研修所ニュース

新国立劇場演劇研修所 「美術」授業作品について

16期生(1年次) 『自画像』の作品発表



1年次生「美術」の授業では、本多桃佳講師のもと、様々な課題に取り組んでまいりました。

その中でも、今回は『自画像』作品をピックアップして、一挙に紹介します。

作品制作を通して、研修生が自己に向き合い、自分の本質を引き出し、見つめる重要な機会になりました。
自身を直截に語る者、不明瞭な空間や曖昧な形で自己の心的表象を描く者、作品から、彼らの様々な自意識がうかがえます。 

3月までの期間限定の公開ですので、ぜひご覧ください。

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美術講師 本多桃佳さんからのコメント

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         (写真)授業風景(2019)

春より取り組んでいた「自画像」、、、この作品は自分の顔をただ鏡で見て描くのではなく個々の外見だけでは伝わらない、個性、世界観、好きなもの、特徴、理想、内面性、画面になんでも盛り込んで良いという16期生が自画像を通してにを伝えられるか、自分自身と向き合いながら手を動かし、その時の自己を作品という形に残るものとして制作する課題となりました。

2021 美術講師:本多桃佳

▶略歴
イラストレーター、美術家。東京藝術大学絵画科油画専攻卒業。舞台美術家松井るみ氏に師事。『NARUTO』『1789~バスティーユの恋人たち~』背景映像原画制作など。イラストや絵画、舞台美術まで幅広く手がける。

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作品(順不同)


01

『十九の僕』

安森 尚


パステル、絵の具、色鉛筆、クーピー


鏡と向き合って自画像を描いていたときに、自分のやりたい事はこれなのだろうかと思ってしまいました。なので、自分の心の中のありとあらゆる感情を思うがままに叩きつけました。色鉛筆やクーピーを使った後、パステルや絵の具を手につけて描いた部分もあります。これが今の僕の自画像です。

学生の頃、型にはまった作品しか作ってこなかったからか、美術に対してとても苦手意識がありました。ですが、ここでの美術は自由に自分の発想を表現することができたし、繊細に自分の内面と向き合えました。過去と現在にかけて、自分が感じている事や自分そのものを演技ではなく、絵で表現することが単純に面白かったです。
出来上がった作品を見て、自分の中を客観視することができる発見があったので、これからも何かの節目に自画像を描きたいと思っています。





02

『2020年7月15日(21歳)』

平野 光代

水彩絵の具


初めて紙版画に挑戦しました。
一発勝負で作りました。

版画に表れる朴訥な味わいが好きです。白黒世界が作り出す奥深さが魅力的だと思い、単色刷りにしました。

暗闇の中で撮影した自撮り写真を基にしています。よく見ると、髪の毛をつけ足して描いていることが分かります。

描くとなると、描いているうちに自分を美化するか逆に卑下した絵になりそうだと思い、版画にしました。こうすることで、偽った自分や自分目線の自分が削られ、ありのままの自分が現れることを期待したのですが、思いのほか意思が強い女性が浮き上がり驚きました。



03

『主張』

笹原 翔太

パステル

「消極的な自己からの脱却」をテーマにし、顔をアップで描き、輪郭や頭部が枠に収まり切らないようにしました。

暖色を使い、陽だまりの中にいるような明るさを作り、自分の個性である柔らかい雰囲気を作品に投影しました。

美術の授業を受けてから、普段道を歩いていても、自然や建物、人の顔などをよく観察するようになりました。人物デッサンで、モデルを集中して観察した際に、「普段いかに何となく人や物の形を見ていたということ」に気づいたからです。

よく観察すると、記憶に強く残り、俳優にとって必要な想像力の助けになると思いました。



04

『半分』

米山 千陽

油性ボールペン、アルコールマーカー

自分を構成しているものも含めて、自画像ということにしました。左半分が好きなもの、右半分が嫌いなもの、真ん中にいるのが私です。

絵を描くのが好きです。衝動に任せて、というよりも、形あるものの輪郭をなぞるように、自分の手で形にするのが好きです。表現と、現実の、真ん中にいるのが、今の私です。


05

『今宵、月が見えず』

越後 静月

アクリル絵の具、色画用紙、色鉛筆、クレヨン、スパンコール

人間には二つの顔がある。それが化け物でもあり、獣でもあり、月のように目には見えにくいものだと思った。

ひとつに囚われず色を重ね、自分の本質を隠すためにアクリルの大胆なタッチ、幻想的な色調、スパンコールを使い、形にはまりたくないという自身の衝動を表現しました。

色を重ねること、自分の思うまま自分自身を使って表現するのは難しいと思いました。

やはり第三者の目を気にしてしまう、だからこそ、この目を取り入れつつ、自分の力にするにはどうするべきか、そしてそれを役者としてどう生かしていくか考えさせられました。

客観的に自分を知ることができるからこそ、自分は今何に立ち向かって何をしたいのか再認識できました。

色を多く使うからこそ、自分の纏う色、感じている世界が見えた気がする。


06

『夜更けの天井』

新田 周子

クレヨン、色鉛筆

眠れない夜にベッドに横たわりながら、手を暗闇にかざして考え事をすることがあります。
このひとりの時間が一番「わたし」らしいのかなと思い、その時の表情や考えていること、見える景色を思い出しながら描きました。

「自画像」というテーマのみが与えられ、画材も書き方も自由。絵に苦手意識を持っていましたが、これまで受けてきた美術の授業とは違い、「絵を描くことの自由と悦び」を感じた時間でした。自己を見つめ、それを湧き上がる衝動のままスケッチする時間は非常に楽しく、また言葉にできない部分の「わたし」とコミュニケーションをとる方法を1つ手に入れたように思います。



07

『私の心』

足立 浩大

マーブリング

自分の身体から自分の心を覗いてみた様子を表現しました。
情熱的な部分や闇を抱えている部分など、自分が抱えているものを見つめ、それをどんな色や形で表現すればいいのかを考えながら制作に取り組みました。また、マーブリングの位置についても、どういう意図でそこに配置したのか想像しながら見ていただけると嬉しいです。

私は自分の顔を基にした自画像を描こうとしていましたが、納得のいく作品が出来上がらず悩んでいました。その時に、美術の講師である本多さんが「抽象的に描いてもいいんだよ」と言ってくださったことがこの作品を制作するきっかけになりました。

描き方に制限を設けず、自由に作品を創作する楽しみをこの授業で感じることができ、非常に有意義な時間でした。



08

『小人』

都築 亮介

パステル

自分を包む香り。
自分の好きな香水の香りや花からイメージされる色を背景に用い、グラデーションで表現しました。
そして、仕上げにその香水を噴霧しました。匂いは飛んでしまいますが、自分のこだわりです。ありのままの自分を描くために素直に自分の自画像を描きました!

絵を描くということが苦手だったので、高校生まで美術の授業は自分にとっては苦痛でしたが、研修所の美術の授業は自分の好きなように、自分を表現するためのひとつの方法に「絵」もあるという雰囲気なので、自分らしく描けました。絵は下手ですが、美術の時間は好きになりました!絵を描く事にも抵抗がなくなったので、とても良い時間でした!



09

『抑制と解放』

藤原 弥生

水彩絵の具、クレヨン、蛍光ペン


紙は見ずに、鏡に映った自分の顔だけを見ながら描きました。利き手でない方でペンを持ったり、描き始めたら終わるまで紙から画材を離さないようにするなどのルールを設けて描くことで、線がコントロールされず、毎回異なる自由な線が現れ、自画像の表情が多種多様になりました。全ての表情が "自分" なのだと思います。
この作品を制作するにあたり、色々な画材や手法、そして色の組み合わせを試しました。画材や色を変えると、毎回同じ自分の顔を描いていても全く異なる雰囲気になり、その都度異なる成果を見るのがとても楽しかったです。何枚描いても飽きませんでした。今回は沢山の試し描きの後、これだ!と思うものを3枚選びました。


10

『わたしを覗いたら』

岸 朱紗

コンテ、絵の具、鉛筆


下書きせず、思いのままに描き進めました。ところどころ、コンテや鉛筆が掠れた跡がありますが、それも含めて"自画像"だなと思います。猫は私の家で飼っている猫で、私が描く絵にはだいたい登場します。幼少期の記憶は今の自分の核であるような気がします。
自画像は、前回の授業に描いていたものを続きから描こうと思うと、全く納得のいかないものになっていました。その日その時の自分にしかわからない自分があらわれて、とても面白いと思いました。これから定期的に自画像を描きたいと思います。



11
『はらっぱ、ラムネ、ゆ、わたし』

小河 智裕

パステル


自分の好きなものを考えたときにパッと思い浮かんだのが、草むらと、それから銭湯の湯上りに飲むラムネでした。
いくつになっても、私が本当に求めるものは変わらなくて、そこには心がキューっとなる懐かしさと、暖かい光があります。そういうものを少しでも描けたらと思い、作りました。絵を描くということに対する苦手意識が、いつの間にか私の中にあって、「おれなんか絵を描いたって、、、」と思う自分がどこかにいました。それは今も少しそうだけれど、この授業を通して、絵を描いて楽しい!!という気持ちを、久々に感じた気がします。以前読んだ岡本太郎さんの『今日の芸術』を思い返しながら取り組んだ授業でした。


12

『見て、観られて』

松尾 諒

水彩絵の具


自分の消極的な部分と、積極的な部分を自然の中に織り交ぜて描きたいと思い、この作品を描きました。様々な画材を試した結果、水彩絵の具が自然の流れや、目の力強さなどを上手く描き出せたので採用しました。私は俳優としてお客様から観ていただくこと、そして自分を見つめ続けることを想い、このタイトルに決めました。
自画像を描くために、自分の顔を見つめ続け、それをスケッチブックに描き出す過程で、何度もこっぱずかしくなりました。そのこっぱずかしい感情が初めて演じるということに触れた時とよく似ていて、これを絵に残すことも、舞台を上演するのと同じように感じて、新鮮に描くことができました。



13

『実 い』

伊海 実紗

水彩絵の具、筆ペン、油性ペン


私は、舞妓さん、芸妓さんが好きです。

凛として、美しく、芸に対して真摯である。それが、私の理想の像なのかもしれません。

そして私は常に上を目指したいです。そんな思いも全て込めて、この作品を描きました。想いも夢もいつか実を結ぶと信じているから。

私というひとりの人間からこの作品ができました。自画像という観点から、自分と向き合うのが本当に楽しかったです。

私を構成する要素はたくさんあり、可能性として眠っている。

私はこれからもその要素を掘り起こしていくのだと思います。

そんな掘り起こした私の願いをみていただき、ありがとうございます。



14

『KAZUKI』

橋本 一期

絵の具、クレヨン


今の自分のありのままが出せれば、この作品は成功だと思い、泣いているのか笑っているのか分からない顔にしました。また、一切頭で考えず、自分の手指の感覚の思うままに描き進めていきました。
自分が自分を描くにあたって、様々な手段があったのですが、あまりそこに捉われずに描くことができました。今、この筆を使いたいからこれで描く。何枚も全く違うものを描いたので、その中では一番顔になってるものを選びました。



15

『め』

宮津 侑生

パステル


目を見てください。それだけで、人間は、少なくとも僕のことは、わかると思います。マスクで目しか見えないご時世ですが、目は見えています。
自画像と聞いて初めは写実的なものを想像しましたが、表現はどこまでも自由で、とても楽しい時間でした。ただ、浮かんだアイディアを無駄にしないような技術力が、何につけても大事だと思いました。



16
『自画像』

若泉 杏佳

色鉛筆、水彩絵の具、ボールペン


以前撮った宣材写真を元に描きました。自分の好きな色、自分のテンションが上がる色を背景にし、私の好きな芍薬の花も咲かせました。「立てば芍薬」と言われるように、美しく立てる女性になりたいと思います。
絵を描くということに、私はかなり苦手意識があったのですが、講師の丁寧な指導のおかげで作品を完成させることができました。そして、「色鉛筆で色をつけるときはこうするんだ!」と色鉛筆の可能性を感じ、絵を描くことが少し楽しくなりました。