2015年の投票は反対多数で否決され、橋下氏は政界を退いたが、その後、知事選、市長選で圧勝する維新は再提案してくる。
2018年12月、都構想を協議する法定協議会で公明党大阪本部の佐藤茂樹会長は、松井氏と激しくやりあっていた。その際、松井氏が「約束違反や」と怒った上、ある「密約」を報道陣に暴露したのだ。維新は公明党に対して水面下で「都構想に賛成すれば選挙区に候補を立てない」と提案し、公明側はそれを飲んでいた。
だが、学会員らは「維新の会憎し」で必死に戦ってきた。彼らには「えっ、上層部はそんなことをしていたのか」と映ったはずだ。昨年の統一地方選までは公明党は維新と戦ったが、自民の重鎮が次々と維新に落とされた姿を見て、さらに怖気づき全面賛成に回ってしまったのだ。
前回の住民投票では、公明支持者や学会員は必死に反対の運動をしていた。それが、特別区の数を5から4にする程度の変更をして党中央が「前回は反対でしたが今回は公明党が協力した素晴らしい都構想の協定書ですから賛成しましょう」と豹変させたのだ。
しかし自主投票で学会員らは賛成に動かなかった。選挙の時、地区集会などにはいつも学会関係者が動員をかけてにぎわせて見せるが、今回はさっぱりだった。ある学会の男性はいう。
「党の幹部たちは、国会議員の議席を守るためには私たちの矜持はどうでもいいのか。もう党利党略でしかない。維新に脅されては媚び続ける、みっともない姿に情けなくなりました。維新が怖かったと正直に言えばまだいいのに」
公明党発祥の地は大阪だという。それならなおのこと、党幹部たちは浪速の支持者のどこを見てきたのか。平和主義をかなぐり捨てたPKO法案賛成に始まり、政権与党にしがみつくため「日和見」を続けてきた公明党。それは勝手だが、党首が現地入りして「なっちゃんです。勝たせてください」と言えば、自分たちを支持してくれる創価学会員たちが唯々諾々と従ってくれると思ったのか。それなら、どの党よりも支持者を馬鹿にした話である。
今回の住民投票で学会員たちが投じた反対票は、「よらば大樹」で動いてきた党幹部に対して「NO」を突き付けた、関西人らしい反骨精神の発露だった。国会議員の議席を守るための維新にすり寄り続けた挙句の敗北は、公明党の今後の党運営にとって「維新の会」以上に深刻な打撃となった。
(文・写真=粟野仁雄/ジャーナリスト)