
【時代の正体取材班=成田 洋樹】船員の卵の育成を担う県立海洋科学高校(横須賀市)の実習船「湘南丸」(696トン)に女性教官が誕生した。高校卒業後に美容師として働いた後に大学で学び直して教職に就いたという経歴を持つ。「生徒一人一人の可能性を引き出すことができる教員になりたい」。子どもの頃からマリンスポーツに親しみ、海を愛してやまない思いが歩ませた針路。2カ月に及ぶ遠洋航海を前に気持ちがはやる。
市川愛教諭(35)は2014年度の教員採用とともに同校に水産科教諭として着任し、海や船、水産物について全般的に学ぶ「海洋基礎」の授業などを受け持ってきた。実習船に乗り組む教官に必要な国家資格を持っており、湘南丸での遠洋航海は16年度以降2回経験し、今回から本格的なスタートを切る。前身の三崎水産高校を含め80年近い歴史を誇る海洋科学高校で初めての女性教官で、全国の水産高校でも珍しいという。

小さな頃から家族と一緒に三浦市の海岸でシュノーケリングに親しんできた。就職後、いつものように潜った海岸でごみを拾って歩く人たちの姿を目にしたことが転機になった。「このきれいな海は地道な活動によって守られている」。趣味の場としてしか考えていなかった目の前の風景が違って見えてきた。大好きな生き物と接し、人生の楽しみを教えてくれた海。水産高校教諭になって海を守る環境教育を実践したいという思いが膨らんでいった。
仕事を辞め、東京海洋大に進学したのは26歳の時だった。