放射線耐性ある微生物発見 福島高専の斉藤さん 高専機構理事長特別表彰

2021/03/17 08:18

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単細胞生物の放射線耐性の研究で表彰を受けた斉藤さん
単細胞生物の放射線耐性の研究で表彰を受けた斉藤さん
コルポーダの休眠状態(右)と通常状態(左)。(Protistology14巻 p160-171転載)
コルポーダの休眠状態(右)と通常状態(左)。(Protistology14巻 p160-171転載)

 福島高専専攻科二年の斉藤瞭汰(りょうた)さん(22)=茨城県北茨城市=は、単細胞生物の「コルポーダ」に放射線照射による損傷に適応できる「放射線耐性」と「細胞の修復機能」があると突き止め、国際学術雑誌などで発表した。放射線防護に役立つ新素材開発への応用が期待できる顕著な成果として、十六日、高専機構理事長特別表彰を受けた。

 理事長特別表彰を受けたのは全国で斉藤さんを含めて二人。

 福島高専によると、コルポーダは田畑の水たまりなどに生息している微生物。乾燥や冷温、高温などにさらされると表面に殻を張り、休眠シストと呼ばれる特殊な細胞に変化して休眠する。危険が去った後、生命活動を再開する特徴がある。

 斉藤さんは何度もよみがえる性質に興味を持ち、二〇一八(平成三十)年春から研究を始めた。一年ほど経過した頃、休眠中のコルポーダにガンマ線照射を試し、損傷した細胞の修復を確認した。これ以来、照射量ごとにデータを蓄積し、学術雑誌や学会などに発表した。

 現段階で不明となっている修復メカニズムを解明できれば、さまざまな分野で応用が可能となるという。ただ斉藤さんは今春に専攻科を修了。高知大大学院に進学するため、この研究から離れる。指導教員の十亀(そがめ)陽一郎助教が引き継ぐ。

 斉藤さんはいわき市の福島高専でオンラインの表彰式に臨んだ。「大学院では多細胞生物の研究に取り組む。コルポーダの研究が発展し、新たな可能性が生まれてほしい」と期待している。