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魔女と野獣の極めて普通な村づくり 作者:虎走かける

三章 住民満足度

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プロローグ

 広場に商人が来ていると聞いて、いてもたってもいられず、気が付くと教会を飛び出していた。

 いつも、できるだけ人目につかぬように心がけている。

 自分の存在が、人を怖がらせると知っているからだ。

 リーリはネズミの獣堕ちだ。

 そして、ネズミは病気を媒介する。おいそれと人前に出ていい存在ではないのだ。


 だが同時に、おしゃれが気になる年頃でもある。


 恵まれていないわけではない。服だって何着も持っている。

 それでも、気になってしまう。

 リーリは自分で買い物をしたことがないのだ。

 今持っている服だって、両親やその雇い主が、見繕って与えてくれた。それに不満はなかったが、自分で選ぶというのはどんな気分だろうと、どうしても思ってしまう。


 だが、実際に広場になど行ってみたところで、何もできはしなかった。

 買い物を楽しむ人々を遠めに眺めて、いいなぁ、と思う。

 それだけだ。

 こんなところを誰かに見られでもしたら、心配をかけてしまう。

 戻ろう。教会へ。

 そう思ったのに気が向かず、人気のないところに向かっていた。

 倉庫だ。

 実は倉庫の裏手に小さな穴が開いていて、村の子供たちがそこからよく忍び込み、倉庫のなかを探検するのだ。


 今、リーリは穴からもぞもぞと倉庫の中に潜り込み、だれもいない、真っ暗な空間の中で膝を抱えている。

 うとうとしたのは一瞬――。

 目が覚めると、倉庫の戸が勢いよく開かれた。


 光が差し込むと、もう逃げられない。

 積み上げてある毛皮の下で膝を抱えたまま、リーリは見つからないことを祈ってじっといきをひそめた。


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