原発を「動かした裁判官」「停めた裁判官」そのキャリアの大きな違い

エリートと「現場主義」
岩瀬 達哉 プロフィール

同決定書は、その理由をこう述べている。

「原子力発電所による発電がいかに効率的であり、発電に要するコスト面では経済上優位であるとしても、それによる損害が具現化したときには必ずしも優位であるとはいえない上、その環境破壊の及ぶ範囲は我が国を越えてしまう可能性さえある」

「新規制基準において、新たに義務化された原発施設内での補完的手段とアクシデントマネジメントとして不合理な点がないことが相当の根拠、資料に基づいて疎明されたとはいい難い」

「福島第一原子力発電所事故を踏まえた過酷事故対策についての設計思想や、外部電源に依拠する緊急時の対応方法に関する問題点……、耐震性能決定における基準地震動策定に関する問題点……について危惧すべき点があり、津波対策や避難計画についても疑問が残る……よって、主文のとおり決定する」

「高浜発電所三号機及び同四号機を運転してはならない」

 

再稼働を決めたエリート裁判官

この決定に対し、二審に相当する仮処分の保全抗告審を担当した大阪高裁の山下郁夫裁判長(31期、当時62歳)は、正反対の判断を下し、逆転で原発の再稼働を容認した。新規制基準は最新の科学的、技術的知見に基づいているうえ、高浜原発は新規制基準に適合していて安全性が担保されているとしたのだ。この人も局付経験者で、最高裁調査官を務めたトップエリートである。

九州電力の川内原発(1号機&2号機)に対する運転差し止めの仮処分申請にしても、鹿児島地裁の前田郁勝裁判長(46期、当時57歳)は、「新規制基準の内容に不合理な点があるということにはならない」として再稼働を容認し、福岡高裁宮崎支部の西川知一郎裁判長(37期、当時55歳)は、その判断を維持した。西川裁判長もまた局付経験者で、最高裁調査官を務めたエリート裁判官である。

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