縁と浮世は神を待て
良縁祈願♪最強の縁結びスポットの噂
竜原
▼シナリオの画像素材について
使用できる画像は当該ページの最下部からダウンロードできる画像のみ。セッションに係る使用方法に限り、自由に使用可能。
※シナリオ本文内に素材取り扱いについての規則が記述されている場合、そちらの規則を優先。
▼シナリオの6版⇔7版コンバートについて
可能。KPで独自に行うこと。ただしシナリオの根幹が変わるような改変は不可。
▼シナリオリプレイ作品投稿について
トラブルを避けるためリプレイ作品の有料公開は禁止。
無料公開のみ可能(小説、漫画、動画配信など媒体問わず)。
ただし以下3項目をリプレイ作品の分かりやすい箇所へ記載すること。
1:シナリオ名/作者名
2:ネタバレがある旨の注意書き
3:シナリオで許容されている範囲での改変がある場合、改変箇所と改変理由
※3はシナリオネタバレに係る事項であろうから、ネタバレに配慮した箇所へ記載すること。
▼シナリオの配信利用について
企画中、収益化チャンネルや有料メンバー限定での公開は禁止。
誰でも視聴可能な状態であり、視聴自体に金銭が発生しない方法であれば配信可能。
ただし以下3項目を配信時分かりやすい箇所へ記載すること。
1:シナリオ名/作者名
2:ネタバレがある旨の注意書き
3:シナリオで許容されている範囲での改変がある場合、改変箇所と改変理由
※3はシナリオネタバレに係る事項であろうから、ネタバレに配慮したタイミングでの情報周知でも構わない。
良縁と好機会は、
それが神によってもたらされるのを待つべきで、
決して焦ってはいけない。
【プレイ人数】2人~(タイマン・2PL~複数人)
【プレイ時間】5h~
【タイプ】シティ/現代日本
【推奨技能】特になし
【準推奨技能】《投擲》
【注意】
ステータスが極端に低い探索者はオススメできません
恋をしている探索者/良縁を望んでいる探索者 推奨
大型卓で遊んだあの仲間たちや、素敵な出会いをしたあの人との2卓目以降に。
仲間たちとのこれからの絆を望む人も、新しい出会いを求めている人も、片思いの相手がいる人も、恋人がいる人も。
どんな関係性でも縁を結べて、そして絆を試されるシナリオです。
略称は是非「神待て」で。
シナリオの特徴
今回このシナリオには以下のような特徴がある。セールスポイントといっても良い。KPとして回すか否かの参考になれば幸いである。
テーマが「縁結び」
縁結びといっても様々ある。恋愛ごとから良縁祈願まで。気になるあの人と旅行に来てもいいし、大型セッションを共に乗り越えた仲間たちと来てもいい。これからも続く関係を望む全ての探索者はこのシナリオに適正がある。
タイマンから複数人まで幅広くプレイ可能な作り
タイマンならではのしっとりとした雰囲気を楽しむことも、大人数でワイワイガヤガヤも出来るシンプルな構成のため、スタンダードクトゥルフを楽しむことが出来る。
前半パートで観光ができる
前半温泉や横丁で探索者同士の思い出を作ることが出来る。KPが好きに観光スポットを追加することもでき、プレイ時間が許す限り遊ぶことが出来る。
NPCは必要最小限のたった3人
キーパリングに自身がなくても出てくる順番が決まっているため、オロオロしなくていい…かもしれない。
後半パートは水浸しの町を探索するロマンがある
水浸しになった満月浮かぶ町を、探索者たちで探索するロマンが待っている。
神格やクリーチャーにたくさん出会える
ゴフン・フパージ=シュブ=ニグラス、黒い仔山羊、ゴ―ツウッドのノーム、ヘビ人間、ミ=ゴ、ヨグ=ソトースに出会うことが出来る。発狂チャンスは無限大。最大SAN減少-100の展開が探索者たちを待ち受ける。
途中ロスト探索者には特殊蘇生ルート完備
戦闘ロストのみだが今シナリオの中で特殊ルートが完備されている。縁結びならではの演出とドラマチックなダイスロール、そしてエンディングが待っている。
シナリオ背景
鏡月の鏡月山の中には大昔からシュブ=ニグラスの「化身の木」があった。
これは「畝の後ろをあるくもの(今回未登場)」が顕現するために必要な枯れた大樹であり、そこにある穴はシュブ=ニグラスのいる地下の世界へ続いていると言われている。これがシナリオ内の『根の国』である。根の国では生贄を長い時間(またはとても早い時間で)従者「ゴフン・フパージ=シュブ=ニグラス(鬼)」に变化させ、人々を襲わせていた。
忌まわしい従者はシュブ=ニグラスを招来する力も有しており、それに目をつけたのが「ミ=ゴ」である。
しかし、鏡月では大昔に根の国に繋がる穴が封印されてしまっている。封印の方法は「悪縁切り」として、根の国からの帰還方法は「根の国下り」の物語として現代に残されている。
封印された化身の木の穴をどうにかする必要があったミ=ゴは、意図的に都市伝説「縁結びの樹」を流布し「化身の木の力を借りたい」と強く乞う人間を鏡月へ集めた。シュブ=ニグラスに生贄として気に入られて化身の木にたどり着いてしまった人間(半年前は白山。今回は探索者たち)は、門の活性化をすることで黒い仔山羊によって地下世界へ引きずり込まれていく。
根の国は現実世界を鏡映しにしたような世界だ。置かれている情報も現実世界を一部反映したものになっている。生贄にある程度現実世界と錯覚させ、困惑させている間に鬼に变化させてしまう。
通常であれば鬼への变化はとても早い(白山参照)のだが、探索者たちはワークショップで作った縁結びの縄ストラップに込めた「現し世の人たちとの強い縁」の効果で、辛うじてまだ人の世に繋ぎ止められており鬼になるまで僅かに猶予がある。その間に問題を解決する必要があるだろう。
問題の解決方法
1.根の国からの脱出。これには縁結びの縄を使った「根の国下り」が必要である。共有メモの内容にある「鬼に惑わされず、振り向かず」を忘れなければSANが大幅に減ることもない。
2.枯れた大樹の封印。脱出後に「悪縁切り」を行い、ヨグ=ソトースの力を借りて境を封印する必要がある。
登場NPC
途中から探索者たちとともに行動する可能性の高い菊神白山に関してはシナリオ中にRP方針が記載されている。彼の背景などもシナリオ背景や登場NPCに書かれているため省略。
安井カネヒラ 黒幕 医者
一年ほど前に鏡月にやってきた。真の姿はミ=ゴであり、この地にあるシュブ=ニグラスの地下の世界に繋がる門を開け放ち、従者「ゴフン・フパージ=シュブ=ニグラス」を増やすことが目的である。
安井カネヒラという医師の身体を乗っ取り、菊神白山と共同研究に励む。シュブ=ニグラスの「化身の木」はヨグ=ソトースによって一度封印されてしまい、どう封印を解くのかは人間の書いた巻物を読むほかなく、人間の協力者が必要だった。しかし白山に目論見がバレかけ、白山は資料である手帳を外部の人間に郵送しようとしたが、安井に捕まりそうになり、白山は根の国へ逃げた。
なぜ共同で研究しているのか?
ミ=ゴとしてあちこちを駆けずり回って、この地でシュブ=ニグラスへの道を見つけたため、ある意味確かに救われている。以下は探索者に対して話す内容だ。
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もともと郷土史には興味があった。都会にいたときは仕事に追われていて、逃げるようにしてこちらにきた。白山さんに誘われて入った山で癒やされ、救われたような気持ちになれた。
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己の好きなこともやっていこうと決めた。手伝いをするぐらいではあるが、充実している。
縁結びの樹に関して
町の人々と同じように「この山だからありえなくはないんじゃないか」という姿勢。場合によっては「そういったご縁を望んでいるのかな?」とからかってくる。本当は枯れた縁結びの樹ならぬ「化身の樹」があるのは知っているし、門の活性化がされれば根の国へ繋がる事も知っている。
伝承に関して話すこと
基本的に殆どの情報は白山が知っているため「自分は本当に少し手伝っていただけ。研究のさわりぐらいしか知らず、白山さんが資料を全て持っていなくなってしまったため、困っている」と言う。
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鬼は鏡月山の奥深くに住んでいたらしい。村人を連れ去り、鬼にしては村を襲わせた。
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そのことからクナドを怒らせて、今は山に封印されている。
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それが御神体の大岩であり、クナドの己の身体の一部で出来ていると言われている。
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この山はそうやって別の世界と繋がっていた言い伝えから、昔から禁足地とされていて、山に立ち入れば鬼に連れて行かれたり……なんていう都市伝説めいた話がある。
鏡月巻物に関して
この地に関する特別な祭礼や神楽、また祝詞がしたためられていると白山から聞いている。
普段は鏡月神社の宝物殿に保管されているもので今回特別に娘さんのヒメリに掛け合って、研究のために借りていた。白山がいないため読みすすめるのはとても難しかった。辛うじて巻物の中にあるいくつかの物語に関する白山のレポートがあったため、少しだけ理解することが出来た。レポートの内容は山に住まう鬼と現し世を縁切りし、追い返す物語だ。 もっと詳しく教えてほしいと願うのであれば「では下山後に診療所にお越しください。【安井診療所】は温泉の近くにあります」と教えてくれる。
菊神ヒメリ 宮司 20代女性
物静かでクールな感じの女性。父である菊神白山のあとを継いだ。
父が行方不明になってから鏡月へ戻ってきた。もともとは都会で働いており、神社に関係することはあまり父から教えられていない。そのため今、一生懸命頑張っている。残念ながらシナリオクリアに必要な詳しいことは全く知らない。また、安井から町おこしのためのアドバイスを貰っている。
鏡月巻物/鏡月の伝承/縁結びの樹について聞く
巻物については「父が研究していたみたいだけど私はよく知らない。教えて貰う前に父がいなくなったから」伝承については「鬼は鏡月山の奥深くに大昔住んでいたらしい。村人を連れ去り、同じように鬼にしては村を襲わせた。そのことからクナドを怒らせて、今は山に封印されている。それが御神体の大岩であり、クナドの己の身体の一部で出来ていると言われている」
縁結びの樹については「そういったものは知りませんが……どこかで似たようなものを見たことがあるような……。すみません今思い出せなくて」
研究/白山について
安井診療所の安井先生が父と協力して研究していた。巻物をお貸ししたり、研究資料の管理をお願いしている。父白山の行方不明事件に関しては「都会で別の仕事をしていた時に連絡を受けた。山に立ち入った後いなくなったと聞いている」とあまり詳しいことを知らない顔をする。
町の人々の話
以下の話は町の人々の誰に聞いても答えてくれる。
ただ、あまりにも相手がご老人だと「山は人が立ち入るもんじゃない。神様に目ぇつけられるよ!」と怒られてしまうかもしれない。ご老人たちにとってはまだまだ鏡月山は禁足地であり人が入るべきでない神域であるという考えが根深い。伝承に関して町の人々は【クナドの言い伝え】ぐらいしか知らない。山に関しては「鬼が出るらしい。それを封印してくれたのが神社に祀ってるクナド様だよ」と話す。
隠された縁結びの樹について尋ねる
相当若くてSNS慣れしていない限りは「えっそんな都市伝説あるんだ~!」という反応を返す。
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地元にいるけど聞いたことがない。縁結びの神社があるからそういう噂が出てきたのかな。
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鏡月山自体はかなりのパワースポットだから、不思議な樹があってもなんらおかしくはない。
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SNS慣れした若い人であれば「SNSで見たことあるよ。インスタのモデルの人が縁結びの樹にたどり着いて石油王と結婚したとかいうのを聞いたことがあるけどホントなのかな~」検索すると確かにそれっぽい根も葉もない噂が流れているのがわかる。
小さい頃に聞いた地元の噂
縁結びの樹について聞いた流れや、山関連の話が出た時に話してくれる。所謂この地に伝わる「神隠し」の噂だ。鏡月山に関して《オカルト》で調べてもこれがわかる。
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小さい頃に鏡月山の…そういう『秘密の場所』があるのを聞いたことがある。
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森の影から鬼が出てきてこの世とそっくりの異世界に連れ去るとか……連れ去られると鬼に食われるとか、はては二度と戻ってこれないとか。
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山に子供が立ち入らないようにってことだったんだろうけど、昔は山に立ち入って本当に突然いなくなった人とかもいたらしい。
導入
探索者たちは、一泊二日で【鏡月】へ旅行に向かうことになる。
鏡月への電車はない上に、入るには山道からトンネルを抜けるしかないため、必然と高速バスで向かうことになるだろう。
【鏡月について】
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鏡月は、都市から離れたところにある山間の町。
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鏡月山という神体山にぐるりと囲まれている。
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縁結びの神社や温泉で賑わうちょっとした観光地
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風情ある町並みが広がっており、SNS映えもバッチリである。
※シナリオ上では高速バスだが、自家用車でも良い。その場合は途中の休憩所で噂を聞くことになる。
縁結びスポットの噂
【鏡月】へ向かう高速バスの中は、心なしか若い女性のグループが多い。
そんな彼女たちの話題の大半は、半年ほど前からじわじわとネットで女性を中心に広がり始めた「最強の縁結びスポット」についてである。
「ねぇ、どこにあるんだろう……噂の縁結びの樹……」
「やっぱり山の奥とかじゃないかなあ……ちょっと行くの怖いよね」
「うーん……神様に気に入られたら見つかるとも聞いたことあるけど。気になるなぁ……縁結びの樹」
【最強の縁結びスポットの噂 概要】
鏡月山は【鏡月神社】の神体山である。そこには古くから神様が住んでいると言われており、パワースポットである。しかしその中でもまことしやかに囁かれているのが「最強の縁結びスポット」だ。
どうやら『鏡月山』には良縁に恵まれるという秘密の「縁結びの樹」があるらしい。
その「縁結びの樹」は枯れた大樹で、まずそこへたどり着くにも神様に好かれていないといけない。
たどり着けたなら、大樹にある大きなウロの中に入り、奥の壁に触って出てくる。
そうすると片思いの相手がいる場合は恋が叶い、恋人でたどり着ければ永遠に幸せになれる。ほかにも夫婦円満が約束され、子宝にも恵まれるとか。
そして良縁を望むものにはこの上ない最高の縁が舞い込んでくるという。
高速バスは鏡月との境にある鏡月トンネルの中に入っていく。抜ければそこは山に囲まれた地【鏡月】だ。
春であれば山には桜が咲き、夏であれば青々とした葉が眩しく、秋であれば紅葉が非常に綺麗で、例え冬であっても雪に濡れる様子はとても美しい。
旅館「鏡屋」
宿泊予定の旅館「鏡屋」の内装は趣深くオシャレでとても雰囲気がある。
ロビーにはやはり縁結びスポットの噂のせいか若い女性の旅行客が目立つ。
チェックインの手続きを終えると部屋の案内まで、ロビーの椅子で待つことになる。
ロビーにある新聞ラックのそばには、他の宿泊客が戻しそびれて落ちてしまったのであろう地元新聞が落ちている。
【鏡月新聞 宮司行方不明事件 未だ解決せず】
鏡月神社の宮司である菊神白山(キクガミ ハクザン)氏が半年前から行方不明となっている。
現在も地元警察による地道な捜索活動が続けられているが、進展はない。白山氏は地元に伝わる『鏡月巻物』の研究にも携わっており、関係者からは心配の声があがっている。
※巻物に関して調べてもネット上には出ず、また白山に関して調べても特には出ないが、今の宮司は娘の菊神ヒメリであることは神社のホームページから分かるだろう。
着物姿の旅館の従業員が部屋へ案内してくれる。離れの棟の中へ入ると、探索者たちは用意された部屋に案内される。
中はとても広い和室できれいに整えられている。浴衣などもあり、旅館内には自慢の大浴場もあると説明してくれるだろう。また、町にある外湯の「鏡月温泉」は宿泊客は無料で利用できる。
荷物を置いたあとは、いよいよ観光である。
鏡月観光
風情ある昔ながらの町並みが非常に美しく、山に囲まれているというのもあってどこか清らかな空気を感じるだろう。ゆっくりと町を歩きながら、観光することができる。
【探索箇所】鏡月温泉 かがみ横丁 鏡月神社
鏡月温泉
鏡月山の地下から湧いて出ている乳白色の温泉。別名「根の湯」。源泉かけ流しではない。
効能としては神経痛や筋肉痛、冷え性、婦人病、健康増進、美肌効果や子宝円満、家内安全、厄除け、良縁成就など。
旅館「鏡屋」に泊まる人は無料で入ることが出来る。
★入浴する
いい湯加減で気持ちがいい。とろみがあって体の芯まであたたまるし癒やされる。(SAN回復+1d2)
もしも想い人が近くにいる場合はその人が余計魅力的に見えてくる。そうでない場合でも、一緒に温泉に入っている相手が人間的に魅力的に思えてくる。
※抱く感情は自由だ。プラスの感情であればなんでもいい。尊敬でも恋慕でも……。そして地下にある根の国から湧き出た温泉が地表に近づくにつれて薄まりに薄まったもののため、若干乳の効果を受ける。
《POW*5》薄められたシュブ=ニグラスの乳の効果
失敗で、更にその人を見て「とても美味しそうだな……」という気持ちになる。
しかしその気持ちは一瞬だけで、残るのは謎の胸の高鳴りと動悸だけだ。
風呂上がりにはコーヒー牛乳やフルーツ牛乳など、THE温泉を楽しむことが出来る。
《聞き耳》町の人々の話
「白山さんがいなくなって半年……ヒメリちゃんも都会から戻ってきて宮司なんてねぇ」
「あたしゃ……あの子はダメだと思うよ。町おこしだ、はやりの噂だなんだっていって、一族の人たちが守ってきた山を観光で開けちまったんだから。そのうちバチが当たるよ!」
【KP情報】禁足地の鏡月山の規制解除
禁足地である鏡月山に人を入れたのは、安井の言葉に騙されているからである。菊神は白山に鏡月の真実を教えられる前に宮司になってしまった。詳しいことはよく知らず、周りの人たちに言われるがまま今一生懸命やっているところだ。禁足地の山を開くのも一番は「町おこし」のためであり、鏡月の素晴らしさを知ってほしいがためである。伝統文化を守りつつ、それを目に見える形で人々に残していきたいという考えがある。
かがみ横丁
こじんまりとしていながらも、どこかレトロな雰囲気の漂う建物が並んでいる。お土産屋さんや小さなカフェ、本屋さんなどが数件ある。名物は「鏡月まんじゅう」だ。
着物をレンタルしてくれる店もあり、着物を着たまま観光することもできる。
横丁の入り口には「ワークショップ開催中」とあり、近くのカフェで参加無料の「縁結びの縄作り体験」が行われているようだ。
お土産屋
名物の鏡月まんじゅうなどが売っている。まんじゅうには鏡月神社の神紋である「円に五芒星が描かれた印」が焼印されている。出来たてホクホクが美味しい。ワークショップに行っていないのなら「縁結びの縄作っていきな」と勧められる。
※なぜ縄なの?と問われれば「この土地の神様が縁結びの神様だから。悪縁断って良縁を結んでくださるクナド様。赤い糸も元は足に括った縄が元だったって言うし、なにせ縄のほうが切れないし縁起がいい!」と答えてくれる。
ワークショップ
机が何台か広げられており、老若男女問わず様々な人々がワークショップに取り組んでいる。
ホワイトボードには「縁結びの縄の作り方」というのが書かれており、何本かの赤く染められた細い縄をストラップほどの長さにすると書かれている。どうやら編み終わった縄はスタッフが金具をつけてストラップのような形にして渡してくれるようだ。
参加料は無料で、スタッフの人が作り方を教えてくれる。
「では、直感で好きなものを3本、選んでください」
「そして自分の周りにいる大切な人たちのことを思い浮かべてください。相手は何人でもいいし、どのような関係でも構いません。そしてその縁が長く続くことを願って丁寧にみつあみをします。こうすることで縁が持ち主を護り、悪縁から遠ざけてくれると言われています」
「出来上がりましたら縄のどちらか片方を結んで、スタッフをお呼びください。金具を付けさせていただきますので」
《MP-1d3》思いを込めて編む
丁寧に思いを込めて編み上げるととてもキレイに出来上がる。
これが後に根の国へ誘われた時に探索者たちの鬼化を遅くしてくれる。人々の縁が探索者たちを人たらしめるのだ。
鏡月神社
鏡月山の麓にある神社。大きな鳥居が特徴的で、境内の奥には鏡月山へ続く山道が見える。
しかしグループで予約をして少し順番を待たなければならない。
【探索箇所】授与所・拝殿・宝物殿・山道入口
授与所
縁結びのお守りが売られている。
「中には鏡月神社の神紋の彫られた鏡月山の石が入れられています」というPOPが掲げられているのがわかるだろう。
また、「縁みくじ」と書かれた木箱がおいてある。
※神紋は「縁の中に五芒星が描かれたもの(コスの印)」だ。
《1d6》縁みくじ
内容はKPが自由にアレンジをしてもよい。KPは引く前に「恋をしている人用の『恋みくじ』か出会いを求める人用『縁みくじ』どちらがいいか」を問うと良い。
1.大吉(SAN回復+1d3) 二人の関係は大きく進展/人生で最良のパートナーを得る
2.中吉 勇気出して望めば進展あり/良い出会いはすぐそばにある。意識して手繰り寄せるべし
3.小吉 これからも二人の良い縁が続く。/突然の良い出会いあり
4.吉 いつもと変わらぬことを良しとせよ/己を磨けば自然と縁は結ばれる
5.凶 己の内側に問題あり。己を見つめ直せば好転する/勘違いから起こる悪縁に注意
6.大凶 諍いの種は既にあり。また待ち人来ず/今ではない。己の内面を見つめ直すべし
拝殿
お参りすることができる。賽銭箱の近くには、案内板があり神社の説明と簡単な絵が書かれている。
それはこの地に伝わるクナドという神様の言い伝えを元に描かれたようで、そこには怒りの表情を浮かべ、大岩を降らせる男神が描かれている。近くには鬼が描かれており、地下の世界へ追い返されている。
【鏡月神社の由来】
この神社は世の境を護るクナドという神様をお祀りしております。
大昔、山に住まう鬼と現し世を縁切りし、追い返したことから、現在、クナドは悪癖や悪縁を切る厄除けの神様として……また、”婚ぐ(くなぐ)”という意味から縁結びや婚姻、子宝の神様として、縁と浮き世の境を護り繋ぎ、鏡月の人々に愛されています。
鏡月神社では人々の縁がいつまでも切れず続き、悪しきものから守られることを願い、毎年「縁結びの縄」が奉納され、宝物殿に飾られています。
また、御神体である「クナドの大岩」は鏡月山の中にあり、悪しきものと我々の世界の境をいつまでもお護りくださっております。
宝物殿
一年に2回、一般の人に向けて公開されているが今は期間外のようだ。扉は閉ざされている。
すると、中から袴姿の黒髪の若い女性(菊神ヒメリ)と壮年の男性(安井カネヒラ)が出てくる。
「ヒメリさん、鏡月巻物をお貸しいただいてありがとうございました。研究が少し進んだ気がします」
「いいえ、こちらこそありがとうございます。父の代わりに巻物の研究を進めていただいて……しかも父のレポートも管理していただいて、ほんとうに……私には何も分からないので、先生がいてくださってとても助かります」
「いえ、こちらこそ貴重なお父上のレポートをお貸しいただいてありがとうございました。おかげで巻物を読むのに大分参考になりました」
「そうですか……よかった。あとは父の手帳さえ見つかればと思ったのですが、肌見放さず持っていたものなので恐らく手帳は今も父と共にあるのでしょう」
「……どちらにせよ、白山さんの帰りを待つしかないようですね。私は出来る限りのことをして待ちます。ヒメリさんもあまり無理をなさらないように」
「ありがとうございます……。では先生、また後で」
山道入口
神社の授与所近くに山道への入り口がある。
そこには「鏡月新名物 御神体見学ツアー」と書かれており、どうやら長らく立入禁止だった山を一般に解禁し、御神体である大岩を見に行けるツアーが半年前程から始まったようだ。
時間帯ごとに入山する人数に制限が設けられているため、予約をして中に入ることになる。
受付の人は代表者の名前と電話番号を聞き、全ての探索箇所を回った頃合いに連絡をしてくれる。もしもここに訪れるのが最後であるならば、すぐにツアーに参加できる。
鏡月山
【条件】全ての探索箇所を見終わった。
予約の時間になると神社の授与所の方から電話がかかってくる。探索者たちは拝殿脇の【鏡月山】へ登るための山道の前に集められる。
他にも人がいて、女性観光客はやはり「縁結びの樹」について話している。その中には【宝物殿】の前にいた、壮年の男性(安井カネヒラ)もいる。
しばらくすると、前に現れたクールな印象の若い女性――案内役の宮司、菊神ヒメリは深々とお辞儀した。
「鏡月山の御神体までご案内いたします、宮司の菊神ヒメリと申します」
「今回は、クナド様のご縁をたぐり、御神体のある広間までご案内いたします。鏡月山は長らく禁足地でした。山は神や妖怪、異世界に繋がる門でもあり、そこへ立ち入ることは古来より危険視されていたのです」
「しかし心を正しくあれば、山は人に素晴らしい力を分け与えてくれます。御神体はその最たるものです。山からたくさんパワーを頂き、良いご縁に巡り会えますようお手伝いさせていただければ幸いです」
「最後に、山に入って気分が悪くなるなどございましたら私にお申し付けください。逆に身体が軽くなったり、気分がよくなったり、あとはいい匂いがすると、神様に歓迎されているサインと言われています」
「……それでは参りましょう。山道は自然の保全のためにあまり整えられておりません。どうぞお足元にお気をつけください」
鏡月山 山道
山道はあまり整えられていないため、足場が悪い。
《1d100》足を滑らせる
一番値の高かった探索者が、険しい山道に足をとられてこけてしまう。《ダメージ-1d2》
安井との出会い
前を歩いていた壮年の男性(宝物殿で話していた男性/安井カネヒラ)が振り向いて「よろしければ怪我を見せていただけませんか」と声をかけ、テキパキと手当をしてくれる。《SAN回復+1d2》
そして「もしも化膿するようなことがあれば、安井診療所まで来てください。私はそこの医師の安井カネヒラと申します」と名刺を渡してくれる。
※ただの観光客である探索者たちに対して安井は非常に友好的に接してくる。自分は安井診療所という診療所を営んでいることを話してくれたり、探索者たちに対してはどんな関係性なのか、どういった目的で来たのか、温泉はどうだったかなど色々と話しをしてくる。もちろん彼に伝承のことを聞くこともできる。
クナドの大岩
しばらく登った先は開けた広場になっており、正面にはしめ縄のかけられた大岩がそびえ立っている。人の身長をゆうに越えた大きな苔むした岩だ。上のあたりは雨などで削れて2つほど穴があいている。遠目から見ればそれは目のように見え、夜に見たならば少し怖いと感じるかもしれない。
辺りには小石がいくつか散らばっており、観光客の何人かが目を閉じて小石を投げている。
少し離れたところには看板がたてられている。
【クナドの大岩 悪縁切り】
その昔、クナド様が鬼と人の世の境の印として置いたといわれている大岩であり、悪癖や悪縁を絶ち願いを叶えてくれるといわれている。
方法は『目を閉じて大岩に向かって鏡月山の石を投げる』。この時に悪縁が断ち切られ願いが成就されることを祈り、3回以内に大岩の2つの窪みのうちのどちらかに入ると、クナド様のご加護を得ることが出来、成就すると言われている。
目を閉じるのは神の姿を見ぬようにするためであり、見てしまった場合、恐ろしい目にあうと言われている。
《投擲》×3回 お祈りチャレンジ
成功またはファンブルした場合、世にも恐ろしい縁切り効果が現れる。
しかしどんな悪縁切りであっても探索者の心の中がスカッとする。どうやら己の中の不安や恐れなどと縁を切ることも出来たようだ。《SAN回復+1d3》
恐怖の悪縁切りリザルトタイム
楽しい悪縁切りリザルトタイムになる。KPCがいる場合などはわざと《投擲》せずとも成功したことにしてこの恐怖を強制的に全員に味合わせるのもアリだろう。
もしも不眠に悩まされていたのであれば、その場で崩れ落ちるほどの眠気が襲ってくる。タバコをやめたいなら、煙草の箱を見るだけで吐き気がする。または後々病院で身体的な異常がみつかり辞めざるを得ない状況に陥る。ストーカー被害などを受けていれば警察から犯人が捕まったという電話がかかってくるし、最低でもしばらくは被害にあわない。面倒くさい人との繋がりなどもこの場で連絡がきてすっぱりと切れる。
これらは自分や近しい者に害を成している相手(ストーカーなど)などにも適用され、怪我や大病を患い最悪の場合死亡する。
※テストプレイでは、しつこくしている相手が事故にあったとか、親が嫌がらせをしてきた遠い親戚が死んだり……あとは元カノ元カレが事故にあったりなど。その場で連絡が来て悪縁切りが起こったのを知るとその場が凍りつくので全力で悪縁を切ってあげてください。これがこの地に封印をもたらし、鬼やシュブ=ニグラスとの縁を後々切ってくれるヨグ・ソトースの力だ!
下山
ある程度山を堪能したら、下山することが出来るのだが、その頃合いになって霧が出始める。
いつの間にやら他の観光客は連れ立って帰りかけているところだ。
案内役のヒメリも「霧が出てきましたので、下山をお願いいたします」と案内してくれる。
縁結びの樹
【条件】大岩を参拝し、下山する。
下山していると、霧がどんどん濃くなっていく。山の木々の合間を縫って漂う霧は幻想的だ。
探索者たちはふと気づく。やけに道が長い。行きはこんなにも長かっただろうか……?
しかし不思議と身体は軽く、登ってきたときよりも気持ちがスッとする。
そして何よりも、いい匂いがしてくるような……。
山に歓迎されているのだろうか、そんな気持ちになることだろう。
突然現れる化身の木
ふと気づくといつの間にやら霧は晴れ、木々の合間から太陽の光が差し込んできて辺りはとても神々しい雰囲気に包まれる。
すると、探索者たちは枯れた大樹の前に出てくる。大樹はねじれ節くれだち、葉のない枝をほうぼうへ伸ばしている。周りの木々と比べると余計に目立ち、ここだけ時の流れが違うようなそんな異様さにぞわりとするだろう。
しかしそこには大きなウロがあいており、これが噂の「縁結びの樹」であることがわかる。ウロはかなり大きく、成人男性が身を少しかがめるだけでいい程度の大きさだ。
※また大樹をぐるりと回って見てみると、下山するための山道が一応ある。
噂を実行した場合
ウロの中へ入ると思ったより奥まで穴が続いているが、なんとか奥の壁に触ることが出来る。
※門の活性化である。これによりシュブ=ニグラスの地下の国へ繋がる門が活性化される。ヨグ・ソトースの封印の力を無視した荒業である。
《MP-1d2》縁結びの噂を実行する
何だか樹のそばにいるとひどく疲れるような気持ちがしてくる。探索者たちの念(MP)はシュブ=ニグラスへ捧げられていく。
《目星-20》奥に彫られている印
奥に入って奥の壁に触れた場合技能判定が出来る。触れたところをよく見てみると「三日月を3つ合わせたような印」がある。
《アイディア》なんだか段々穴が深くなってるような……
次々人が入れ代わり立ち代わり噂を実行するなら、噂を実行し終えた探索者が技能判定出来る。ウロの中へ入り、戻ってくる他の人を見ているとなんだか自分が入ったときより奥まで入っているのでは……?もしかしてどんどん穴が深くなってる? と感じる。(SANC 0/1)
《1d100》誰も噂を実行しない場合 犠牲者の選抜
一番値の高い人が、ことさら強烈ないい匂いを感じる。そしてその匂いに操られるかのように噂を実行してしまう。何かに自分の体を操られている。己の意思に反した身体の動きに(SANC 0/1)《MP-2》
※誰か一人でもすればいい。無理やりさせられる場合は強制的にMPが最大値吸われていく。容赦ない。
根の国への誘い
【条件】噂を実行して帰る
突き上げるような激しい揺れが探索者たちを襲う。
地面を揺るがすほどの凄まじい轟音と、激しい揺れ。……”何か”が迫ってくるのを感じるだろう。
ドッ、と何かが吹き出すような音がして、思わず振り向いたその瞬間……探索者たちが最後に見たものは。
大樹から噴き出した黒い触肢が、自分たちに襲いかかる……その光景だった。(SANC 0/1d3)
根の国
体中を襲う痛みで目を覚ますと、探索者たちは丁度神社の、山道の入り口辺りに仰向けに倒れている。全身ぐっしょりと濡れており、あちこちに激しく打ち付けたような痛みを感じるだろう。
――――そして仰いだ先には夜が広がっており、満月が浮かんでいる。
※ワークショップでストラップを作っていない探索者は、秘匿で《カウント+1》から始めた上で更に《ダメージ-1d6》 また探索者たちが鏡月に泊まる夜は満月ではない。
起き上がったのであれば、辺り一面、脛までの乳白色のぬるい湯に沈んでおり、月に照らされた水面はキラキラと鏡のように反射して、どこか神秘的な静けさに満ちている。
そして町へ目をやってもその湯はずっと続いており、明かりは一切見えないし、人の気配もない。携帯は圏外となっている。
目の前に広がるどこか異様な光景に、じわじわと恐怖がこみ上げてくる。(SANC 1/1d3)
★他に気づくこと
周りの看板などを見ていると、文字が鏡にうつったように反転されているのに気づく。
また探索者がストラップを入れているところから突然焦げたような匂いがしてきて確認すると、ワークショップで作った「縁結びの縄ストラップ」は焼け焦げている。大切な人たちとの縁を思って作ったものが突然前触れもなく焼け焦げた。……とても不吉だと感じるだろう。
時計は完全にバグっており、めちゃくちゃな時間を指している。
★乳白色の湯の効果
ふと気づくことに辺りに僅かに不快な匂いが漂っているのがわかる。それは肉が腐り落ちるような甘い腐臭で、それらが湯から立ち上っている。嗅いでいるとどうにも自分の体の中がざわつく。
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
【シュブ=ニグラスの乳の効果】を参照の上で処理を行う。
【KP情報】ここは根の国 鬼のいるとこ いいところ
ここは菊神白山がいる根の国であり、鏡月と同じ作りをしているが、鏡うつしになっている。人は一人もいない。鏡月の地下に張り巡らされた化身の木の根や温泉の湯(下記参照)を通して根の国は常に人々の記憶をつなぎ合わせて精巧に作られている。よって探索者たちは様々な情報源を見つけることが出来る。
また、町を満たしているのは鏡月の地下を通っているシュブ=ニグラスの乳(温泉)である。鏡月温泉はこれが地表に出るまでに人工的にも薄められて人間でも害がない程度にまで薄められた乳だ。根の国では発せられるガスや水蒸気、また身体が湯に触れていると乳の効果を直に受ける。乳の効果判定で失敗するごとにカウントは増える。これらの異常はシュブ=ニグラスを退散させることが出来れば止まり、シナリオ終了後もとに戻る。
KP処理 シュブ=ニグラスの乳の効果
各所で《POW*5/CON*5》ロール時、KPは判定失敗回数のカウント(鬼化カウント)を秘密裏に行う。 またファンブルしたり、振り直しをしてもこの効果判定が追加で起こる。
乳の効果判定 失敗時
精神感応が高まり、酷い幻覚を見るようになる。KPはその時々で探索者に合わせた恐ろしい幻覚を引き起こし、一律で(SANC 1/1d2)
更に、特定回数で以下のような変化が起きる。
鬼化 身体的精神的異常
探索者は判定に失敗すると「ゴフン・フパージ=シュブ=ニグラス」へ变化していく。
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1《予兆》
急に気持ち悪さがこみ上げ嘔吐し、(すぐにおさまるが)鼻血が出てくる。(SANC 0/1)
2《鬼への变化1》
爪が鋭く伸び始める。額からは角のような骨が突き出してくる。己の異様な変容に(SANC 1/1d4)
3《精神感応テロ》
自分が感じた恐怖を鬼の精神感応で他人へ伝播させてしまう。ランダムで他探索者一人に対して、(SAN減少-1d2)を与える。
4《鬼の性》
よりカウント数の低い探索者に対して、獰猛な食欲を抑えることが出来ない。ああ、美味しそうな”人間”だ。対象は《回避》出来なければ《ダメージ-1d2》。ダメージを与えた側は人を喰らいたくなるなどと恐ろしいことを考えてしまったことに(SANC 1/1d4)
5《精神感応テロ Lv2》
ランダムで他探索者一人に対して(SAN減少-1d3+1)を与えてしまう。
自分が感じた恐怖や精神的ダメージを精神感応でより強く伝播させてしまう。
6《鬼への变化2》
手は枯れ木のようになっていく、鋭い牙が生えてくる。
新たに戦闘技能《かぎ爪》40% 1d6+db《噛みつき》40% 1d4を得、更に《隠れる》90%《忍び歩き》70%を得る。(SANC 1d3/1d5+1)
7以上《もう戻れない》
己の身体は気づけば人から遥か遠ざかった悍ましい化け物となってしまった。水面を覗き込めばそこにはもう人だった頃の面影はない。→【ロスト】
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根の国-鏡月神社(1)
人の気配はまったくない。立ち上る湯気でもうもうとしており、むせ返るような匂いが鼻をつく。
【授与所】からはうめき声が小さく聞こえてくる。
授与所
おみくじやお守りは床に散らばり荒れ放題だ。
授与所の中に入ると聞こえてきていた音はやみ、辺りは静けさに包まれる。
見てまわると、壁のそばに追いやられている『屏風』が目につく。そこには探索者たちが見たものとよく似た「枯れた大樹」が描かれている。どうやら、なにかの物語であることがわかるだろう。
屏風 根の国全図
横長の屏風には、枯れた大樹とその下に広がる地下世界の物語が描かれている。
左上には筆文字で「根の国全図」と描かれており、探索者たちは順を追ってそれを見ることが出来る。ざっと見て絵から読み取れることは以下の通りである。
【根の国全図 概要】
・枯れた大樹の下には、細く長い洞窟が地下世界まで続いている。
・村人が何人か触肢に捕まり、地下世界へ引きずられていく。
・地下世界は満月が浮かんでおり、母なる湯に満たされている。
・鬼や餓鬼、ヘビのような生き物や巨大な黒い鬼が住んでいる。
・村人たちは地下世界で鬼となったあと、村へ戻り、鬼の女神と共に人々を襲う。
更に見ていて、地下に広がる世界は地上に描かれた村とそっくりだが、反転していることに気づく。
《オカルト/人類学/知識-20》根の国とは?
根の国とは一般的に「地下の国、黄泉の国、地底の国」と言われており、神道では現世のあらゆる罪や穢れが集まる場所ともされている。
置かれている作業用の机には、袋詰の途中だったのだろう破魔や絵馬、お守りなどが散らばっている。そこには、誰かが電話のメモしたのであろう紙が置かれており、「ヒメリさんに伝言 安井先生 安井診療所に持ってきてほしい 研究 根の国下りについて白山さんのレポート」と書かれている。
菊神白山(鬼)との戦い
そうやって見ていると、背後になにかの気配が忍び寄るのを感じる。
床が、悍ましい来訪者に激しく軋む。思わず振り向けば満月に照らされたそれを目の当たりにすることだろう。
……遠目から見たのであれば、もしかしたらそれは人間に見えたかもしれない。
しかし、その眉間からは肉片をまとう歪な骨が突き出し、口元からは牙が伸びている。骨が背から突き出し、枯れ木のような足が折れ曲がった老人のような身体を辛うじて支えていた。
髪は白く抜け落ち、人ともとれない悍ましいうめき声を上げながらにじり寄ってくる。
そしてその目はおおよそこの世のものとは思えない……真っ赤な血の色をしている。
まるで『鬼』だ―――。(SANC 1/1d6) 《カウント1以上 SANC 1d2/1d6+2》
《聞き耳》戦闘前 菊神白山の声
成功で「ああ、……ヒメリ……ヒメリはどこに……」という嗄れた男性の声を聞くことが出来る。
《カウント1以上》の探索者は精神感応によって鬼の中にある悲哀が流れ込んできて気持ち悪くなる。(SANC 0/1)
【エネミー】菊神白山 鬼の姿
DEX:11 HP:15 STR:10 CON:16 db+0
《鉤爪》30% ダメージ-1d6 《噛みつき》35% ダメージ-1d4 《突き》15% ダメージ-1d6+db
2ターンでイベントが起こる。
2ターンが過ぎた
逃走判定に成功した場合、または探索者たちに倒されそうになった場合でもイベントが起こる。
鬼は探索者たちを前にして追いかけようと……または攻撃しようとするのだが、突如うめき声をあげのたうち回る。鬼は暴れまわり、溢れる暴力衝動を辺りの棚などへ向け、気の済むままに破壊するとその場から暗闇に融けるようにして、【拝殿】へ走り去っていく。
辺りは静けさを取り戻すことだろう。鬼がいた辺りには、血で濡れた半分に破れた封筒が落ちている。
血で濡れ破れた封筒
血で濡れ、更に半分に破れていることから、全てを読むのは難しい。封筒には切手が貼られているが、消印がない。郵送に出す前のものであることがわかる。差出人の名前は「菊神白山」。宛先は「三須歌大学考古学研究室」のようだ。手紙の最後に書かれた日付は約半年前になっている。
【半分に破れた手紙】
――のように、『鏡月巻物』を解き明かすことで、我々は鏡月山の地下深くにあるとされている『根の国』を知ることが出来るだろう。例えば、『根の国下り』の言い伝えのように、大昔の人々は本当に根の国へ下り、そして無事に地上へ戻ってきたのかもしれない。是非『鏡月巻物』を一緒に見てほしい。教授の意見を聞かせてほしい。
――ということもあり、診療所の安井先生のことはどうしても信用できない。だから私の手帳は、一度教授に預けたい。同封しておく。考えすぎかもしれないが、彼に預けるのは危険だ。これ以上彼に資料を……巻物を見せるべきではないのかもしれない。
私にもし何かあれば、ヒメリを守ってほしい。彼は何かを企んでいる。そんな気がしてならないのだ。
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
安井診療所
『鏡月温泉』の近くにある。外には「診療時間外」という札がかかっており、ひっそりとしている。
乳白色の湯はこの中にも浸水してきており、あたりには何とも言えない匂いが漂っている。
【探索箇所】診察室・物置
診察室
診察机の上には、「レポート用紙の束」が置いてある。全ての文字は鏡文字になっており、とても読みづらい。見てみると「根の国下りと悪縁切り」についてが書かれたレポートのようであることがわかる。
【レポート 根の国下りと悪縁切り】
ある年、村の男が根の国へ連れ去られてしまった。クナドは男の嫁に対し「根の国から帰るときには離れぬように赤い縁の縄を足に繋ぎなさい。鬼も縁故のある者にはそう手出しはできない。しかし鬼に惑わされるようなことあらば二度と戻れぬ」と告げた。
嫁は根の国へ下り、男の足に縄を繋いで、行きと同じように大樹の大きな穴へ入っていった。道中鬼に惑わされることも振り返ることもなく、無事人の世に戻った。
戻った嫁は、大樹の穴に向かって神の加護を願いながら悪縁切りを行った。するとクナドが現れ、鬼との悪縁を断ち切り、すなわち門を閉じた。こうして人の世と根の国は分かたれ、平和が訪れた。
《目星》鍵付き引き出しがあいている……
判定の振り直しが可能でその際《POW*5/CON*5》の乳効果判定が起こる。
成功で、鍵付きの引き出しが1つ半開きなのに気づく。
そこには慌てて突っ込んだのか「ファイル」がはみ出ており、このせいで扉が締まりきらなかったようだ。ファイルには『鏡月調査報告書』というシールが貼られている。「三日月を3つ合わせたような印」が描かれており、もしも枯れた大樹のウロの奥で見ている場合はあの時に見たものと同じであることがわかる。また、「血で濡れたボロボロの手帳」も奥にしまわれている。
血で濡れたボロボロの手帳
手帳の中を開けば内側には「菊神白山」と名前が書かれている。鏡月に関する研究のメモがびっしりと書かれており、殆どは血で濡れてしまっているが一部を読むことが出来る。
【手帳のメモ】
・宝物殿には赤い縁結びの縄、鏡月巻物がある。
・悪縁切りには別の方法もある?→巻物に記載?
・根の国から無事出ることが出来れば鬼だった村人は元の姿を取り戻す。
・根の国下りは単独ではできない。
《母国語/カウント3以上補正値-20》とても読みづらい鏡文字のメモ
走り書きのようにしてのたくった文字が続いている。鏡文字のため読みづらさが増している。
『・手を叩いて名前を呼ばれてから、鏡に3回姿をうつされることで鬼は一時的に人の心を取り戻す。』
ファイル 鏡月調査報告書
書かれた日付はおおよそ半年ほど前だ。シュブ=ニグラスとその従者について知った探索者は(SANC 1/1d3)《クトゥルフ神話技能+1%》
【鏡月調査報告書】
枯れた大樹――「化身の木」にある地下世界へ続く門は境の神によって大岩で塞がれ、封印されてしまった。これでは従者たる「ゴフン・フパージ=シュブ=ニグラス」が生まれず、女神シュブ=ニグラスの目覚めは遠のくばかりだ。我々は早急にこれを解決しなければならない。
幸いにも今や封印は緩く、門の活性化が行われさえすれば、生贄を地下世界へ飲み込める程度の力を化身の木は取り戻した。
門の活性化にはまず、化身の木へたどり着いた人間が門の印に触れることが必要だ。しかし鏡月山を解放させたところで、神の存在を信じ、その力を切に乞う人間が来なければ意味がない。そのような人間を集めることは果たして可能だろうか?……コレには長い時間を要することになるだろう。
更に悪いことに、菊神白山が貴重な資料を他者に渡そうとしていたことが発覚したため、早急に資料を奪取。しかしその際に大部分が血で濡れてしまった上に、逃してしまった。どこを探しても見つからない。まさか地下世界に……?だとしたら好都合だ。
しかし白山を逃した今、新たなる協力者を探さねば。我々の言葉に従い人を山へ招き入れる愚かな人間が必要だ。
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
物置
物置の中はダンボールなどがひっくり返っている。薬や包帯から、はては木を伐採するためのノコギリや高枝切りバサミまで。探索者たちが望めば常識の範囲内で武器や回復アイテムを調達することが出来る。医療用マスクならあるがその程度でこの神格由来のガスは避けられるものではないだろう。
また、鏡を探すのであれば普通に医療用のものがたくさん置いてある。
《目星》簡易電気銃
意外にもそこまで複雑な構造はしていない。《電気修理》に成功すれば使うことが出来る。
ミ=ゴの電気銃よりも更に簡略化されたものとしてシナリオ上で取り扱う。
【簡易電気銃】
異界のテクノロジーで作られた電気銃。人間の手で扱うのにちょうど良い作りとなっている。
《1d100》 1または20の出目のときだけ ダメージ-1d10
根の国-鏡月神社(2)
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
※鬼(白山)を探すのであれば、拝殿に向かったことを思い出させるのが良い。特にここは探索箇所を出すことはなく、探索者が必要と思った場所に向かうことができる。
授与所
授与所の中は棚の中のものや、売られていたお守りなどが全て床にぶちまけられている。
お守りの中を改めたのであれば中には小さい御札と小石が入っている。
小石には鏡月神社の神紋として「円の中に五芒星が描かれた印」が彫り込まれている。
お守りを詰める作業のために、神紋の刻まれた石が大量にあることにしても良い。
宝物殿
表の扉は施錠されているが、裏側へ回れば裏口がある。《鍵開け》または《STR対抗10》でこじ開けることが出来る。
中を見て回ると、奉納された「縁結びの縄」が飾られている。真新しい綺麗な赤い縄だ。
《目星/カウント3以上 補正-20》鏡月巻物を探す
成功で鏡月巻物が保管されているのを見つけることが出来る。
恐る恐る開いて見てみると、内容はどうやら「悪縁切りの方法」についてのようだが、文字は薄れ、この道の専門家でなければ読むのはとてもじゃないが出来ないと感じる。
《考古学/カウント3以上 アイディア》クナドの真名
探索者は巻物を開いた時に、とある一文を読むことが”出来て”しまう。
更に《カウント3以上》の探索者はまるで巻物にそれを読まされているかのように口から言葉がするすると出てくるだろう。その一文とは「その境の神の真名は、ヨグ=ソトース。それは果てのない存在であり一にして全であり、時空を超えるありとあらゆる門を司る者……和御魂と荒御魂の側面を持ち、境を分かち門を護る者」読めてしまった探索者は(SANC 1d2/1d6)《クトゥルフ神話技能+3%》
拝殿
拝殿は酷く荒らされているのだが、真ん中にはうなだれるようにして座りこむ鬼がいる。
鬼は悲しげな咆哮をあげて探索者たちへ向かってくる。
【エネミー】菊神白山 鬼の姿
DEX:11 HP:継続HP(元は15) STR:10 CON:16 db+0
《鉤爪》30% ダメージ-1d6 《噛みつき》35% ダメージ-1d4 《突き》15% ダメージ-1d6+db
《DEX対抗》鏡で白山を捕らえる
規定回数鏡にとらえてうつすと、鬼はうめき声をあげながらその場にうずくまる。
人の心を取り戻した菊神白山
鬼は攻撃をやめ、漏らすうめき声が段々と人間じみた声に変わっていくのが分かるだろう。
四肢は未だ鬼のままだが、その顔がゆっくりと白髪交じりの男性に戻っていく。男性は名前を「菊神白山」と名乗り、鏡月神社の宮司であると話してくれる。
KPは白山を通して「根の国下りに必要な縄を足に結んでから木のウロから地上へ帰り、封印のための悪縁切りをする」という手順を説明させるのがいいだろう。また、探索者たちが根の国下りをして帰ろうとするのであれば「ヒメリに会いたい」と望み、探索者たちと共に帰ることを望む。
★鏡月巻物や悪縁切りの儀式に関して尋ねる
巻物には正しい悪縁切りの方法によってクナドの力で根の国の門を閉じ、鬼との悪縁を切る方法が書かれている。特に以下の点は専門家である白山に聞かなければ分からない。
神の加護を得るにはただの石ではなく、お守りの中の「神社の紋章の刻まれた石」が必要。
菊神一族に伝わる「祝詞」の後に悪縁切りを行うと、クナドは慈悲深き御姿で現れる。そうでなければ荒御魂の姿で現れる。
悪縁切りを行わなければ、また同じようにここに連れ去られる人が出るかもしれない。宮司としてきちんと門を封じ、人間の世と根の国の縁を切りたい。
★ここに来た経緯/安井の企みについて
彼はどこか狂信的で恐ろしかった。山を一般開放することに関してやたら詰められたり、資料を見せてほしいとせがまれたりして、かなり様子がおかしかった。根の国下りについての資料を見せられた後、山を二人で見て回っている時に研究のことが全て書かれている手帳を奪われ、殺されかけた。無我夢中で逃げたら気づいたらここにいた。ココに来てすぐに鬼に变化してしまい、帰ろうにも帰れなかった。
※今回のことについての殆どの背景や正解を教えてくれる。KPは「悪縁切りの際には必ず目をつぶる」「根の国下りのときには振り向くな」というのはここで改めて伝えるべきではないだろう。最も重要なギミックである。また、安井がミ=ゴであることは知らない。白山はこちらに来てすぐに鬼に变化してしまった上に、一緒に根の国下りをしてくれる人もいなかったため、戻ろうにも戻れなかった。
根の国-その他の場所
鏡月山
【条件】情報が不十分なまま来た場合
神社の山道への入り口から上へ登ることが出来る。一本道がずっと続いているのだが、しばらく行くと天高くそびえたつ枯れた大樹がある。大樹には巨大なウロが空いており、見ていると人の顔のようにも見えてきて、とても気持ち悪い。
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
そうしていると、周りの山の森の中からなにかの息遣いが聞こえてくる。
値踏みするようにこちらの様子を伺っており、じっと”監視”されているような気持ちになる。
―――逃げたほうがいいのではないか……。
森の木々の向こうから、途方も無いくらい巨大な存在がこちらを見つめているような気配を感じる(SANC 0/1d2)
《カウント1以上アイディア》黒い仔山羊の気配
はっきりと感じる。この近くには先程見た鬼(鬼化した白山)よりももっと強大な存在がいるのだと、己の中の何かが怯えている。怒らせてはならない。自分たちは常に見られている……。
この存在に捕らえられてしまえば、おそらくは命はない。そんな恐怖にかられて更に(SANC 0/1)
餓鬼との遭遇
この場を去ろうとしたときに、『それ』が物陰から現れる。
それは、ガリガリにやせ細った子供にも見えた。しかし落ちくぼみ闇が広がる両目はぎょろりと不気味で、それらを探索者へ向けると威嚇するように金切り声を上げながら手に持った棍棒を向けてくる。
到底この世のものとは思えない、灰色のバケモノ―――餓鬼は月夜に照らされてぶるりと身体を震わせた。(SANC 0/1d3)
餓鬼は探索者たちを見ると、醜い顔を歪ませ追いかけ、山道の下まで追い返して去っていく。
※ウロなどを見てみると普通に中に入っていけるのだが、縄で足を括らずに入っていくとすぐに『黒い仔山羊』に追いかけられる。逃走判定を行い、2ターンで全員が成功しなければ逃走に失敗した探索者は引きずられていきロストする。きちんとした根の国下りのマナーを守らなければ命を失う。
旅館「鏡屋」/かがみ横丁
誰もおらず、人の気配はまったくない。新聞や雑誌、カレンダーなどは半年前のもので、よって探索者たちの荷物を探したところで一切見つからない。
かがみ横丁ではワークショップがまだ開かれていない段階のため、そういったものもない。
どちらかを訪れ、ヘビ人間と遭遇すればもう片方のところではイベントは起こらない。相変わらず誰もいないということで【シュブ=ニグラスの乳の効果判定】を起こして寄り道を終了しよう。
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
《カウント1以上 アイディア》別の気配
廊下の奥からまたは曲がり角の向こうから……。
何かが息を潜めてこちらを伺っているのに気づく。それは明らかに人ではないと分かるだろう。そして何より、その人ではない何かはこちらに危害を加えられる好機を狙っているようだ。
いち早くここから逃げなければ、そう感じることだろう。
★場所を移動しようとする
暗い影から何者かが現れる。それは夜の僅かな光にぬるりと反射すぬめった肌を持つ、ヘビが直立歩行したような悍ましいバケモノだ。
ゆらゆらと揺らめきながら、長い舌を出し、シューシューという息を吐きながらにじり寄ってくる。
彼らはここを根城としているのだろうか。彼らから放たれているオーラは自分たちの縄張りを荒らされたことへの怒り、そして《カウントの一番低い者》へ向けられる浅ましいまでの”食欲”だ。
探索者たちは「ヘビ人間」に遭遇する。(SANC 0/1d6)
彼らは多勢に無勢で探索者たちを囲もうとする。いつ飛びかかられてもおかしくはないし、この数では到底勝ち目はない。探索者たちは「逃げなければ」と感じるだろう。
鏡月トンネル
もしもここから脱出するという案が出た場合、KPは【鏡月トンネル】が唯一の出口であることをアナウンスして良い。万が一、探索者たちが立ち寄る場合は以下のような事が起きる。
【鏡月】唯一の鏡月の外へ出ることが出来るトンネルだ。側道を歩きトンネルの中に入っていくことが出来る。先に進んだのであればいつまで経ってもトンネルの向こう側にたどり着くことは出来ずに暗闇の中を彷徨うことになる。気づけば辺りには濃厚ないい匂いが漂っており、【鏡月】へは戻ってこれるがここから出られないことに気づく。(SANC 0/1d2)
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
根の国-鏡月山
【条件】全ての探索箇所を巡った。
【KP情報】このシナリオにKPCが同行している場合
KPCを同行させている場合は事前に「指示がない限りは特に動きません。何かあればKPCに指示してください」とアナウンスするのが好ましい。つまりKPCは、ヨグ=ソトースが様々な姿にて降臨する際、他PCから「目を閉じろ」と言われない限り直視することになる。しかし他PCが全員目を閉じているのであれば「KPCはどうしますか」と聞いてもいいだろう。
《POW*5/CON*5》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
神社の山道への入り口から上へ登ることが出来る。
満月はあざ笑うのかのように夜空に輝いており、それに照らされた大樹は空を覆わんとしている。
一本道がずっと続いているのだが、しばらく行くと天高くそびえたつ枯れた大樹がある。大樹には巨大なウロが空いており、見ていると人の顔のようにも見えてきて、とても気持ち悪い。
ウロの中にはいってもすぐに奥にぶちあたり、奥の壁には「三日月を3つ合わせたような印」が彫られている。
白山を連れていれば、「根の国下りでは決して心を鬼に惑わされないように。縄を括っていれば、下手に手出しはできません。歩き続けて」とアドバイスしてくれる。また、「鬼の力を持つ者として、一番うしろからみなさんを守れることもあると思います」と出来るだけ一番うしろを希望するが、無理強いはしない。
《MP-1d2》門の活性化
先頭の人が触れたのであれば、すっと奥の壁が消える。その先にはずっと穴が続いていて、僅かに風が吹き込んできている。
《聞き耳》なにかの息遣い
周りの山の森の中からなにかの息遣いが聞こえてくる。値踏みするようにこちらの様子を伺っており、じっと”監視”されているような気持ちになる。
※縁結びの縄を括り、奥の印を触れなければ黒い仔山羊に追いかけられる。もしも縄なしに根の国下りをしようというのであれば、黒い仔山羊は動き始めその触肢で捉えようとする。
根の国下り
穴の中に入ると冷たい空気が頬を撫でる。緩やかな上り坂で、上へ上へ向かうことになる。
一歩踏み出せば、どんな明かりを持ってきていても明かりがたちどころに消えてしまう。
目の前には進むべき暗闇が続いている。奥からは得も言われぬあの腐臭が漂ってきて、その濃い匂いが鼻を、口を塞ぐ。
《POW*4/CON*4》シュブ=ニグラスの乳の効果判定
鬼の誘惑
しばらく歩いていると、突然足に括り付けていた縄の感覚がふっとなくなり、前の人の気配も後ろの人の気配も消えてしまう。道は上へ続いているが、突然真っ暗闇に一人放り込まれてしまったような恐怖がじわじわと足元からこみ上げてくる。
※縄の先頭となっている探索者から個別処理をするのがいい。雰囲気が出るのはやはり一人ずつ別室に呼び出しての処理だろう。二股の道で全員集合となる。
カウント数による幻覚
探索者たちは地下に充満する高濃度のシュブ=ニグラスの乳の匂いで幻覚を見ている。
仲間の存在を視認しようとしても見えないし声も聞こえない。幻覚から逃れるためには、振り向かずにただひたすら上へ向かうしかないのだ。更に乳の効果を受けている探索者はより鬼に惑わされやすくなる。
《カウント3以上》
・穴の入り口あたりから白山の「私を置いていかないでくれ……」という声が聞こえてくる。
・後ろから他の探索者に無言で肩を叩かれる。
・前の探索者から「ねぇ、後ろから来るの、あれ何?」といわれる。
どれかが聞こえてくる。KPはランダムまたは裁量で中身を決定する。
後ろを振り返った場合
探索者が誰か一人でも振り返ってしまった場合、その瞬間、全員の足に括られていた縁結びの縄がぶつりと音を立てて千切れる。白山が一番うしろにいるのならば奥から伸びた黒い触肢に足を掴まれ、ものすごい勢いで穴の奥底へ引き摺り込まれて行く。(SANC 1/1d3)
それは闇の中からうねる触肢を蠢かせながら、這うようにして現れた。
その悪夢のようなゼリー状の黒い塊は表面に浮かべたシワの寄ったいくつもの大きな口にいやらしい笑みを浮かべていた。それらの中心にあいている口にはびっしりと鋭い歯が見え、あの甘ったるい腐臭を撒き散らしながら、根の国下りの掟を破った者たちを喰らわんと追いかけてくる。
探索者たちは「黒い仔山羊」を目の当たりにする。(SANC 1d3/1d10)
《DEX*5》逃走判定
2ターン以内にその場にいる全員が成功しなければ逃げ切ることは出来ない。逃げ切れなければ、鬼が追いついてきて逃げ切れなかった者を捕らえ、穴の奥底へ引きずり込んでいく。
※KPは例え白山は助けられずとも探索者は助けられるよう出来るだけ技能判定を行うのが良い。
二股の分かれ道
【条件】振り返ること無く進んだ
しばらく歩いていると、二股の道が現れる。どちらも先には闇が続いている。甘い腐臭は濃厚に漂い、鼻を塞ぐ。
《聞き耳-(5*カウント数)》濃厚な腐臭
探索者たちは匂いになれすぎて濃度の差に気づきにくい。成功で左の道からはより濃い腐臭が漂っているのに気づく。また、右の道は僅かに匂いが薄まっており上から吹き込む風を感じるだろう。
《カウント3以上 アイディア》鬼の気配
左の道から鬼の気配をはっきりと感じ、あちらに進んではならないと確信する。
※振り直しは《POW*5/CON*5》の乳効果ロールが発生する。その後慣れたという意味でただしく匂いを判別できるように数回失敗したのであればKPは通常の値で判定させて良い。
無事『右の道』を選んで進んだ→【クライマックス】
左の道を選んで進んだ→ その場合は、【後ろを振り返った場合】と同じ事が起き、『黒い仔山羊』に追いかけ回される。逃げ切れれば外に出ることが出来て【クライマックス】を迎えることが出来るだろう。
クライマックス
木のウロから這い出てくると、辺りは夜になっていて、ひりつくような静けさが広がっている。
白山がいればその姿は人間に戻っている。
安井の登場
すると、探索者たちの頭上に大きな影が覆いかぶさってくる。
そして、大樹のウロの前に舞い降りてきたのは。生々しい桃色をした巨大な甲殻類にも似たこの世あらざるバケモノだ。膜のような翼を大きく広げ、巨大なハサミを振り上げる。(SANC 0/1d6)
そのバケモノは安井カネヒラの声で話し始める。
「せっかく苦労して開けた門だというのに、今封印されてしまうのは都合が悪い」
「全く……本当に人間は余計なことをしたがる。……止めるこちらの苦労もわかってほしいものだ」
安井は手に持った見たこともない形状の不思議な電気銃を構える。物置で簡易電気銃を手に入れている場合、安井も同じものを持っていることが分かるだろう。
白山がいる場合、祝詞は戦闘開始して1ターン終了時に完了し、2ターン目から石を投げ込むことができるようになる。白山がいない場合はそのターンですぐウロに石を放り込むことができる。
【エネミー】安井カネヒラ(ミ=ゴの姿)
DEX:12 HP:14 db+0
《ハサミ》35% ダメージ-1d6 《簡易電気銃》15% ダメージ-1d10
徐々にミ=ゴとしてのバイオ装甲が現れるまで時間がかかる。長い間人間でい過ぎたためだ。
《投擲》一回成功もしくは《DEX対抗》で敵の妨害をかわして回り込んでそのまま同じターン内で《こぶし》で投げ込むを選ぶことができる。ただし《DEX対抗》後の《こぶし》失敗時、優先的にエネミーからの攻撃を受ける。
★4ターンが過ぎた
「黒い仔山羊」がウロから現れる。KPは【後ろを振り返った場合】の描写を参考にしウロから半分ほど這い出させ、SANCを行い、最後の戦闘に参戦させる。またPC2人のみの場合は5ターン後とする。
【追加エネミー】黒い仔山羊
DEX:16 HP:30 STR:44 CON:16 db+4d6
《触手》35% ダメージ-db+1d3STR吸収
ウロから身体が全て出ているわけではないので回避はしないものとする。また簡易電気銃による攻撃は全く効果がない。
※ここで肉体ロストをしても、悪縁切りを行うことが出来ればヨグ=ソトースの加護を受けることが出来る。その場合は特殊ルートを参照。
命がけの悪縁切り
空の裂け目からまばゆい光が差し込んでくる。今まさに神が降臨する、その時が来たのだ。
菊神白山による「祝詞」の有無で招来されるヨグ=ソトースの姿が変わる。
【KP情報】悪縁切り
探索者が目を閉じていなければ、降臨する神を直視する。
神紋が刻まれた「お守りの中の石」/またはただの石(白山に話を聞いていない)を使い、儀式を行うことになる。悪縁切りを願い、ウロに向かって石を投げると儀式が完成する。
同行NPCである白山はきちんと目を閉じているということにしてエンドを描写すべきである。また、目を閉じている場合でも「探索者たちは目を閉じているのでこれを見ることはないのですが」と前置きをして神格降臨の描写を入れ、セッションを盛り上げるというのも手だ。
慈悲深きクナドの降臨
【条件】菊神白山による祝詞がある。
《アイディア-10×カウント数》
《アイディア-10》巻物を読んでヨグ=ソトースの名前を知った探索者のみ
その光を見て「神の姿を見ないようにするために、目を閉じなければならない」そういったことが書かれていた『悪縁切り』についての看板を思い出す。
光の中から現れたのは、巨大な球体群だ。それは金色に輝き、優雅に舞い降りてくる。一にして全、時空を超えるありとあらゆる門を司る者……門の外側へ誘う、時空門の番人にして、慈悲深き姿。
探索者たちは、慈悲深きヨグ=ソトースの御姿「ヤード=サダジ」を目の当たりにする。(SANC 1d8/5d10)
怒りに満ちたクナドの降臨
【条件】菊神白山による祝詞がない。
自発的に目を閉じることに気づくことが出来なければ、直視は免れない。
《アイディア-10×カウント数》巻物を読んでヨグ=ソトースの名前を知った探索者のみ
その光を見て「神の姿を見ないようにするために、目を閉じなければならない」そういったことが書かれていた『悪縁切り』についての看板を思い出す。
その瞬間、辺りの空気の流れがぴたりと止まる。巨大な玉虫色の光の泡が天からその身を震わせながら降臨する。光の泡はその表面に生命の神秘をたたえながら弾け、そしてまた生まれゆく。
遥か彼方の時空よりはるばる舞い降りたその神は、今一度その門を閉じんとし、探索者たちの前に降臨する。それは、一にして全、全にして一。探索者たちは「ヨグ=ソトース」を目撃する。(SANC 1d10/1d100)
戦闘でロストした探索者がいる場合
戦闘で一度HPが0になった探索者の魂は、死後の世界へ放り出されてしまうが、ヨグ=ソトースが介入したならば一時的に歪んだ世界の境の中で、縁を手繰り寄せ戻ってこれる可能性が残っている。
死者の魂は、この世との縁が切れ、そのまま死後の世界へ落ちていく……はずだった。
その途中、くん、と何かに引っ張られ、ロスト探索者の魂は暗闇の中で宙ぶらりんになる。
上を見ると、1本の赤い縄が奈落の底へ落ちんとしている魂を寸でのところで引き止めている。更にはその縄は天上の穴へ通じているようで、神の慈悲か否かその穴からは残された探索者たちの声が聞こえてくるだろう。
ロスト探索者はその声に引き寄せられるように、赤い縄――縁結びの縄に手を伸ばす。
遥か下には底なしの闇。この縄が切れてしまえば正真正銘自分は死ぬと確信するだろう。ロスト探索者はその縁をたぐりよせ、この地獄をゆっくりと登っていくこととなる。
《2d50》×2回 縁結びの縄の強度 残された探索者
ロスト探索者を辛うじて引き止めている縁結びの縄の強度(全員の縁と絆の強さ)を残された探索者全員で決める。一人数回振り、全体で出た値の中で一番高い値が縄の強度になる。
《1d100》縁結びの縄をのぼる ロスト探索者
全員で決めた縄の強度を成功値として、判定する。
失敗した場合は縄が切れてしまい、死後の世界へ落ちていく。成功の場合は以下のシーンが続く。
縄を登り終えた先には光が溢れている。眩しさに目がくらみ、次の瞬間ロスト探索者はハッと目を覚ますだろう。深刻なダメージを負った身体はヨグ=ソトースの加護を受け、”巻き戻され”ている。
恐ろしい臨死体験を前に(SANC 1d6/1d10)《クトゥルフ神話技能+10%》
※所謂これは「蜘蛛の糸」である。蜘蛛の糸自体は仏教の話であり神道を主体としている今シナリオでは少し浮くネタではあるが、同じ”縁”をたぐり、命からがら生還するという点で採用した。ロスト探索者はヨグ=ソトース介入と同卓メンバーの力によって歪んだ生死の境より帰還する。
エンディング
探索者たちは轟音と共に目の前で弾けた……魂までもが消え去ってしまいそうな神々しい光の中で、意識を失う。どちらの神でも目を閉じていたとしても感じる大いなる恐怖に(SANC 1d5/1d10)
ふと気づくと、探索者たちは山道を登った先にある「クナドの大岩」の前で倒れ伏している。
時間にして丁度探索者たちが下山し始めた頃で、辺りに一緒に昇ってきた観光客たちの姿はない。
すると、下から汗だくになって顔面真っ青になった菊神ヒメリが駆け上がってくる。
探索者たちがいつまでも降りてこないことに気づいた彼女が山道を駆け上がって探しに来てくれたのだ。彼女は探索者たちを見ると、「よかった……!ここにおられたんですね」と駆け寄ってくる。
★白山がいる場合
白山がそこにいる場合、ヒメリは一瞬足をとめて「パパなの……?」と困惑した表情を浮かべる。
父である白山は「心配させてすまなかったね……」と微笑んで両手を広げてヒメリを優しく抱きしめることだろう。
その後、安井診療所は、白山氏の「彼に襲われた」という証言によって警察の調査が入る。しかしそこは既にもぬけの殻になっており、紙一枚すら見つけることは出来なかった。
安井は逃亡犯として追われることになるが、恐らく彼が見つかることはないだろう。
鏡月の「最強の縁結びスポットの噂」は菊神白山の神隠しめいた事件によって上塗りされ、自然と消えていく。もしかしたら彼が巻き込まれた神話的事件が新たなる都市伝説となり、尾ひれをつけ、世の中に広がっていくかもしれない。
★白山がいない場合
菊神白山はその後も見つかることはなく事件は迷宮入りとなる。安井カネヒラはというとその後忽然と姿を消しこれもまた新たな行方不明事件として鏡月で話題となる。恐らく警察は彼を見つけることは出来ないだろう。
また、その日縁結びの樹を探そうとしても見つけることは出来ない。しかし次の日「山の中に突然大岩が現れた」というニュースを聞くことになる。なにかの大樹を無理やり引っこ抜いたところに置かれているらしく、神社関係者はてんやわんやすることとなるだろう。白山がいればコレに関して上手く立ち回ってくれる。
そして探索者たちは行きと同じようにバスで鏡月を去ることになるのだが、美しい鏡月山を横目で見ているとふと「縁結びスポットの噂」を思い
―――縁結びの樹の奥の壁を触って出てくると、この上ない最高の縁が舞い込んでくる。
もしかしたらあの噂は本当だったのかもしれない。
邪神の脅威を共に退けた仲間たちとの確かな縁と絆は、これからも大いなる恐怖から探索者を助けてくれるに違いない。赤い縄で繋ぎ結んだこの縁は、探索者をこれからも決して離しはしないのだ。
クリア報酬
シナリオクリア 1d10
菊神が生きている 1d8
その他KP裁量で変動、追加可能。
あとがき
タイトルの「縁と浮世は神を待て」はもともとはことわざの「縁と浮世は末を待て(良縁と好機会は、それが自然に来るのを待つべきで、あせってはいけない)」です。神頼みじゃとんでもないことになるという皮肉もありつつ、神頼みをしなければ生還のチャンスは得られないという……そういうアレです。
内容も、古今東西のあらゆる縁結び関連の物語や神話を元ネタにしたものを採用しています。楽しんでいただけたら幸いです。
そして今回は「喫茶食堂」から2チーム合計3人も企画に呼んでいただけて本当にありがとうございました。同じサークル内でも全く違うタイプのシナリオを提出させていただきましたので、賑やかワイワイしたい!めちゃくちゃ盛り上がりてえ!というバク上げテンションの時には、みやくさん&星野さんチームの「ロアスコ 超★完全攻略本」を是非ともプレイしてください。ハチャメチャ面白かったのでマジオススメです。(というのを書いていたら互いに宣伝していることが発覚しました。なんで?)
また、トレーラーは同じサークルの香月さんとみやくさんがやってくれました!ほんとうにありがとう!助かりました!助けられすぎ……。
私のうめき声を延々と聞いてくれた、サークル「喫茶食堂」……そしてテストプレイヤーのみなさん。何より優しく見守ってくださった主催のななきそさんには頭があがりません。本当にありがとうございました。自分のシナリオとは、を改めて考えるいい機会でした。
同じギミック内容でNPC盛りだくさんのちょっとストーリーの違う別バージョンも制作過程で生まれたのですが、それはいつかファンボックスやBOOTHで公開出来たらいいなと思っています。
竜原(@tthrpg)
BOOTH:https://tatuhara.booth.pm/
Fanbox:https://tthr.fanbox.cc/
喫茶食堂:https://teaparty-table.booth.pm/
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