▼行間 ▼メニューバー
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
28/67

27:盗賊達の目的はなんなのでしょうか?


村長に初めてあった部屋に通された。

そこには既に村長のスジンさんと村の働き手の代表だと思われる男達3人が座って待っていた。

私達が入ると待っていた男達が一斉に私を見てきたせいで、ビクッとしてしまった。


「おい、あんまり怖い顔して見るな。私の可愛い娘が怖がるだろっ!」


「おっと、そりゃすまねぇ」


「えっ!?大丈夫です!怖くないです」


村長の右手側に座っていた強面のがっしり系の男が、カーナさんに怒鳴られてシュンっとしてすぐに謝ってきた。

カーナさんは初対面の方々にもいつも通りの物言いをするものだからハラハラしてしまう。それにカーナさんの言葉に強面の男達が皆一斉にシュンっとするものだから慌ててフォローしてしまった。


確かに普通の子供や女性が見たら怖がるだろう顔だが、前世で王太子妃になる予定であった私は、軍の方々や冒険者ギルドのギルド長等、大柄で強面の方々と面識があり、国のため民のために癖の強い方々とも対等に渡りきることが当然の様に求められた環境下にいた。それに·····前世の責め苦を受けていた時はより過酷な状態で、そういう方々を相手にさせられた時もあったのだから、それらに比べたら目の前の男達など可愛いものだ。


「あぁ、ありがとよ。可愛いお嬢ちゃん」


涙が滲んでいる目を腕でひと拭いしながら笑いかけられて、男達が怒っていないようなので他の男達の様子を探ろうと周りを見ると、他の男達も涙目で、私が何かしたのか答えが分からなくて、カーナさん達を振り返り答えを求めた。

すると、私達をここまで誘導してくれた村長の息子さん(来る時に聞いたが、名前をスヨンさんと言うそうだ)が、優しく笑いながら首を振り「なんでもないですよ。ただ、シエルちゃんの言葉が嬉しかっただけです。彼らは村の子供達にさえ1度は泣かれてましたからね」と言って、手をパンッパンッと2回叩き皆の視線を集めると村長と強面のおじさんの間に座った。


「皆、話を始めましょう」


「そうじゃな。あまり時間も残されておらん。さてさて、旅の者よ。此度の件は息子から聞いた通りだ。さっさとこの村から出ていくことをオススメする。儂らでは、おぬしらを助けられんからな」


「だべ。こん村には若いもんもおるが、武器なんかは扱えんからなぁ」


「申し訳ねぇが、盗賊達を引き止めとる間にサッサと裏手から逃げんさい」


「ちっせぇお嬢ちゃんもいるんだ。はよ行った方がええ。なぁに、こん村のもん達は大丈夫だ!逃げたんなんて知らんかったって言い張るからな!大丈夫だ」


村長をはじめ部屋で待っていた男達は次々に、私達をここから逃がそうと声をかけてくる。しまいには、村の人達が嘘をついてまで私達を守ろうと動くとさえ言ってくる。その顔が、目が、嘘を言っていないことは分かった。本当に優しい人達なのだと改めて感じた。

人の本性が最もよく現れるのが命の危険に晒された時だ。この人達は、私達を逃がすことで殺される恐れもあるのに、私達を逃がそうとし、更には私達が悔やまないように配慮しているのか大丈夫だと力強く伝えてくる。大したことじゃないのだと·····本当に頭が下がる。


特権階級を得ている馬鹿どもに見せたいくらいだ。そして、この人達の爪の垢を煎じて樽一杯飲ませてやりたい。

特権階級を得ている意味を履き違えた唾棄すべき奴らを思い出して殺意が込み上げてくる。それとともに、今回の荒事を引き起こした盗賊という馬鹿どもにも殺意を覚えてしまう。

まだ、相手に会ってもおらず、どういう経緯と意図を持ってこのような愚かな行為に出たのか·····さぞ素晴らしい意図が有るのだろう。こんな優しい人達を苦しめたのだ、その素晴らしい意図を是非とも直接お聴きしたい。


「シエル」


耳元で名前を呼ばれ、ハッと周りを見たら、村長のスジンさんを含めた5人の男達が顔を青白くしていた。いつの間にか室内の温度が5度程度下がっているように感じた。どうやら過去のあれこれや今回の盗賊たちへの殺意が無意識に魔力に干渉してしまい室内温度を下げてしまったようだ。


やってしまった感が否めない状況に、誤魔化す為の行動を考えていると、今までカーナさんたちの後ろで大人しくしていたコハクがトットッと歩いてきて私の前でコロンと横になり顎を私の膝に乗せて、尻尾で私の頬や首を撫でてきた。

フワフワモフモフの毛が首に触り擽ったかったが、どう誤魔化そうと焦っていた私を助けてくれたことは容易に分かり、まだ子供のコハクに気を遣わせて申し訳なく思う反面、とても嬉しくて自然と笑ってしまう。


「ふふふ。コハク、擽ったいよ」


「わふっ!」


コハクは尻尾で私を擽るのが楽しいのか、両手で首をガードしても器用に隙間を狙って擽ってくる。

笑いが堪えられず、少しお腹が痛くなる。反撃しようとコハクの首元に手を入れて擽ると気持ちよさそうに目を細めて耳がピコピコと手の擽りに合わせて動いた。


「か、可愛いぃぃいぃぃ!」


コハクが可愛すぎて、「可愛い」と声に出しそうになった瞬間に後ろから衝撃とともに絶叫が襲ってくる。身まがえる前にカーナさんが治まらない絶叫のまま頬ずりされる。

ただ、抱きしめる力も頬ずりする力も痛くないよう力加減が絶妙にされている。キリアさんに怒られたのがまだ堪えているようだ。

されるがままになって、カーナさんの気持ちが落ち着くのを待とうかと思ったが、思いのほか頬ずりの上下運動が激しくて猫耳帽子が外れそうになったので、帽子を抑えようとカーナさんの腕の下から手を取り出そうと必死に抵抗した。


あっ!ちょ、ちょっと待って!帽子取れる!取れるからっ!手はカーナさんの腕で抑えられて抑えられないのよ!

あっ!!


パサッと虚しい音がして、床に猫耳帽子が落ちているのが見えた。そう、抵抗虚しく帽子は外れたのだ。

カーナさんはキリアさんに後ろから頭を引っぱたかれて、気づいたようで、あっ!やっちゃった!みたいな顔をしていた。


まだ、変身魔法が使えないから顔を覚えられるのは避けたくて、ずっと帽子を被って顔を晒さないようにしていたのに·····

そんな思いはカーナさんの暴走により儚く散った·····


カーナさんの腕の力が緩んだので、サッと帽子を拾って何事も無かったように帽子を被りながら、さり気なく周りを見ると時が止まっているかのように皆惚けていた。

両手で帽子を深く被り直しながら首を傾げると、ハッとしたように皆で顔を見合わせ、真剣にアイコンタクトをし始めた。


えっ?もしかして·····私の似顔絵とか出回っているの?

そんなっ!まだ、そこまで動けないと踏んでたのに·····

いやっ、待って!昨日、カノリアを出た時は何も言われなかったわ。それに、ここ3ヶ月は誰もここに来ていない。買い出しも1週間前に行ったと言っていたわ。なら、私の似顔絵が出回っていたとしても、この人達が知る機会はないわ·····

ねぇ、なんでそんな真剣な顔でアイコンタクトしているの?

わからないのが怖いわ。


ソワソワと考えているとカーナさんに頭を撫でられながら、顔を覗き込まれた。


「ごめんな。ちょっと興奮しちゃった」


テヘっと笑うカーナさんに少しだけイラッとして、プクッと頬を膨らませてしまう。

そんな私にカーナさんは嬉しそうに笑って膨らんだ頬を突っきながら「ごめん!許してぇ!」と言動が一致しない行動をしてくる。


ねぇ、本当に謝る気がありますか?

もう!頬を突っつかないで欲しいわ!

本当に子供の体は感情に連られて困るわ。私こんなに感情に引っぱられることなんてないはずですのに·····

うぅー。


自分の不甲斐なさに少し俯いてしまったら、先程までニコニコと嬉しそうに笑っていたカーナさんが慌てだして、必死に謝ってきた。

何やら誤解しているようだったので、「大丈夫だよ。カーナさんに怒ってるわけじゃないの。でも、頬っぺを突っつくの止めてね?」と声をかけるとデレっと顔を崩して優しくギュッと抱きしめてきた。


「カーナ、そろそろ落ち着け。話が進まないだろ」


横からため息と共にキリアさんに諭されて、現状を思い出して、ペコリと頭を下げて謝った。


「あっ、ごめんなさい」


「シエルが謝る必要は無いよ。暴走したカーナの責任だから」


横から冷気が流れてきているような気がしたが、気のせいだと思いたい。

そんなキリアさんの冷たい視線をものともせず、カーナさんは豪快に笑いながら謝った。


「すまん!シエルが可愛すぎて気持ちが高まりずきた! さっ!話の続きをしようか!!」


男達は居住まいを正し、スっと頭を下げると、村長のスジンさんがキリッとした声で話し始めた。


「こちらこそ、一方的に話してすまなかった。だが、娘さんの容姿を見て確信した。旅の者たちよ。すまんが即刻この村から·····盗賊達から逃げてくださらんか」


「なぜだ?」


「あの盗賊達は、子供達を攫ったあとに求めたのは金品や食料、武器の調達や手入れなどで、何故か女達を攫うことも求めることもない。要求してくる量も儂らが納税して普通に暮らせるほどには残しておる。まるで、何か別の意図があるようで不気味だったのだが·····今回のあヤツらからの要求で明らかになった。盗賊達は貴方たちを要求してきておる。だか、恐らく奴らの狙いはその子だろう。·····はぁ、儂らは罠として利用されているようじゃ」


スジンさんは話しながら、私に申し訳なさそうな視線を向けてきた。

どうやら盗賊達の狙いは私のようだ。


盗賊達の本当の狙いは分からないが、子供を必要としているようだ。なら私が囮となり、奴らのアジトまで本人達に誘導してもらった方が良いのかもしれない。


大体の方角がわかってもそこから探すとなったら大変だもの。それに囮なら今世で1度経験しているから、用意する物とか必要な物は大体予想がつくわ。

それに狙いが私なら直ぐに殺されるようなことは無いでしょう。わざわざ、面倒なことして子供達を生きたまま攫ったのだから可能性は低いわ。

まぁ、油断は禁物ですからありとあらゆることを想定して容姿する必要があるわね。

スヨンさんが把握していた人数が盗賊の数とするのは危険ね。アジトから出てない者もいるかもしれないし、他の仕事をしていて村に来てない者もいるかもしれない。

多めに見積もっておく必要があるわ。アジトに行ったら正確な人数を把握しなきゃね。1人でも逃がしたら、この村の人達に被害が及ぶもの。これ以上、辛い思いわして欲しくないわ。


次にどう動くか作戦を考えていると、カーナさんがギュッと抱きしめてきた。

どうしたのかと振り返ろうとすると私の肩に額を乗せて来て、カーナさんの腕と頭で固定された私の体は動けなかった。


「シエル。·····約束は覚えてる?」


小さな囁きで、注意を向けていなければ聴き逃してしまうところだった。カーナさんに視線を向けるが顔を上げてくれないので顔は見えなかった。それでも、抱きしめてくるカーナさんの腕が少し震えており、ギュッと私が痛くない程度に強く抱きしめてきて、見えなくても悲しんでいるのが分かり、カーナさんの頭をポンポンと撫でて頬を寄せた。


約束·····あれは約束として成立したのかしら?

あの時、私は頷けなかったけれど、カーナさんの中では既に約束したことになっているようだ。

優しい人だわ。

今までも、私の我儘に振り回されているのに·····


『何かしたいなら私達に願ってくれ!必ず助けになるから!』


あの時と同じ顔をしているのかしら?

嫌だわ。あんな顔して欲しくないの。カーナさんにはいつもの輝く笑顔でいて欲しいし、キリアさんもコハクもそんな寂しそうな顔をして欲しくないのよ。


「カーナさん、キリアさん、コハク。·····私のお願い聞いてくれる?」


バッと顔を上げたカーナさんが輝く笑顔で私に頬ずりをしてきて、キリアさんが私の頭を軽く撫でてくる。コハクも尻尾で私の腕をポンポンとリズム良く撫でてきた。


「シエル。お願いの内容で聞くか聞かないか考えるよ」


キリアさんの一言で私の考えていたプランは全て却下されるのが分かった。

チラッとキリアさんを見ると目が笑っていなかった。


「そうだな!とりあえず、シエルを囮に使う作戦は全て却下だ!」


キリアさんが却下する前にカーナさんの言葉で私のプランは全て儚く散った。


「そんなっ!私が囮になるのが1番効率がいいのに!」


「ダメだ!!·····シエル、お願いだ」


「うぅー。分かった。分かったから、そんな悲しそうな顔しないで!」


絶対分かってやってるわ!私がカーナさん悲しそうな顔が苦手なの分かって、やってるとしか思えないわ。

でも、あんな輝く笑顔で嬉しそうにされたら、憎めないのよね。


村長達を放ったらかしにして、私の言葉に満足気なカーナさんと優しい目に戻ったキリアさん、嬉しそうなコハクに囲まれて、構い倒された。



「はぁ。最近、カーナさんの行動が計算されたものなんじゃないかと考えてしまうわ(´・ω・`)」


「いや、あれは計算じゃなく、学習しただけだと思うぞ( - ̀ω -́ )✧」


「学習?」


「そう!あの行動するとシエルちゃんが喜ぶとか、こうするとシエルちゃんが頭撫でてくれるとか、計画してるってより、学習して本能のまま行動しているんだとおもうよ!·····キリアだったら計画だって断言できるけどね笑」


「何かな?」


「ヒエッ! な、なんでもないよ?なんでキリアちゃんここにいるの?」


「·····シエルを迎えにきたんだ」


「そうなんだー。(本当にママみたいだなぁ)」


「ちょっ、待って!!な、なんで顔掴むの?いやいやいや、待って!話せば分かる!痛だっ!いやぁぁぁぁあぁぁ!゜(゜´Д`゜)゜。」


「キリアさん!お迎えに来てくれて、ありがとう⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝」


「行くか」


「うん!あっ、さようなら(´∀`*)ノシ」


「·····ねぇ、最近こんな扱い多くない?」



皆さん!こんにちは⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝

お元気ですか?

いつものコメント、ブックマークありがとうございます(*´∀`*)

嬉しくてニマニマしながら読んでます(*´꒳`*)

これからもどうぞよろしくお願いします☆°。⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。