『呪術廻戦』と『鬼滅』、アニメを比べて見えた制作サイドの「決定的な違い」

「制作スタイル」がまるで異なる
倉田 雅弘 プロフィール

その反面、ひとつの作品に会社総出でじっくり時間をかけて関わることが多くなるので、制作できる作品数は自然と少なくなる。公式サイトのWORKS欄で2005年から2020年にかけての作品を見てみると、平均すればほぼ1年に劇場アニメーションとテレビシリーズを1作ずつ制作するペースだ。

このような、時間をかけて相互理解を深めることで、制作する作品の質を向上しようとしう姿勢は、社内だけに止まらない。劇場版「空の境界」シリーズを受けての「Fate」シリーズなど、過去に制作した作品の関連作を多く手がけているのも、原作者を含めた製作サイドと相互理解や信頼を深めている証だ。

『鬼滅の刃』のアニメを制作するになったのも、“TYPE-MOON×ufotableプロジェクト”を担当した株式会社アニプレックスのプロデューサーから指名されてのことだった。

劇場版「鬼滅の刃」を見に来た観客で賑わう映画館[Photo by gettyimages]
 

制作会社が、アニメに出資する理由

またufotableはアニメ制作にあたり、ただ制作するだけでなく、積極的に出資して製作委員会に参加している。

従来アニメの制作会社は、特に漫画やゲームなど原作がある作品をアニメ化する場合は、製作委員会から発注される下請けの立場であることが多い。この場合、作品の内容や制作の方向性の決定権は主に製作委員会に握られるのだが、ufotableは自ら出資することで制作の自由度をあげている。

経営面でいえば、作品がヒットした場合、出資比率によって利益配当が受けられるのも大きい。前述の下請けの立場であれば、制作会社が受け取ることができるのは製作委員会から渡される制作費のみのため、質へのこだわりも過ぎれば予算を超過してしまい、制作会社の持ち出しになる場合もある。

もちろん質の高い作品が必ずヒットして黒字になるわけではないが、制作上での質のこだわりがシンプルに社の利益に結び付いた形といえるだろう(ちなみにufotableが制作した作品の多くは、製作委員会名義ではなく、製作に参加した各社が個別に表記されている)。

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