プロローグ
それは神の啓示のようだった。
あこぎな商売で、随分と金を貯めた。
大都市の裏通りに店を持ち、盗品を買っては売って、もう長い。
ふと、思った。
いつまでこうして生きて行くのかと。
まるで変化のない、死んだような日々ではないか。
「北部からの難民、増えたよなぁ」
「しょうがないよ。だっていきなり滅んじゃったんだから」
「あたしらの国だって、結界があったから助かっただけなんだろ? 魔女がいなけりゃ同じように滅んでたんだ。少しは助けてやらなくちゃ」
「家も仕事もまるでたりないってんで、いろんな国と連携して新しい村作ってるって」
「職人も商人も大歓迎だってよ。支度金出るらしい」
町を流れていく噂話――興味などなかった。
けれども。
「魔女の村があるんだって。俺、入植者の隊列みたけどさ、獣堕ちも混ざってた」
「そんな辺鄙なところじゃあ、わざわざ商人も行きたがらねぇよなあ。よっぽど金になる特産品でもなきゃ」
その噂話に、跳びついた。
その日のうちに準備を始め、七日後には店を知人に高値で売り払って町を出た。