リスク以前に、そもそもこの地に原発を設置した行政の誤りを指摘するとともに、原発行政に事実上の「治外法権」を認めようとする裁判官たちの姿勢を批判するものだった。
当然、四国電力は、この高裁決定に不服を申し立て、その異議審を審理した広島高裁の三木昌之裁判長(36期、当時62歳)は、2018年9月25日、稼働禁止の仮処分決定を取り消し、再稼働を認めている。
シーソーのように入れ替わった判断の理由を、三木裁判長は同決定要旨でこう示した。「破局的噴火は、他の自然災害などとは異なり国家の解体、消滅をもたらし得る大規模な災害」であるものの、現時点ではその差し迫った動きがみられない。
そうである以上、「これを具体的危険として認めず、抽象的可能性にとどまる限り容認する社会通念が存する」。また四国電力は、住民らが「その生命、身体に直接的かつ重大な被害を受ける具体的危険が存在しないことについて、主張、疎明を尽くした」。
このふたつの高裁判決を見比べて、元裁判官はこう述べた。
「原発を停めた野々上裁判長は、この判決から8日後に定年退官を迎えていて、稼働を認めた三木裁判長の決定が下された時には高裁にはいない。しかし二人は、それまで同じ高裁で、始終顔を合わせていたわけですから、先輩裁判官が停めた原発を動かすなら、もう少し説得力のある論理を示さなければ恥ずかしいはずなんですね。理屈にならない『へ理屈』でもって、再稼働を容認したということは、はじめに稼働ありきの判断だったということでしょう」