九州大と国立医薬品食品衛生研究所の共同研究チームは17日、抗うつ剤の承認薬「クロミプラミン」(商品名アナフラニール)に、ヒトの細胞へ新型コロナウイルスが侵入するのを防ぐ作用があることを確認したと発表した。変異株への有効性が期待される他、ウイルスの増殖を抑制する効果もあるといい、動物実験や臨床で検証を進めて早期実用化を目指す。
新型コロナウイルスは、ヒトの細胞表面で受け手となる受容体たんぱく質に結合して細胞内へ侵入し、RNA(リボ核酸)の遺伝情報に従って増殖。細胞外へ放出されて他の細胞に感染が広がるとされる。
17日に福岡市で記者会見した九州大の西田基宏教授(薬学)は、クロミプラミンを投与した動物細胞の実験で、結合したウイルスの細胞内への侵入を防ぐ高い効果が明らかになったと報告。西田教授は、たんぱく質が結合しやすく変異したウイルスにも一定の効果が期待できるとしている。
また、細胞が感染した後に投与するとウイルスの増殖を防ぐ強い作用も確認され、新型コロナ治療薬「レムデシビル」と併用した場合は100%に近い増殖抑制効果があったとの結果が得られたという。西田教授は「併用により強い効果が得られる。少しでも早く重症患者に届けたい」とし、臨床段階の有効性や安全性の検証を国が率先して支援するよう呼び掛けた。【門田陽介】