まず『鬼滅の刃』の制作会社であるufotableは、代表を務める近藤光氏を中心に2000年に設立された。2003年のテレビシリーズ『住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー』から、シリーズ全話の工程を管理する「元請」として制作を始めるものの、注目を浴び始めた契機は、2007年から2010年にかけて上映された劇場版「空の境界」シリーズと言っていいだろう。
奈須きのこの同名小説を原作とした同シリーズは、ゲームブランドTYPE-MOONとの “TYPE-MOON×ufotableプロジェクト”の第一弾だ。当時すでに『月姫』や『Fate/stay night』などのヒットによって、TYPE-MOONと奈須きのこの名は広く知られており、その原点といえる小説『空の境界』の初アニメ化にファンは多大な期待を寄せていた。
こうしたファンの期待に応えるため、ufotableは当初はシナリオ会議への参加を拒んでいた奈須きのこを口説き落とし、原作者のアイデアを積極的に採用した。さらに三部作の予定だった劇場版の構成を、原作小説に合わせて全8章8作に変更するなど、原作に寄り添う形で映像化に取り組んだ(そのため各作60分前後と劇場アニメとしては短い)。
その結果、都内の単館レイトショーから始まったこのシリーズは、最終的に25万人を超える観客を動員するヒット作となったのだ。
また同作は制作の面でもufotableのターニングポイントとなった。同社の特徴として、企画から演出、作画、仕上げ、美術、3D、撮影など、音響関係を除いた映像制作の主要な工程を担当する部署を社内に擁しており、内製比率が非常に高いことが挙げられる。多くの場合、こうした工程は外部の作画スタジオや撮影会社に発注される。