LINE、個人データ管理不備で謝罪 中国委託先で閲覧可能に

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LINEは国内で8600万人が利用。一部自治体で住民票や給付金などの申請窓口になっている

LINEは17日、業務委託先の中国の関連会社の従業員が国内の個人情報データにアクセス可能な状態だったと発表した。「業務上適切なもので、不正アクセスや情報漏洩はない」と強調する一方、「ユーザーへの説明が十分ではなかった」として謝罪した。

LINEは政府の個人情報保護委員会に報告した。既に閲覧ができないように対応済みとしており、近く調査のための第三者委員会を立ち上げる。

2018年8月から21年2月まで、中国の関連会社の従業員が国内サーバーにある個人情報にアクセス可能な状態だった。関連会社は違反通報内容の分析ツールなどの開発業務を受託。個人情報には氏名、電話番号などのほか、通報内容にあたる「トーク」機能内や利用者が保存したメッセージ、画像も含まれていた。

LINEによると、関連会社はゲームプラットフォームの開発などを行っていた。この関連会社について「業務に必要な範囲でアクセス権限をつけて管理していた。不適切なアクセスは把握していない」としている。

LINEのプライバシーポリシーは「パーソナルデータを第三国に移転することがある」と明記している。今回のケースは、海外の関連会社から国内サーバーにアクセスできる状態にとどまり、データ自体の移転は行っていないとみられる。ただ、海外の関連会社からデータにアクセスする可能性までは説明していなかった。

このほか、プロフィル画面「タイムライン」や掲示板機能「オープンチャット」の投稿内容に違反がないか監視する業務をすることでも十分な説明がなかった。監視を委託した国内の代行会社が、中国・大連にある現地法人に再委託していた。いずれの投稿内容も利用者は誰でも見られる状態だったが、利用者からはこうした状況がわかりにくい状態だった。

LINEは同日、対話アプリのデータ管理体制も明らかにした。利用者間の対話履歴や会員情報などプライバシー性の高い情報は国内サーバーで管理し、画像や動画といったデータは韓国で管理している。画像や動画データは「適切なセキュリティ体制のもとで管理している」とするが、21年半ば以降、段階的に国内に移転していく。

LINEは国内で約8600万人が利用する。一部自治体で住民票や給付金などの申請窓口になっているほか、新型コロナウイルスワクチンの予約システムも提供するなど社会インフラとしての性格を強めている。LINEは「個人情報の取り扱いについて分かりやすい説明をするため、プライバシーポリシーの改善を検討している」とコメントした。

個人情報保護委はLINEに原因について追加の報告を求め、改善を促す方針だ。個人情報保護法は海外に個人情報を移転する場合、利用者の同意を得るよう定めている。同委はこの規程が守られていたかの確認や、委託先の安全性についても調査を進める。

平井卓也デジタル改革相は17日の衆院内閣委員会で「不適切と判断した場合は訂正することが必要だ。まずは保護委に報告を求めたい」と述べた。

LINEの個人情報管理に不備があったとする報道を受け、17日の東京株式市場で親会社のZホールディングス株は一時前日比3%安まで下落した。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • 越野結花のアバター
    越野結花国際問題戦略研究所(IISS) リサーチ・フェロー
    別の視点

    2019年以降、安倍政権において日本は「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を打ち出し(2019年1月のダボス会議)、6月のG20大阪サミットでは、同原則の下でデータ流通や電子商取引に関する国際的なルール作りを進めるためリーダーシップを発揮してきた(大阪トラック)。日本が提唱したこの原則は、データの自由な流通を促進しながらも、消費者の安心や信頼を強化することを目指したものであるだけに、残念なニュースだ。

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  • 小平龍四郎のアバター
    小平龍四郎日本経済新聞社 編集委員
    別の視点

    東南アジアでもLINEは人気。国によってはコミュニケーションの欠かせない手段です。タイの財閥系企業の広報部長さんと頻繁にやりとりしていたこともあります。遊びではなくて、インフラとしての自覚と管理・監督が欠かせません。

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