アストラゼネカ製ワクチン「安全性を確認」 EU当局
血栓との因果関係なしと結論
【フランクフルト=深尾幸生】欧州連合(EU)で医薬品の審査を担当する欧州医薬品庁(EMA)は18日、英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンについて、安全性を確認したと発表した。指摘された血栓との因果関係はないと結論づけた。同ワクチンの接種を見合わせていたドイツやフランス、イタリアは19日に接種を再開する方針を示した。
記者会見でEMAのエグゼクティブディレクター、エマ・クック氏は「このワクチンは安全で有効だという明確で科学的な結論に達した。血栓のリスクを高めるというリスクとは無関係だ」と述べた。特定の生産ロットでの品質問題があった証拠も見つからなかったとした。
一方で、血栓の中でもより希少な症例については現時点のデータからは関連性を決定的には排除できないとした。こうした症例は17日時点で2千万回の接種のうち、接種後に25例が報告されたという。EMAは医療関係者や接種者などへのリスクの周知を徹底することを推奨した。
アストラゼネカのワクチンをめぐっては接種後に血栓ができる症例がみつかったことから、ドイツやフランスなど欧州の15以上の国が一時的に接種を見合わせている。EMAは先週来、継続接種を勧めるのと並行して、専門家委員会で症例を詳しく調べていた。仏独やイタリアなどは、EMAの調査結果を再開の条件にしていた。
EUは同ワクチンを追加可能分を含め4億回分契約済みだ。データベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると人口100人あたりの接種人数は17日時点で約12人と英国や米国と比べ遅れている。接種が再開される見通しとなったことで加速が期待されるが、市民による同ワクチンへの不信感も生まれており、その払拭が課題になる。
ドイツのシュパーン保健相は18日夜、19日からアストラゼネカ製ワクチンの接種を再開すると明らかにした。フランスのカステックス首相も18日の記者会見で「19日午後から接種を再開する。私自身も接種を受ける予定だ」と語った。
イタリアも19日から投与を再開する。ドラギ首相は18日に出した声明で「EMAの発表を歓迎する。政府の優先事項は、可能な限り短時間で多くの接種を達成することに変わりはない」と述べた。スペイン紙パイスも18日、スペイン政府が来週から同社ワクチンの接種を再開する方針だと報じた。
EMAの決定を受け、アストラゼネカのアン・テイラー最高医学責任者は18日、「我々のワクチンの高い有用性について確認する当局の判断を歓迎する」とコメントした。同社は副作用などに関するデータを引き続き分析し、各国の規制当局と共有するとしている。
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- 小平龍四郎日本経済新聞社 編集委員ひとこと解説
物議を醸す言い方かもしれませんが、あらゆる薬やワクチンには副作用がありえます。インフルエンザのワクチンでも健康に問題が起きることはあります。問題は確率。そして、ワクチンを接種することとしないことの利益・不利益の比較考量ではないでしょうか?もちろん、科学的なエビデンスを伴う判断でなければなりません。コロナウイルスのワクチンは常軌を逸した速さで承認されているので、問題の存在が指摘されたら機動的に接種を一時止め、検証しなおすという柔軟な対応も求められます。
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