ワクチン接種が進む米国で、急速に脅威を増しつつあるものがある。新型コロナウイルスの変異株だ。
現在、米国保健当局は、カリフォルニア州やニューヨーク市をはじめ、米国内で検出されたいくつかの変異株の脅威を測ろうとしている。感染症の専門家であるアンソニー・ファウチ氏は、先月マンハッタンで最初に検出されたB.1.526という変異株が広まっていることを懸念している。なぜならこの変異株に対しては、従来の新型コロナワクチンの効果がなく、ほかの治療法の効果もない可能性があるからだ。
2月23日付けで査読前の論文を投稿するサイト「bioRxiv」に発表された米カリフォルニア工科大学の研究チームの論文によると、2月にニューヨーク地域で収集され、ゲノム配列が決定された新型コロナウイルスのおよそ4分の1がこの変異株であったという。また、2月25日付けで同じく「medrRxiv」に投稿された米コロンビア大学の研究チームによる査読前論文には、「この数週間、私たちの患者集団の中でこの新しい変異株が急増していることに憂慮している」と記された。
また、カリフォルニアでは現在、2020年7月に南カリフォルニアで初めて確認されたもののその後10月まで検出されなかったCAL.20C(B.1.429)という変異株が流行している。この変異株は感染力が強い可能性があり、今年1月のカリフォルニア州における新型コロナ感染症の35%を占めていた。米シダーズ・サイナイ医療センターの研究グループが2月11日付けで医学誌「米国医師会雑誌 (JAMA) 」に発表した研究結果だ。
国外の変異株も上陸
一方、この数カ月間、米国の保健当局は国外の危険な変異株にも注目していた。昨年12月には、英国からB.1.1.7(VOC-202012/01)という変異株が報告された。その後、南アフリカで最初に見つかった変異株B.1.351(501Y.V2)がワクチンにあまり反応しないことが明らかになった。また、ブラジルで出現したP.1(501Y.V3)については、従来株による感染症から回復した人が再感染するおそれがあることを示す研究結果が出ている。
3種類の変異株は、いずれも米国に上陸している。米国疾病対策センター(CDC)の3月9日付けの集計によると、米国内のB.1.1.7は3701例、B.1.351は108例、P.1は17例記録されている(編注:厚生労働省が発表した日本の国内事例は3月9日の時点でそれぞれ260例、8例、3例)。
英国政府は、昨年報告されたB.1.1.7という変異株に感染した人は従来株に比べて重症化しやすいというレポートを2月12日付けで発表した。また、3月10日付けで医学誌「BMJ」に発表された論文によると、英国における調査では致死リスクが従来株より64%高かったというが、この見解は、遺伝子配列の報告だけでなく、病院のカルテや濃厚接触者の追跡調査などから導かれたものだ。
対して、米ミシガン大学の感染症専門家であるアダム・ローリング氏は、詳細が明らかになるまでは、新たな変異株をむやみに怖がらないようにと注意している。米国は遺伝子サーベイランスを強化しはじめたばかりで、変異株の現状を把握するために必要なデータはまだ揃っていない。
米国の研究の規模は小さく、解明しなければならない点はまだまだ多いとローリング氏は言う。「何が問題で、何が問題でないかを知るのは難しいのです」
おすすめ関連書籍
伝染病の起源・拡大・根絶の歴史
ささいなきっかけで、ある日、爆発的に広がる。伝染病はどのように世界に広がり、いかに人類を蹂躙したのか。地図と図版とともにやさしく解き明かす。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
定価:2,860円(税込)






