山口 昌子(やまぐち しょうこ) パリ在住ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
理由の多くは男性の「嫉妬」。3月8日国際女性デーで「男女平等」が叫ばれるのに……
レイプの場合、3人に1人は「職場」で被害を受けており、しかも、加害者は「上司」が多いという調査結果もある。セクハラにパワハラが加わった最悪のケースだ。驚いたことに、「セクハラ」や「性差別」を糾弾する側のメディアの世界に被害者が多い。シアッパ副大臣によると、女性ジャーナリスト及びジャーナリスト学校の実習生を対象に調査したところ、1837人の回答のうち1500人が「セクハラ」を受けたと回答。うち2人はレイプされたと告白した。
メディアの中でも、「容姿」や「外見」が問題になるテレビ界でこの傾向が強いという。「ブス!」「引っ込んでいろ!」「もっと胸を見せろ」などの侮蔑的な言葉は日常茶飯事とか。
欧州就業女性の反セクハラ、反パワハラ会(AVFT)のマリーン・バルテーク会長によると、セクハラ問題のセミナーなどの後、取材に来ていた女性ジャーナリストから“身の上相談”をされる場合が度々あり、メディアの世界でセクハラ被害者が多いことを実感しているそうだ。日本の場合も、同様の傾向があるのか、ないのか。
マクロン政権は「男女平等」を最優先政策のひとつに掲げている。3月8日の「国際女性デー」を前に、シアッパ副大臣が6日の閣議で発表したところによると、「男女平等」関連の具体的政策が百あるほか、年間予算5億3000万ユーロ(1ユーロ=約125円)は、この分野での「過去最高額」だ。
副大臣はそのうえで、昨年8月3日採択の新法「反性暴力と反性差別」の施行状況などを説明した。同法では、男性が道路で通行人の女性を、「スカートが短いぞ!パンツ丸見え」なんてからかっても、「セクハラ」とみなして罰金刑に処すという厳しい内容だ。痴漢の場合は即、罰金刑に処せられる。初犯が1500ユーロ、再犯の場合は3000ユーロと高額だ。
副大臣によると、年間数千人の女性や同性愛者が犠牲になるインターネットによるサイバー・ハラスメントに対しては、電話相談が24時間可能な特別回線「3919」を増設した。警察、緊急隊員、病院とも連携を取り、加害者の特定や逮捕などに貢献している。この数年、被害者が増加の一途にある分野だけに、さらなる対抗策も検討中だ。
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