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 不具合が相次ぎ問題となった、新型コロナウイルス対策の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の新たな保守・運用体制が整いつつある。政府側の体制を刷新してから1カ月がたち、政府CIO補佐官の東宏一氏は「(ソースコード共有サイトの)GitHubの活用がようやく軌道に乗ってきた」と話す。

 Android版のCOCOAで、陽性登録したアプリ利用者と接触しても検知しないという致命的なバグが明らかになったのは2021年2月3日のことだ。政府はこの問題を受けて、これまでの厚労省に内閣官房IT総合戦略室(IT室)も加えた「連携チーム」を2月18日に立ち上げ、COCOAの保守・運用体制を刷新した。政府CIO補佐官らが連携チームを技術面でサポートするほか、情報収集体制も構築。ここでフル活用しているのが、致命的なバグの存在について早くから指摘されるといった因縁のあるGitHubだ。

「Covid-19 Radar Japan」メンバーも書き込む

 2月26日、同じく連携チームに参画する政府CIO補佐官の関治之氏はGitHubのCOCOAのリポジトリに、「イシュー(課題管理)やプルリクエスト(機能ブランチの反映リクエスト)については、必要に応じて回答いたします」などのIT室としての運用方針を明記した。その後もコメントへのレスポンスなどのやり取りを続けている。

COCOAのリポジトリの画面。イシューやプルリクエストが相次いで寄せられている
COCOAのリポジトリの画面。イシューやプルリクエストが相次いで寄せられている
(出所:GitHubの画面を日経クロステックがキャプチャー)
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 GitHub活用の狙いの一つは、外部の開発者コミュニティーとの交流による情報収集や意見交換で、COCOAの保守・運用をスムーズに進めることだ。

 COCOAは米グーグル(Google)と米アップル(Apple)が提供するソフトウエア基盤「Exposure Notification API」がベースとなっている。APIは頻繁にバージョンアップしており、保守・運用にはグーグルとアップルのそれぞれの指示を読み解いたうえで実装するという、情報収集と読み解きのスキルが必要だ。

 「頻繁に変わる仕様などの情報を迅速に収集・反映していくのは、委託事業者だけでは無理があった」(東氏)との反省から、GitHubの開発者コミュニティーの議論をCOCOAの保守・運用に反映させることにした。COCOAは有志のエンジニア集団「Covid-19 Radar Japan」がオープンソースソフトウエア(OSS)で開発したアプリが基になっている。2月下旬には「Covid-19 Radar Japan」のメンバーの広瀬一海さんもプルリクエストを書き込むなど、活発なやり取りが続いている。