『Nスペ』より『モーニングショー』が信頼できる?岡田晴恵教授と玉川徹が国の専門家会議に注文した件

4月23日『羽鳥慎一モーニングショー』に出演した岡田晴恵教授(筆者が画面撮影)

 緊急事態で私たちの行動がさらに次の状況に影響しかねないときは、権威ある専門家の言うことには異を唱えにくい。

 だが、どんな緊急事態であっても、あるいは緊急事態であるからこそ、権威がある人たちが言ったことでも他の専門家から見て「?」という点があるときは、そうした点もきちんと指摘することが報道の役割である。

 いきなり、ジャーナリズム(報道)ついての授業での説明のような話を書いたのには理由がある。

 政府の専門家会議が発表した内容について、ニュース番組や情報番組は「専門家会議はこう提言した」などと報じるだけの現状になってしまっている。その代表例がNHKの看板番組である『NHKスペシャル』である。政府の専門家会議などに対して、疑問を投げかけることをしない。専門家会議のメンバーが言うことをそのまま伝えるだけで異論を挟まない。

 だが、専門家会議も一生懸命やっていることは認めるとしても、彼らの提言などによって現在の新型コロナの感染拡大防止のための政策が決定されていて、感染拡大がいまもどんどん続いているのは周知の通りだ。

今回、筆者が記すのはコロナ報道でどのメディアが信頼できるのかという点で『NHKスペシャル』よりもテレ朝『モーニングショー』の方が信頼できるのでは?という実態だ

 それはNHKスペシャルの報道の「姿勢」に起因するものだ。

 少々、長くなって恐縮だが、いまコロナ対策で、どの情報を信じればいいのか不安に思っている人は最後まで読んでいただきたい。

 専門家会議の発表をそのまま伝えるだけの報道ばかりが目立つなかで、筆者が見るところではテレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』だけが専門的な知見も交えて、政府見解とは距離を置いて、場合によっては批判的な意見や注文まで伝えている

いま日本では感染者の増大に歯止めがかからず、医療崩壊が起きかけている

 そのために「人と人との接触を減らす」「現場で必死に働く医療関係者へのバッシングを減らす」などをもっともっと進めていかないと、日本はアメリカやイタリアの二の舞に突入してしまう。ただちに国民全体が行動を起こすべきだ…。

 政府の専門家会議のそうした認識は、この状況において誰が見ても正しい。

 「総論」では正しいのだが、「問題」になってくるのは各論である。

 説明の仕方対策の進め方などが納得できるものでないと、国民の中ではついていけない人もいる。

 そういう意味で専門家会議の記者会見などをチェックする上で情報番組が果たす役割は大きい

 『モーニングショー』が圧倒的に強いのは岡田晴恵・白鴎大学教授を抱えていて、羽鳥慎一キャスターやコメンテーターの玉川徹らもそれぞれが勉強してこの分野における専門的な知見を深めていることだ。

 4月23日の同番組は、前日の専門家会議の後で記者会見した厚生労働省スラスター対策班の西浦博・北海道大学教授が次のように語ったことを伝えた。

(厚労省クラスター対策班・西浦博北大教授)

「行動を著しく制限しないといけないような状況は数ヶ月単位に収めたい。

“多かれ少なかれ”向こう1年間はこの流行とつきあっていかないといけない」

 これに対して、岡田教授が次のように注文をつけた。

(岡田教授)

「私、西浦先生にお願いしたいのは、西浦先生が行なったたくさんのシミュレーションの基礎的なデータ、どういう数値を入れているのか、それから、たとえば実効再生産数も2.5というのを、これドイツだと思うんですけど…」

(羽鳥キャスター)

「1人の人が何人にうつすかという数値ですね?」

(岡田教授)

「そうです。実効再生産数の、現在の日本はいくつなのか、とか、という基礎的なデータをいただきたいなと思います。

そもそもPCR検査にしても厚生労働省から出ているのも、(入院した感染者が)退院するときの2回の検査を含むものと含まないものがあったりとか混同しやすくて、なかなか実態把握ができないんです。私たち」 

 同じ研究者として、基礎となるデータが明確でないだめに検証ができないと言っている。

(岡田教授)

国内の他の(専門家会議以外の)研究者も議論できるように出していただきたい

 他の研究者も同じデータを元に検証することでもっときちんと伝わるはずだと匂わせている。

(岡田教授)

「感覚的なことで(西浦教授の言った)“多かれ少なかれ”というところがすごくひっかかるんですね。

こういう表現を学者が言うのかな?とちょっと私は思ったりしています」

(羽鳥キャスター)

「確かに一般的な受け止め方としては、数ヶ月単位なのか1年間なのかというのはちょっとふわっとしていると思う。そこにこういう状況だから、というのがあると…」

(岡田教授)

「でないと国民が、企業の自粛だとか、痛みを強いられているわけですよ。商売やっている人は生き死にがかかっている。

ここら辺をもう少し可視化してくれると、たとえばこの行動規制とか他の対策とかモチベーションが上がるじゃないですか、

こうだからこうなんだと。そういうふうなことをお出しいただきたい」

(羽鳥キャスター)

「可能であればデータをもう少し出してもらえると、そうかだからこういうちょっと長めの期間なのかということに納得できると」

(岡田教授)

納得できるわけですね

 前日に行われた専門家会議は「PCR検査の体制強化」などを政府や自治体に提言している。

 PCR検査の数を韓国がやったようにもっと増やしていくべきだということはこの番組で岡田教授やコメンテーターの玉川徹が毎回のように言い続けてきたことだ。

 しかし、専門家会議ではこのことをこれまで明確には提言せず、むしろ後ろ向きの印象を残してきた。

(岡田教授)

ようやく(専門家会議の提言に)PCR体制の強化というのが入ってきた

それを具体的にどうするのか。このようになって(感染が広がって)来ていますので。

そこがちょっと引っかかるところです」

(羽鳥キャスター)

「自治体によってはドライブスルーをやって行こうとか、そういう動きも?」

(岡田教授)

「それはすごく良いことなんですけど、それを全国に広げるためにはどういしたらいいかというのを模索している状況ですね」

 PCR検査について玉川徹も言いたそうに一度は割り込んできたが、羽鳥キャスターに「後で」を押しとどめられた後に間を置いて話す機会を得た。 

(玉川徹)

「(PCR検査については)これは是非どんどん前に進めていただきたいということです。

PCR検査が足りないということが今の(感染者数が急増している)状況を生んでいる可能性があるので

これは是非、前に進めていただきたいということではあるんですが、

ただちょっと疑問があります

 玉川が指摘した「疑問」というのはこれまで新型コロナのニュースをずっとフォローしてきた筆者にとってもまったく同感するものだった。

(玉川徹)

専門家会議を含め、PCR検査の数を絞っていたわけですね。

いまここで『PCR検査を増やしましょう』ということになった。

これは転換しているわけですね。方針を。

なぜ転換したのかということの説明がない

 玉川は「専門家会議による方針の転換」という言葉を強調して「説明がない」と断言した。

(玉川徹)

「何でそういうことを言うかと言うと、別に過去(の責任)を問うているわけではなくて

まだ、いまの段階でも(スタジオの)パネルにありますけども、

(専門家会議は)『患者数が大幅に増えたときの相談・受診体制(提言)』というふうに書いてあるんですけれども、

こういうふうな体制というのは、あらかじめ前もって予見して体制を取っておかない限りは必ず、遅れる、遅れるになるんです。

だから、なぜ、どの段階で方針を転換したのかを(専門家会議に)ぜひ言っていただきたい」

玉川は他局の番組である『NHKスペシャル』を名指しした

(玉川徹)

「というのは専門家会議のメンバーでもある東北大学の押谷教授が厚労省のクラスター対策班のメンバーでもあるんですけれども、3月22日の『NHKスペシャル』でこういうふうに言っている。

『むしろPCR検査を抑えていることが日本が踏みとどまっている大きな理由だと考えられます』と。

NHKでしゃべってらっしゃるんですよ。それが4月になると、そうじゃなくて、やっぱり『PCRを増やさなきゃいけない』というふうに変わっているんですね。4月11日に。これは(専門家会議の)中で何が、どういうことがあるのか。そういうことを僕は是非知りたい。

ここをちゃんと知っておくことで今後にも生かされると思うんですけど」

 筆者が確認したところ玉川が指摘したのは、3月22日放送の『NHKスペシャル “パンデミック”との闘い〜感染拡大は封じ込めれるか〜』だ。

 この番組ではヨーロッパやアメリカで起きているオーバーシュート(感染爆発)が日本では(この時点では)起きていないとして厚生労働省のクラスター対策本部のメンバーでかつ政府のコロナウイルス対策会議のメンバーでもある押谷仁・東北大学大学院教授に対策本部での様子を取材したVTRとスタジオの両方でインタビューしていた。以下はそのスタジオの部分だ。

(NHKの男性キャスター)

「日本もPCR検査の数が少ないので見逃している感染者も多数いるのではないかという指摘がありますが?」

(押谷仁教授)

「本当に多数の感染者を見逃しているのであれば日本でも必ずオーバーシュートが起きているはずです。

現実に日本ではオーバーシュートは起きていません。

日本のPCR検査はクラスターを見つけるために十分な検査がなされていて、

そのために日本ではオーバーシュートが起きていない。

実はこのウイルスでは80%の人が誰にも感染させていません。

つまり、すべての感染者を見つけなきゃいけないというウイルスではないんですね。

クラスターさえ見つけられていれば、ある程度、制御ができる。

むしろ、すべての人がPCR検査を受けると医療機関に多くの人が殺到して、その中にはほとんどの人が感染していない、一部の人が感染している。そこで医療機関で感染が広がってしまうという懸念があって、

むしろPCR検査(の数)を抑えていることが日本がこういう状態で踏みとどまっている、そういう大きな理由だと考えられます

 確かに玉川の指摘する通りで、押谷教授はこの時点では「PCR検査を抑えていることで日本が踏みとどまっている」という認識を示していたのだ。

 それから3週間ほどしてNHKが4月11日に放送した『NHKスペシャル 新型コロナウイルス瀬戸際の攻防〜感染拡大阻止最前線からの報告』で押谷教授が再び登場する。NHKスペシャル班は前回に引き続き、厚労省クラスター対策本部での押谷教授の活動を中心に撮影を進めていた。

 押谷教授を含めた専門家会議が緊急事態宣言の発令を提言し、政府が4月7日に緊急事態宣言を発令していた。

 このときもスタジオに出演した押谷教授はキャスターからPCR検査について問われている。

(NHKの男性キャスター)

「PCR検査をもっとやった方がいいという意見がずっと出ていると思うんですが、前回、ご出演いただいたときには『むやみに検査を拡げるのは病院などの院内感染を起こして危険だというお話をされていたと思うんですが、現状を含めてどんなふうに考えたらいいのでしょう?」

(押谷仁教授)

「われわれが政府に提言をする活動を始めた2月25日の時点で、すでに国内で150例以上の感染者が出ていました。北海道だけでなくて、かなり広範に感染者が見られていて、いわゆる個発例、いわゆる感染源がわからない感染者も相当数含まれていました。

つまり、その時点でシンガポールや韓国で行われたPCR検査を徹底的にやるということだけでは感染連鎖をすべて見つけることはできないような状況にありました。

そうなると、そういう状況を政府に説明をして、その状況だとこのウイルスは症状がない、あるいは非常に軽症の人が多い、その状況で本当にすべての感染者を見つけることが見つけようと思うと日本に住むすべての人を一斉にPCR検査にかけないといけない。

それは到底できないことなので、そうなるとわれわれの戦略としてはクラスターを見つけて、そのクラスターの周りに存在する孤発例を見つけていく。その孤発例の多さから流行の規模を推計して、それによって対策の強弱を判断していく、という戦略になります。

これを支えてきたのが、保健所、自治体、感染症研究所からのデータ、さらにはそれを疫学的に解析してきたわれわれのチーム、でそれを数理モデルで推計してきた西浦博さん(北大教授)たちのチームです。

当初のPCR検査はクラスターを見つけるきっかけとなる感染者、さらにクラスターの調査、さらに重症者を見つけるには十分な検査がされてきたと考えています」

 この押谷教授の説明は、その前のキャスターからの質問に答えたものとは思えない。

 政治家や官僚の答弁で質問にまっすぐに答えない「ごはん論法」だ。

 少なくとも筆者には理解できなかった。

 この回答にはスタジオに出演していたNHKのキャスターたちもさすがに意味不明だと感じたのだろう。

 苛立ったような表情で女性キャスターが口を開いた。

(NHKの女性キャスター)

「押谷さん、高熱が出ても保健所や病院をたらい回しになってしまってPCR検査を受けられないという不安の声も多いんですが、そういう声はどのように受け止められていますか?」

(押谷教授)

「現状は、様々な理由でPCR検査を行う数が増えていかない状況です

本来、医師が検査を必要と判断しても検査ができないという状況はあってはいけない状況だと思います。

当初はさきほど言ったように、クラスター戦略を支えるのに十分な、さらに重症者を見つけるのに十分なPCR検査がなされていたと判断しています。

で、一部に本当に検査が必要で検査がされていない例があったということも、われわれは承知していますけれども、しかし、クラスターさえ起きなければ、感染が広がらない。

さらにほとんどの多くの症例で軽症例。もしくは症状がない人だと考えると、すべての感染者を見つけなくても多くの感染連鎖は自然に消滅というウイルスなので、ここがインフルエンザとかSARSといったウイルスとはまったく違うウイルスだということになります。

明らかな肺炎症状があるような重症例については、かなりの割合でPCR検査がされていたとわれわれは考えています」

 路上で死亡していたなどで警察が「変死」として扱っていた死者にもわかっているだけで11人に新型コロナだったと判明し、埼玉県で「軽症」と判定されて自宅療養していた50代の男性が死亡した事例が見つかった現在(4月23日)の時点で、この『NHKスペシャル』での押谷教授の発言を聞いてみると愕然とするばかりだ。

 政府に提言する専門家会議のメンバーの認識はなんと楽天的なことだろうか。

 テーブルに置いた原稿に目を落としながら、彼は話し続けた。

(押谷教授)

「しかし現在、感染者が急増している状況の中でPCR検査が増えていかないことは明らかに大きな問題です。

このことは専門家会議でも繰り返し、提言をしてきて、基本的対処方針にも記載されていることです。

行政も様々な形で取り組みを進めていることは承知していますけれども、十分なスピード感と実効性のある形で検査センターの立ち上げが進んできていないことがいまの状況を生んでいるというふうに理解しています。

しかし、いくつかの地域では自治体、医師会、病院などが連携して検査や患者の受け入れ体制が急速に整備されている状況です。

そのような地域では事態が好転していくと私は信じています」

 玉川は4月11日の『NHKスペシャル』で押谷教授が「PCR検査を増やさなきゃいけない」と語ったと『モーニングショー』で発言したが、厳密に言えば少し正確ではない。押谷教授は「PCR検査が増えていないのは明らかに大きな問題」とは言ったが「 PCR検査を増やすべきだ」とまでは明言していない。

 いずれにしても、玉川のチェックの細かさには恐れ入る。他局での押谷教授の発言をきちんとチェックした上で、専門会議の提言などがどのように変化してきたのかを丹念にフォローしている。

 PCR検査の実施数の拡大については、専門家会議がこれまであまり積極的ではなかったことが2つの『NHKスペシャル』から見てとれる。

 また、このあたりが『NHKスペシャル』という番組の限界だろう。玉川徹のように一見「お行儀が悪い」物言いをするような出演者が専門家をズケズケと問いつめる、ということをけっしてしない。権威ある学者の発言を言わせっぱなしにしてしまう。

 結果として、視聴者にとって一番、切実な新型コロナの感染防止対策がこれで十分なのかどうか、よくわからない曖昧なままにしてしまう。

 さて、玉川が2回に及んだ押谷教授の発言に言及した4月23日の『モーニングショー』に話を戻そう。

 玉川は『NHKスペシャル』での専門家会議メンバーの発言を引きながら、これまで『モーニングショー』でPCR検査の数を増やすように訴えてきた岡田教授に自身の疑問(なぜ専門家会議はこの段階でPCR検査拡大へと方針転換したのか?)についての見解を聞いた。

(玉川徹)

「これ私、非常に疑問なんですが、岡田先生、どうですかね? この疑問…」

(岡田晴恵教授)

「『サイエンス』という雑誌がありまして、昨日、5月号を読んだんですけれど、対談が載っているんです。

押谷仁先生と尾身茂先生(国立感染症研究所感染症情報センター長)と。専門家会議の3人の先生の。

その中で押谷先生が、これ押谷先生を弁護するわけではないんですけど、押谷先生のお考えでは2月13日くらいに急速に感染伝播のリンクが追えるようになってきた、可視化できるようになってきたと。だから自分はこう考えたんだと。

クラスターを見つけて対処するという作業をすれば、それをすることで(クラスターを)つぶしていくんだと。それに2月半ばに気づいたと。

それ以外の感染者についてはうつすかもしれないけれど、それ以外は消えていくんだと。自然消滅するんだと。だからクラスターを見つけて(対処する)ということだった。

で、そういうことを言っておられるわけです。そうするとクラスターが出てきたときに対処すればいいということになるわけです。

ただ私は大間違いだと思っているんです。

というのは検査数が少なければ、クラスターを見つけるときに『漏れ』がある。

見つける『漏れ』があると、そこが潜在的に、水面下で先にクラスターを作って、ま、うつさない人もいるんですけど。必ずうつす人も出てくるわけです。漏れてどんどんどんどん水面下で広がって、それはたぶん無症状の人や軽症の人が運んだのだのでしょう。

それでいま市中感染が広がっている。救急医療がダメになるとか。こういう大幅に感染者が増えたとき(パネルの東京3440人死亡81人を指差す)の想定とか、もう戻せないですから。

それで慶應病院の6%(新型コロナ肺炎以外の一般患者にPCR検査を実施したら6%が陽性と判明したというニュース)というのは

私はもうちょっとふらつくくらいの数字なんですけれど

それが全部かどうかはわかりませんけれど、この数字が出てきたということは市中感染率の高さという、家庭内感染の高さということもリンクしてくるわけですね。クラスターを見つけて、ということが4月になって、もう追えなくなったんだと思うんですね。

というのはリンク(感染経路)不明の患者さんがこれだけ増えてきているということは、

その段階で(専門家会議は)政策の方向転換をしたのではないかと私は推察します。

クラスター対策はダメだから、

検査をいっぱいやって

と、ようやく韓国式に変わってきているわけです。

ただ、そこの政策の失敗、失敗かどうかわかりませんが、政策の方向転換というのはこれは私の推察なんですが、政策を方向転換するには『こういう理由があるから、こういう結論になった』というのは、私は国立感染研究所にいたときには上司に激しく求められた説明なんですね。

それは私たち学者としては習慣でございます。

それはやるべきであろうというふうに思います。

クラスターの政策の転換というのは、私が状況を見て推察しているわけです。

ここは私はこう考えて理解しているのですけれど、それが正しいかどうかわからない

(羽鳥キャスター)

「それを玉川さんが何があったのか知りたいということですね?」

(玉川徹)

「そうです」 

(羽鳥キャスター)

「変換を批判しているわけではない」

 羽鳥アナウンサーはどこまでも「バランス感覚の人」だ。誰かを一方的に批判することはしない。それぞれが事情を抱えながら一生懸命やっているというスタンスだ。

(玉川徹)

「変換はまさに変換すべき政策だと私は思って、番組でもずっと言ってきたことですので、こういうふうになってきたことは良かったんですけれども、でも、惜しむらくはもっと早くできなかったのかな?ということなんですよね。急に拡大すると言っても、単なるキャパがあるわけではなくて、途中の目詰まりという部分だって、一個一個取り除かないと、やっぱり政策が転換したというときには転換したんだぞ、ということをちゃんと言わないと現場の方だって、まだわからないところが残っているんじゃなと思います」

(羽鳥キャスター)

「その転換がこういう理由で転換されたんだというと『あ、そうなんだな』と受け入れやすいと」

(岡田教授)

「だから、(専門家会議を)批判しているわけではなくて、国民が納得しないと。これだけの痛みを伴う、もしくは商売がつぶれている人もいるわけです。やはり理由と根拠になる数字を説明しないと、なかなか8割の達成は難しいよとそういうことを申し上げているわけです」

 岡田教授も玉川徹も、単に一方的に批判するのではなく、わからない点はわからないとしながら、専門家会議の説明の仕方に対して注文をつけていた。その方が国民が納得できるようになりますよと。

 『モーニングショー』のやりとりを長々と引用したのは、『NHKスペシャル』との違いを理解してもらいたかったからだ。 

 もしも『NHKスペシャル』に岡田晴恵教授と玉川徹が出演して、専門家会議野メンバーと直接やりとりをすることができれば、『N スペ』ももっとわかりやすい放送になっていたはずだ。

 権威のある人の説明でも、わからないものはわからない、納得できないものは疑問を投げかける。

 絶対的な権威に対して、懐疑的な、批判的な姿勢で臨む。

 よく考えれば報道としては当たり前のことだ。

 だが、現在、新型コロナをめぐる報道で視聴者として見たときに「信頼できる」「実態をきちんと解説している」と思うのは『モーニングショー』だ。

 その理由は、専門家の話を伝えるにあたって重要な「姿勢」をきちんと持ち続けているからだと思う。