利用する

アナログ接続(ワイヤレスマイクの受信機の出力がアナログのものを含む)であれば、複数のマイクをミキサーの入力に接続し、ミキサーの出力を端末に接続することで、複数のマイクを併用することができる。ミキサーを利用することで、マイクごとに音量調整が可能になるとともに、モニタ出力を併用してヘッドホンなどで送信音声を確認できるようにしておくと、トラブル対応が容易になる。 また最近は、パソコンにUSBで接続して、オーディオを入出力することができる製品もあり、そのような製品を利用することで、アナログ接続のトラブルを減らすことができる。また、Zoomでは、パソコン上で動作させるアプリを共有する際に、アプリからの音を含めて送信することができるが、そのような機能を持たないビデオ会議システム端末の場合にも、アプリからの音を入力側にフィードバックする機能を持った製品を利用することで、Zoomと同様にしてアプリからの音を含めて共有することができる。

製品例(あくまでも例です):

3. 仮想ミキサー(ソフトウェア)を利用する

ソフトウェアで実現された仮想ミキサーをパソコンにインストールし、マイクの音を一旦仮想ミキサーに経由させるように設定することで、パソコンに個別に接続された複数のマイクの声を混合してからビデオ会議システム端末に送り込むことができる。

仮想ミキサーの例(あくまでも例です):

講義室の音響設備と接続する場合

講義室の音響設備は、複数のマイクとミキサー機能(前述)を備えているため、テレビ会議システムの端末と容易に接続することができれば、様々な機器を準備する手間が不要となる。しかしながら、講義室の音響設備に用意されている接続端子が、テレビ会議システムを接続することを想定した仕様(マイナスワン)になっていないと、一つの部屋の中でオーディオを扱う端末を1台に限定していたとしても、エコーが発生する要因となる。詳細については、前述の「複数端末を利用する場合の注意(エコーを起こさないために)」を参照。

PCに入出力するオーディオの音量を柔軟に調整するためには、ミキサー(機器)を利用する。

Yamaha ウェブキャスティングミキサー AG06 を利用する場合の例

備考: ワイヤレスマイクに関する電波法関連法令改正について

講義室の音響設備に附属するワイヤレスマイク機器には、B型規格の製品が利用されることが一般的である。電波法関連法令「無線設備規則」が2005年に改正され、それ以前に購入した特定小電力無線機器(B型規格のワイヤレスマイクを含む)は、2022年12月1日以降に利用すると電波法違反となる。もし、2005年以前に整備したワイヤレスマイク機器を引き続き利用している場合は、期限までに機器の更新が必要である。

参考: https://sol.panasonic.biz/file.jsp?sound%2Fspu2022.pdf

ビデオ会議システムを併用する場合

講義室や会議室によっては、ビデオ会議システム(H.323規格準拠のもの)が備え付けになっている場合がある。このような場合、室内音響設備がそのまま利用できるように設計されていることが多く、部屋に備え付けのワイヤレスマイク等がそのまま利用できる。 ビデオ会議システムとしては、例えば以下のような機器が代表的である。

利用するWeb会議システムによっては、このような(旧来の)ビデオ会議システムを接続して利用することができる場合がある。京都大学が契約しているZoomの全学ライセンスでは、「H.323/SIPルームコネクター」のオプションをつけており、利用することが可能である。(ミーティングルームを予約すると接続情報を確認することができる。)

ビデオ会議システムをWeb会議システムに接続して利用する際には、次の点について注意が必要である。

ビデオカメラに関する対応

カメラ内蔵の端末があれば、適宜カメラの向きを変えて見せたいものを撮影することで最低限の対応ができるが、複数のカメラを使い分けたいときなどは次の方法が利用できる。

1. カメラの付いた別の端末を2台目のカメラとして利用する

2台目の端末(スマートフォンも可)をZoom等に接続して利用する場合は、次のことに注意する必要がある。

2. PC端末に2台目のWebカメラを増設する

なお、講義室内の状況を遠隔参加者にも伝えることがカメラの最小限の用途(パソコンで画面共有した資料を使いながら授業を行う形態での参考映像)であるが、板書等を併用する形で講師が動きながら授業を進める場合は、板書の時が読める程度の解像度で講師の姿も含めて撮影できるようなカメラの準備が望まれる。しかし、そのような高度な撮影を自動で行うカメラは、現時点でまだ普及していない(音声認識や動き認識で撮影方向を自動制御する製品は存在するが、実用に耐えないものが多い)。

したがって、対面とオンラインを併用する場合は、オンラインのみの際に利用していた方法を踏襲し、ビデオ会議システム端末の受信映像を講義室内でも提示する形を採ることが、もっとも容易な対応となる(次項参照)。

スクリーン投影に関する対応

講義室のスクリーンに投影する映像は、講師の端末の画面を直接投影するのではなく、受講者用として別の端末を用意し、その端末の画面(受信映像)をスクリーンに投影する。このようにすることで、遠隔側の受講者が見ている映像を確認しながら授業を進めることができ、操作ミス等のトラブルが少ない。(ネットワークの混雑などで通信に問題があると、音声と映像の同期がとれなくなることがあるが、音声通信が優先されるため、映像が伝わるまでに数十秒の遅れが発生することがある。このような問題の有無についても確認することができる。)

パソコンやタブレットのホワイトボードアプリや、パソコンと連携できる電子黒板等があれば、そのアプリをビデオ会議システム端末で画面共有したものをスクリーンに表示する形で対面授業にも対応することができる。

ネットワーク環境に関する対応

伝送帯域に対する配慮

画面共有で送信する映像が消費するネットワーク帯域を抑える方法として、フレームレートを低く設定する方法がある。 Zoomクライアントの設定画面で、「共有画面」の「詳細」のページにある「画面共有対象を以下に制限する」の項目で、1秒あたりのフレーム数を少なくすることで、帯域を低く抑えることができる。当然のことながら、伝送された映像の動きがぎこちなくなることとのトレードオフとなる。

部屋の電波環境に対する配慮

ビデオ会議端末は無線LAN (Wi-Fi)で接続して利用することが可能であるが、講義室に複数人が集まると、無線LAN環境が不安定になる可能性が高まるため注意が必要である。例えば、次のような要因が懸念される。

このようなことから、利用する必要のない機器の無線機能をOFFにする(電源を切る)、授業に利用する(特に重要な)端末は有線接続にする、といった配慮を行うことが望ましい。

貸し出し端末用アカウント設定

オンライン授業の実施のために、iPad等のタブレットを用意し、授業ごとに講師に貸し出すような運用を行いたい場合がある。 このような端末をネットワークに接続するためには、認証用のアカウントが必要となるが、SPS-IDなど個人での利用を前提とするアカウントをこのような端末に設定することは望ましくない。 eduroamであれば、それぞれの端末用にアカウントを発行することが可能である。

現時点では、ビジター用のアカウントは有効期間が最長1ヵ月のものしか発行できないため、それより長期に利用する必要がある場合は、タブレットの管理者の責任において本人用のアカウントを発行してご利用ください。アカウント数が不足する場合は、情報環境機構までご相談ください。

Last modified: 2020/9/24