28:依頼受理されるんでしょうか?
ひとしきり構い倒され、やっと解放されて前を見ると、村長達に温かく見守られていたのが分かり、羞恥心で顔が赤くなりそうで俯いてしまう。ただ、彼らの目の奥に悲しみも見て取れて、苦しくもなった。
「仲がいいですな」
「あぁ、当然だ。私の可愛い子供達だからな」
「いいことですな。なら、余計にこんな危険な村から即刻出ていった方が良い。裏手の出口へご案内しましょう」
村長のスジンさん達が立ち上がろうとすると、カーナさんが待ったをかけた。
村長達は困惑しながら座り直したが、あまり時間が無いのか焦っているように感じる。
「どうかしたかの?盗賊達を引き止められる時間もあまり残されておらん。できる限り早くここから逃げて距離をかせぐのが上策と考えるがの」
「そうだな。盗賊から逃げるならな」
「なっ!もしや、盗賊達に捕まることを選択するつもりですか!私達のことを考えてなら、止めてください!」
「そうだ!儂らのことは気にせんでええ!子供ん事だけを考えたらええんだ!」
「んだ!儂らなら大丈夫だど言っだでねぇが!」
口々にこの村から逃がそうと必死に声をかけてくる。
その表情は真剣で私達を逃がそうとする必死さが伝わってくる。その行動に裏があるようには見えなかった。
カーナさんもそれが分かっているからか、苦笑しながら1枚の用紙を胸元から取り出して村長さん達の前に出した。
「依頼しないか?」
「依頼?」
「そうだ。私はAランク冒険者だ。ギルドから緊急依頼用紙を臨時発行できる権利を得ている。もし、そちらが依頼を望むなら、クエストとして受けることが出来る。これは善意じゃないぞ。利害関係の一致からの申し出だ」
カーナさんが取り出したのは、Aランク以上の冒険者で、一定以上の実績があり、人柄などの審査をクリアしたごく一部の冒険者のみが持てるギルド認定の用紙だ。
忘れそうになるが、カーナさんはAランク冒険者でしたね。
王都の冒険者ギルド受付のエルサさんとも仲が良さそうだったが、まさかギルド認定用紙を持てるほどの冒険者だったなんて·····ビックリだわ。
カーナさんと一緒に過ごして信頼に値する人物であるのは分かるし、実力もある。字名が付くほどの冒険者みたいですし、持っていておかしくはないが·····何故だろう。
本気で驚いている私がいる。
この用紙について、皆知っているが見たことがあるものは殆どいない。持っている冒険者も少なく、使うことも殆どないからだ。
この用紙の効果はギルドのクエスト依頼と同じ効力を持つ魔法用紙で作られている。ちょっとやそっとで破れる紙ではない特殊用紙で、詐称することは不可能となるよう付与魔法が施されている。
また、持ち主が依頼として受理した場合、正式なクエストとしてギルド内に報告があがるのだ。つまり、遠く離れたこの場で依頼内容が受理されても、ギルドに情報が伝わるということ。
それは、この村で起きている不可思議な人攫い内容だったり、盗賊達の暴挙もギルドの知るところとなり、私達がクエストに失敗したとしても、村への助けが来る可能性が高くなるということだ。
とてもいい申し出だと思うが、村長達は皆一様に渋い顔をしている。
クエスト依頼をしたら生じる依頼達成報酬について悩んでいるのかしら?
確かに盗賊達から搾取されて払える報酬が今は無いのかもしれないが、やむを得ない場合は冒険者の許可があれば分割での支払いでも大丈夫だと聞いていたが·····それではダメなのかしら?
カーナさんなら許可しそうだけど、この状況で話を出したのだから報酬についても織り込み済みだと思うが·····
しかし、村長達は報酬ではなく別のことで渋い顔をしていたようだ。
「利害の一致じゃと?儂らの利害しかないような気がしますがのぉ·····」
「ん?そんなことないぞ?奴らが子供達を攫った状況は聞いたが、やり方がわからん。そんなものを放置して私の可愛い子達に被害が及んだら··········殺す」
ドスの効いた物騒な言葉が聞こえた気がしたが、気のせいだと聞かなかったことにしたかったが、真正面からカーナさんの顔を見て話していた面々は顔を青ざめさせている。
私は未だにカーナさんの膝の上に座っているので、カーナさんの顔は見えないが、村長達の顔を見てカーナさんが、余程凶悪な顔をしているのが容易に想像できた。
多分、私達に被害が生じてしまった所を想像したのだろう。そんな反応をしてくれるほど、大切にされているのが嬉しい半面、目の前で殺気と凶悪な顔に晒されている村長達が可哀想で、私のお腹に回っているカーナさんの腕を落ち着いてとポンポンと叩いた。
よっぽど辛い想像だったのか、私の肩に頭を置いてグリグリと押し付けてくるので、頭をポンポンと撫でて「大丈夫だよ。私はここにいるでしょ?」と優しく声をかけると「うん·····キリアとコハクは?」軽く頷きながら顔を上げて、キリアさんとコハクを見ている。
「はぁ、ここにいるだろ」
「わん!」
溜息をつきながらも、優しい目をしているのが分かる。コハクは嬉しそうに返事をしている。嬉しそうに笑うカーナさんに連られて、心が温かくなる。
私はこの温かい人達が好きだと自然と思うことが出来た。
「·····確かに、儂らの村だけに治まらないかもしれませんな。正直、貴方たちを巻き込むのは忍びないのじゃが·····皆も良いか」
「あぁ。不甲斐ないが、儂らでは奴らをどうすっこども出来ねぇ」
「そうですね。自分達の子供を助けるごとも·····できない·····ですから」
スヨンさんが俯きながら声を絞り出して村長に同意し、頭を下げてきた。皆それに合わせるように頭を下げてくる。
「すまん!儂らでは、現状を打開することが出来んのじゃ。こんな危険に巻き込んでしまい申し訳ないが、儂らにできることはできる限りする!どうか盗賊の討伐依頼を受けて下さらんか?」
「「「「「お願いします!」」」」」
「よし!きた!キリア行くぞっ!」
「はぁ、カーナ。行く前にプランを建てる必要があるだろ。それに、依頼内容と報酬の確認と依頼用紙の作成が必要だ」
村長達の依頼されて直ぐに私を抱き上げて立ち上がろうとするカーナさんに待ったがかかる。
溜息をつきながらも正論で暴走しそうなカーナさんを抑えると、村長達と依頼内容と報酬について話し合い依頼用紙の作成にあたったキリアさんの手馴れた感からよくある事のようだ。
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依頼内容 : 盗賊の討伐と誘拐された子供の生死確認
スルン村に盗賊の被害あり。
被害内容 : 12歳以下の村の子供5人の誘拐、金品や食料の強奪、村への介入支配、武器の調達整備を強要など
村人たちへの死へ直轄する暴力行為はなし。
婦女暴行なし。
子供の誘拐は今から3ヶ月前、生死不明。
子供の誘拐後より盗賊からの支配が開始させれている。
報酬 : 金10枚、ブルーベル3本
*クエスト失敗時はブルーベル1本のみ報酬とする。
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上記内容でお互いに納得して依頼用紙に記入し依頼受理となった。
盗賊の討伐依頼の報酬は本来その規模や罪の重さで決まる。今回、分かっているだけで20人はいる。村人への殺害行為などは無いが、子供の誘拐と他の罪も侵しているためその分報酬が加算される。
20人規模なら金20枚が妥当だ。そこから罪の重さを加算し、本来なら金35枚くらいにはなるかと思われる。
だから、報酬の話をした時に一悶着あった。村長達が報酬が少なすぎると難を示したのだ·····村長達が。
私達が難を示すなら分かるが、報酬を払う側が報酬が少ないと難を示すとは思ってもいなかったため、キリアさんも困っていた。
村長達は、危険な依頼に対する正当な報酬を支払うことを望み、私達はそこまでの報酬を望まなかった。
「報酬は正当なものでなくてはならない。1つでも事例を作ってしまえば、将来に禍根を残すこととなるのでな。儂らはそんな禍根を残したくないのじゃよ」
と言われてしまえば、こちらも強く出ることは出来ず。だからといって、正当な報酬を払うことになれば、この村は破産する。分割払いにしても支払い完了までどれだけの年月がかかるか·····。
必死に話し合いをして、この村の近くの森からブルーベルが採取できることが分かり、報酬に組み込むことで金10枚で納得してもらった。
ブルーベルは別名《妖精の花》と呼ばれており、希少な植物である。特級ポーションなどを作る時に必要となってくる植物で簡単に手に入るものでは無い。
生息地は不明で、見つけても多くは生えていないのだ。そして、採取できるものが少なすぎるのも希少とされる所以でもある。
冒険者なら森に入った時やダンジョンと呼ばれるところでブルーベルを時々見かけることはあるのだ。ただ、採取が出来ない。
妖精の花と呼ばれるのは一重に妖精が好む花であるだけでなく、花が採取を許した者にしか採取できないところにもあるのだ。
無理に採取しても枯れて塵となり散ってしまう。
晴天の空を思わせる天色のベル型の花は美しく見る人の心を癒す効果もあると言われている高貴な花なのである。
なんとその花をスヨンさんは採取出来るというのだ。
知られると面倒なことになるのは分かっているが、村のためと報酬にと話してくれたのだ。
キリアさんは、報酬に入れることを了承したが、ブルーベルの採取については誰が採取したかは秘匿するとし、誰かに聞かれた場合は私達が採取したことにするよう念を押して、渋る村長達を頷かせていた。
信頼出来るギルド長には報告が必要となるため伝えるがその他の人達には伝えないと村長達に説明しており、村長達の緊張が少しだけ緩慢したのが分かった。
村長達も怖かったのだろう。
希少な植物であるブルーベルが生息しているだけでなく、そのブルーベルを採取できる者がいるのだ。それもこんな辺鄙な村のご老人だ。話が広まれば面倒なもの達が集まるやもしれない。その時、武力も権力もない村人達では抵抗すること難しいだろう。
盗賊より厄介な者達が来る恐れもある。それほどにブルーベルの採取者は希少なのだ。
本当に人というのは厄介な生き物だ。
この村の人達のような善人もいれば、盗賊やあの貴族達のような害悪になる者もいる。
見た目では判別つけられず、面倒なことだ。
一目で判別つけられたら、信用出来るかもしれないのに·····いや、無理か·····。
キリアさんが村長達と話し合ってある間、私はカーナさんの膝上で大人しく座って、話を聞いていた。
カーナさんは、飽きてしまったのか、コハクを撫でながらコハクのフワフワモフモフを堪能していた。
コハクは特に反応を示さずに私の膝に顎を乗せて目を瞑っている。
あの緊急依頼用紙ってカーナさんのよね?
依頼の内容の詰め合わせをキリアさんと一緒にしなくていいのかしら?
なんかコハクのモフモフのを堪能してて話を聞いてなさそうだけど·····
チラッとカーナさんを見ると目が合った。
ニカッと笑って私の頭を撫でながら「大丈夫だ。あぁいう細かいことはキリアの方が向いてるんだ!」と自慢気に言っており、私は頷くしかなかった。
あぁ、いつもなのね。
あの用紙をカーナさんが持てたのもキリアさんが一緒だからってのも大きい気がしてきたわ。
キリアさんは本当にしっかり者のお母さんみたいだわ。
そうするとカーナさんはお姉ちゃん?いえ、お兄ちゃんかしら?
あら、なんかしっくりくるわ!
なんて思ってたら、話し合いが終わったキリアさんがこちらに戻ってきた。
とてもとっても冷たい目をして笑いかけながら·····
「シエル」
「はい!ごめんなさい!」
名前を呼ばれた瞬間、速攻で謝った。
だって、怖かったんだもん!
「が、頑張った!褒めていいと思う!」
カーナ「できるんなら、最初からやっておけよ(´д`)」
「いや!お仕事休みだったの!だから書けたんだもん!いつもサボってるみたいに言わないで(´;ω;`)」
カーナ「いや、サボってるだろ!この間もコメント見て1人でニヤニヤしてただろ(*`・ω・´)」
「いやぁぁぁぁ!なんてとこ見てるのよ!てか、言わないで!めっちゃ恥ずかしいぃぃいい(´∩ω∩`)」
シエル「ちゃんと、やろ?」
「そんなっ!シエルちゃんまで!泣くぞっ!」
キリア「まぁ、頑張って真面目にやれ」
「キリアまで!うぅー、じゃあ!応援して!そしたら頑張れると思う⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝応援!応援!応援!」
キリア「いや、調子乗るな」
「そんなっ!いいもん!シエルとコハクに頼むもん!シエルちゃん!コハクちゃん!応援して下さい!m(_ _)m」
カーナ「土下座するほどか?飢えすぎだろ」
シエル「·····頑張って」
コハク「·····わふん」
「ありがとう° ✧ (*´ `*) ✧ °めっちゃ頑張れる気がする!フー☆°。⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝明日も頑張ってアップするぞっ!」
皆さん!
お久しぶりです!
いつもコメントやブックマークありがとうございます⸜(* ॑꒳ ॑* )
誤字脱字の修正も本当にありがとうございます!
めっちゃあって恥ずかしいです(´∩ω∩`*)
もっと文章能力あげられるよう頑張りますね!
これからもどうぞよろしくお願いします° ✧ (*´ `*) ✧ °