米、カナダ・メキシコに備蓄ワクチン分配へ 英製の一部
【メキシコシティ=宮本英威】米政府は18日、同国が備蓄する英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルス用ワクチンの一部をカナダとメキシコに供給する方針を明らかにした。米国は同ワクチンの使用を承認していないが、カナダとメキシコは承認しており、接種拡大のために供与の要請が寄せられていた。
サキ米大統領報道官は18日、両国へのワクチン供給について「計画は最終段階にある」と述べた。19日にも詳細が発表となる見込みだ。
サキ氏は「我々の最優先は米国民だ」と指摘しながらも「隣国へのワクチン供給はパンデミック(世界的大流行)を終わらせるのに重要なステップとなる」と語った。
サキ氏によると、米国にはアストラゼネカ製ワクチンの備蓄が700万回分ある。このうちカナダに150万回分、メキシコに250万回分の供給を予定している。貸し出しの位置づけで、両国に余裕ができた場合は返還することになる。
米国は、北米の新しい通商協定であるUSMCAを通じて、カナダとメキシコと経済的に強く結びついている。両国への供給により、経済の復興を後押しする狙いもある。
メキシコのエブラルド外相は18日、ツイッターへの投稿で「良い知らせだ」と歓迎した。メキシコの新型コロナ死者数は19万5908人と、世界で3番目に多い。ワクチン接種は17日時点では473万回で、全人口の4%以下にとどまっている。
米国での備蓄ワクチンを巡っては、欧州連合(EU)も入手に関心を寄せていたが、米は分配を認めないとの報道もある。米国が両隣国に供給を認めることは、国際的なワクチン摩擦に発展する可能性もありそうだ。
EUのミシェル大統領は9日、英国と米国に言及して「自国の領土で生産したワクチンやその成分の輸出を全面的に禁止している」と批判していた。
アストラゼネカのワクチンについては、接種後に血栓ができる症例が見つかり、接種を見合わせる国もあった。EUで医薬品の審査を担当する欧州医薬品庁(EMA)は18日、指摘された血栓との因果関係はないと結論づけ、安全性を確認したと発表した。