骨と卵   作:すごろく

25 / 25
どうも、作者です。

少し間が空いてしまいました、すみません。

季節は春って事で、春に纏わる様々な事柄を織り交ぜて見ました。
作中は特に季節の記述は無いのですが、気にしないでくださいね。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その25 優しさも連鎖する。

心地良い風が吹き雲がゆっくり流れてゆく

木漏れ日は優しく金色の髪をキラキラと輝かせている。

「こんな場所を知ってたのか?」

髪を撫でながら男は問いかけた。

「うん。前に薬草取りに近くまで来たんだー」

女はさも気持ち良さげに目を細めた。

 

やがて2人は草の上に仰向けに寝そべり

しばらく2人は何も言わず流れる雲を見ていた。

 

「ねぇ、アレってホント?」

分厚い胸に寄り添っていた女は上目遣いに訊いてきた。

「アレ?」

「俺のクーレにって言ってた事」

そう言って少し恥ずかしそうに目を逸らした

男は上半身を起こし女の顔を自分に向け言った

「状況が目に入ったら思わず口から出てた。気に障ったら謝る。」

女は激しく頭を振って今度は自分から男の目を真っ直ぐに見つめた。

「ううん、違うの。その逆、とっても嬉しかった。アタシん事想ってくれてんだーってさ」

すると今度は男が目を逸らし

「あ、当たり前じゃないか」

と少し怒った様にプイと横を向いた

 

女は男に寄りかかり2人はまたしばらく雲を眺めた。

 

「ねぇ」

「今度は何だ」

「キレイなカラダじゃなくてもイイの?」

「俺が一生かけて洗い流してやる」

「いっぱいヒトも殺しちゃったよ?」

「俺がその罪を背負ってやる」

「それから、それからね」

男はそっと指を女の唇に当てた。

「何も言うな。お前は俺の女だ。分かったな。」

 

にっこりと微笑み

「不束者ですが、よろしくお願いします。」

 

互いの柔らかさを確かめ合う様にその唇を重ね

舌が絡み合うまでに時間は掛からなかった。

熱い吐息はやがて激しさを増し

どちらとも無く求め合った。

 

 

(こんな昼間っから!うらや、けしからんでござるな!)

草むらに身を沈め一部始終を見ていたその者は

気づかれない様にそっと森に帰って行った。

 

ーーーーー

 

「こんな楽な仕事で申し訳ねぇーな。」

ルクルットは林檎を頬張りながらペテルに言った。

「最初はスケルトンに驚いたであるが、作業指示だけであるからな。楽勝である。」

「ところでリーダー。ニニャの事だけどよ。」

「今はもうセリーシアだぞ。」

「そこなんだよな。今更この稼業へってのもどーかって思うんだよね。2人はどー思うよ?」

「お姉さんとも出会えた訳だし将来を考えてやらねばいけないのである。」

「本人はどう思ってるだろうな。」

「ニニャ、いやセリーシアの事だから俺たちに気ぃ使ってチームへ戻るなんて言い出すと思うぜ。」

「優しい子なのである。」

「ここは俺たち大人がって訳だな。」

「「そうだ。」」

「よし。一度本人に言ってみようか。もしこの村に残るってんなら俺からサトルさんに頼んでみるわ。」

「宜しく頼むぜリーダー。可愛い"妹"なんだしな。」

 

ーーーーー

 

「どう?村には慣れた?」

「あ、エンリさん。はい、お陰様で。それと妹たちがネムちゃんにすっかり懐いちゃってご迷惑じゃないですか?」

「ううん。迷惑だなんて、ネムも喜んでるぐらいだから。あの子、村でも1番歳下だったから妹が2人も出来たって。」

「ありがとうございます。そう言って貰えると助かります。それとお仕事の事なんですけど、私たちにも何かお仕事をさせて下さい、お願いします。」

「まだ来て日が浅いんだから気にしなくてもいいのよ?」

「いえ、ちゃんと仕事はしなくてはいけません。遊んでばかりだとウチの両親みたいになっちゃいます。」

「フフ、真面目ねぇ。わかったわ。じゃあ妹さんたちにはンフィーのポーション作りを手伝って貰いましょう。手伝いくらいなら出来ると思うから、ンフィーには私から言っとく。それからアルシェさんには、、、そうね、攻撃魔法が使えるから薬草採取の時の護衛をお願いしようかしら。そしたら村の警護はガゼフさんとクレマンティーヌさんの2人になるから安心だわ。」

「ありがとうございます!頑張ります!」

「はい、はい。宜しくね。それよりサトル様はもう大丈夫?」

「すいません、心配かけちゃって。あれからサトル様には指輪を貸して貰ったんですよ、耐性があるって仰ってました。」

「そうなの。皆んなの意見でね、サトル様にはあのままで居て貰う事になったの。だからね。」

「サトル様は村の人皆んなに愛されているんですね。」

「そうよ、そしてそれ以上に村の人皆んなを愛して下さってる。」

「こんな優しい村があるんですね。私たちは幸せです。」

「そう、良かったわ。そう言ってくれて。じゃあ頑張ってね。」

「ハイ!」

 

ーーーーー

 

「それでレイナース。街道の方は順調だったか?」

「そうですね、監督の話ではほぼ完成に近いそうです。後は中継地の整備だって言ってました。」

「ほう、思ったより早いじゃないか。それで、中継地には人が常駐するのか?」

「いえ、やはり夜が危険ですので。街道も夜間は通行禁止にする予定だそうです。」

「少なくなったとは言えアンデット対策は重要って事か。分かった。」

「それと、別件ですが近々フールーダ様がお出でになります。」

「ああ、約束したからな。いつ頃だって?」

「はっきりとした日付は聞いておりません。なにか伝えておきましょうか?」

「うん。建設中の第二宿舎が仕上がってからにして欲しいんだ。と言うのもな、アルシェから聞いたんだが帝国の魔法学校に居たんだって。その時にフールーダに教えて貰ってたらしいぞ。」

「へー、本当に世の中は狭いですね。」

「そーなんだよ。でな、折角だからフールーダにネムやアルシェの妹たち、セリーシアなんかにも講義して貰おうかなと考えてる。」

「まるで帝国魔法学院分校ですね」

レイナースはクスクス笑った

「笑うなよレイナース。俺は満足な教育を受けられなかったからな、子供たちには勉強する機会をな。」

「優しいですね」

「そうかぁ?面倒くさがりだよ?たまたまフールーダが来るって言うから思いついただけだよ」

「サトル様はこのカルネ村をどうするおつもりなのですか?」

「ん?どーもしないよ、するつもりもない。たまたまだよ、またまた。それが重なって皆んなで暮らしてる。皆んなで暮らすんなら楽しい方がいい。それだけ。」

「それだけ、が3つの国を変えてしまいましたよ?」

「う〜ん。それも成り行きだけなんだけどなぁ、、」

(この方は関わる者に影響を与える何かを持っている。私を含めて、ね。)

レイナースは頭を掻いている鈴木を微笑みながら見ていた。

 

ーーーーー

 

「姉さん、ちょっとイイ?」

「あら、セリー。イイわよ。今、お茶淹れるね。」

夕飯の支度をしていたツアレを訪ねたセリーシアは食堂の椅子に腰掛けた。

「これね、レイナースさんが持って来てくれた紅茶なの。とっても良い香りがするのよ。サトル様もお気に入りなの。」

セリーシアはカップから立ち登る香りを吸い込み、フーッと息をした。

「ここは本当にイイ村だね。みんな優しいし、食べ物も美味しい。」

「たまにね、これは夢じゃないかって思うの。きっと夢で、目が覚めたらまたあの地獄に居るんだってね。」

「・・・姉さん」

「ゴメンね、変な事言って。こんな話、セリーも辛いわよね。」

「うんん。私の何倍も姉さんは辛い思いをしたんだもの、その事を思い出しちゃうのは仕方ないよ。だから私は貴族が憎い、貴族なんか皆んな死んじゃえばイイんだ」

「セリー、良く聞いてね。貴女のそんな気持ちはペテルさんたちから聞いたわ。でもね、そんな考え方をしちゃ駄目よ?」

「なんで!?姉さんや私の生活をめちゃくちゃにした相手だよ!?」

「それはそうなんだけど。だからって憎しみを抱いたまま生きていってはいけないと思うの。私は元気になったし、可愛い妹にも会えた。素晴らしい仲間も居るわ。だから私はこれからは笑って生きて行こうと決めたの。今まで笑えなかった分も笑おうってね。セリーもこれから先色々な事があるでしょう、過去に囚われていては駄目。前を見て生きなさい。」

「姉さん・・・何か変わった?」

「かも知れないわね」

「村の影響?」

「う〜ん、村のって言うよりサトル様の影響かな?」

「サトル様の?」

「えへへ、実はさっきの話もサトル様の受け売りなんだ。サトル様がね、負の感情はドンドン増えて行っちゃうもんなんだって。それでいつの間にか抜け出せなくなって本当に大切なものが見えなくなってしまうんだって。暗黒面って仰ってたわ。」

「・・・暗黒面」

「うん。サトル様も一度堕ちかけたらしいから恐ろしい力よ?」

「サトル様がっ!?」

「だからね、セリーも笑ってね。」

「何か分かった様な分からない話だけど、分かった」

「偉いよ、セリー」と頭を撫でる

「もう!そんな子どもじゃないよー」

「アハッ、ゴメンね。そうだよね。こんなに立派な冒険者さんだもんね」

「その事なんだけどね、チームの皆んなには悪いんだけど冒険者は辞めようと思ってる」

「村に残ってくれるの?」

「力仕事は無理でも畑仕事でも薬草採取でも警備でも何でもやるからってお願いしようと思ってるんだ」

「そうなの。でも漆黒の皆さんにはちゃんとお礼言うのよ?今までお世話になったのだからね。」

「なんか、母さんみたい」

「ウフフ」「エヘヘ」

 

ーーーーー

 

「だいぶ出来たじゃないか!」

「あともう少し落盤対策の補強をしようと考えております」

2人は秘密のトンネルに来ていた。

「ところで息子よ。何か忘れてないか?」

「と言いますと?」

「灯りだよ。皆は俺やお前みたいに暗視能力は無いんだぞ」

「おお!忘れておりました!」

「ハハ、しっかり者でもウッカリはあるんだな。そうだな、普段は使わないんだからランタンを幾つか用意して置けば良いんじゃないか?ほら、前に街の道具屋であった奴。」

「ああ、魔法のランタンですね。あの時の我々には無用でしたので見送りましたが買っとけば良かったですね」

「特に珍しい物じゃないって店のオヤジも言ってたから大丈夫だろう。レイナースがそろそろ戻らないとジルが煩いって言ってたからその護衛って事で帝都へ行って買って来たら良い。」

「私が?よろしいので?」

「俺が行くとまた大層な事になるからな。今回は頼む。」

「畏まりました」

「なんか、はじめてのおつかいみたいだな」

「なんですか?それ」

「ハハ、なんでもない。気にするな」

「・・・はぁ」

 

ーーーーー

 

「世話になったなレイナース。帰ったらジルに宜しく言ってくれ。今度はゆっくりと遊びに来るといい。その時にはゲストハウスも出来ているからな」

「ありがとうございます。こちらこそ楽しかったです。じゃあ村の皆さんも、また遊びに来ます!」

「「また、どうぞ!」」

 

「それではアクター殿、参りましょう。」

「父上、行ってきます」

「おう。向こうでゆっくりして来て良いからな。何か困った事があればメッセージを使え、それとお金はちゃんと持ったか?落とすなよ?あと、えーと、、、」

「サトル様。子どもじゃないんですから」

「そんな事言ってもなエンリ。こいつは1人で出た事がないんだぞ?」

「帝都なら知らない場所でもないのですから」

「う〜ん」

「では、今度こそ行ってまいります」

「「いってらっしゃい!」」

 

「心配だなぁ、、、」

見えなくなるまで見送る鈴木に皆んなは呆れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

チラッとだけ、あの方が登場しました。
"彼女"もシングル歴が長いですから、2人のイチャイチャは目の毒でしたね。
あと、ニニャちゃんはセリーシアとなりましたので
ニニャって名前に思い入れがある方はすいません。

じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。