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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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30:あれは人なのでしょうか?

今回の話には胸糞発言やグロい?感じの表現が出てきます。

苦手な方はUターンを!


気持ち悪い。

奴らの纏わりつくような視線が、声が、息遣いが、感情が·····全てが気持ち悪い。

あぁ、まるであの時のようだわ。

あの時は、魔法を封じられ、身体も抵抗できないよう拘束されていたが·····今、私を縛るものはない。

気持ち悪い。全て凍らせて砕いて終わらせてもいいかしら?

大丈夫。1人も残さず一瞬で凍らせるわ。

あの唾棄すべき奴らみたいに、苦しむのを見て喜ぶ趣味は無いもの。一瞬で·····


「シエル。大丈夫だよ」


ギュッと抱きしめられて、耳元に寄せられた口から名前を呼ばれた瞬間、さっきまで纏わりついていた真っ黒な何かが霧散した。

頭がスッキリし、今の状況を思い出すとカーナさんの腕の中で大人しく寝たふりを継続した。


なんだったのかしら?

とっても気持ち悪い感じがして、察知出来ている全ての盗賊達を破棄することしか考えられなくなっていたわ。

カーナさんに声をかけられなかったら·····計画が私のせいでダメになるところだった。


「おいおいおい!すっげーいい女がいるじゃねぇーかっ!どうしたんだよ!」


「うおっ!マジでいい女じゃねぇか!お頭に渡す前に味見しちゃダメか?」


「味見はダメだろぉ!殺されるぞっ!」


「おっ!なら、すぐ脱がして裸にして、お頭の所へ連れていくのはありだろ!」


「ヒュー!それいただき!脱げ!脱げ!」


焚き火のところで集まっていた、男達がカーナさんに気づき、ワラワラと集まり興奮しだした。しまいには、大の大人の男共が大声で『脱げコール』だ。なんと下品な連中だろう。

どんなに『脱げコール』をしてもシラっと無視し続けるカーナさんに痺れを切らして、私達を囲っている何人かがカーナさんに手を伸ばしてきた。


·····触った瞬間にジワジワ凍らせて殺してやる。


そんな思いを抱き隠蔽魔法をかけた魔法を準備していたのだが、行使することなく終わった。

カーナさんが伸びてくる男達の手を軽くバックステップを踏むことで、それら全てを回避したからだ。

男達はカーナさんの軽い動きについてこれず、手を伸ばした何人かはバランスを崩して倒れてしまった。


「何が起きた!」


「あのアマ!避けやがった!」


「クソっ!調子こいてんじゃねぇぞ!」


など口汚い言葉が羅列して飛び交っている。

先程、私を抱えて手が塞がっている状態のカーナさんに、多勢に無勢で手を出して、簡単に避けられてしまったのだ。カーナさんと男達の実力差があることくらい気づいても良いと思うが·····それに気づけない愚かな男達は、カーナさんを捕まえようと、躍起になって手を伸ばしてきた。しかし、カーナさんに手が届く前に男共は動きを止めた。一瞬で顔を青ざめさせ、冷や汗を流して、洞窟の方へ視線を向けて直立不動の姿勢をとった。


「オイっ!オマエら何騒いでやがる!」


洞窟から出てきたのは、他の男たちよりも一回りは大きい筋肉隆々の厳つい男だった。緑色の瞳に薄い金髪、髪型が肩まである髪を片側だけ刈り上げた奇抜な髪型をしている。服装も上半身はほぼ裸に、キンキラの悪趣味なネックレスや指輪と趣味が悪いと言わざるを得ないスタイルを堂々と身につけて大股で歩いてくる。


手に持っている鎖は奴隷用の首輪を着けた茶髪の女性に繋がっていた。

大男の大股に必死について行こうと走っていたが、大男の声にビクついて足が絡み転けてしまった。しかし、その事に気づいていないのか、大男は歩みを止めることもなく、また繋がっている鎖も緩めなかったので、女性は為す術なく引き摺られている。それにより首が締まるのか、気道を確保しようと泣きながら必死に首輪を掴んでいた。

あの細腕だ、そのまま首輪を掴み続けるのは難しいだろう。掴み続けられなければ、首が絞まり死んでしまう。

大男が恐ろしいだろうが、声を出して歩みを止めさせるのが助かる唯一の道だろうに、声を出さずに引き摺られている。

よく見ると舌がなくなっており、喋れなくされているのが分かった。


随分扱いが悪いようだ。

元は白かったと思われるワンピースは所々破れており、血もついている。食事も十分に与えられていないようで、体は細く、肌に艶はなくボロボロである。

あれでよく走れたものだと思うほどだった。


あれだけ騒いでいた男達は皆直立不動で、大男と視線を合わせないよう下を向いている状態だ。その中で1人大男に近づく者がいた。

私達をここまで誘導したあの少し細身の男だ。細身と言っても周りの男達に比べたらだが·····。


「おぉ!ヤヤグ!帰ってきていたか!」


「ただいま戻りました。ガルガ兄ぃ」


ヤヤグと呼ばれた少し細身の男が、ガルガ兄ぃと呼んだ大男の前で腕を交差し頭を下げる。まるで王に仕える騎士のような礼をする。

大男は、ガッハハと笑いながら「よく帰った!」と肩を叩いて喜んでいる。ヤヤグは大男のお気に入りの部下のようだ。


ヤヤグが、大男をガルガ兄ぃと呼んでいたということは、あの大男が盗賊の頭であるガルガと言うことか。·····自分の名前を盗賊の名前にするとは随分ナルシストのようだ。


「マジか。私でもアレはないって思うぞ」


「カーナ。しっ!」


カーナそんがボソッと小さく呟き、隣にいるキリアさんがすかさず肘で小突いて窘めている。私は、狸寝入り中で目が開けられないので、カーナさんのアレとは何なのか分からず気になった。


目を少しだけ開けていいかしら?

でも、寝ている振りに気づかれるのも良くないし·····後で教えてもらいましょう!

今は、計画通りに進めることが大切だわ。


カーナさんの言葉でソワソワしてしまったが、自分を律して寝たふりを続けた。


ガルガとヤヤグが機嫌良さげに話している。その間も他の男たちは微動だにせずに下を向いたままだ。


「ヤヤグ、女が足りねぇ。また1人動かなくなりやがった。脆すぎるだろ!」


「あれま!?もう動かなくなったんですか?本当に脆いですね。あと残ってるのは2人ですか·····」


「こいつも抱き心地がよくねぇ。もっと良いのはなかったのかよ!」


「彼らが持ってきた奴隷の中で良いものを選んだんですけどね。なにぶん、この国は奴隷禁制で取扱が面倒でどうしても運搬時に質が下がるんだそうですよ」


「ヤヤグ、理由は聞いてねぇ。この間の女冒険者みたいなのを捕まえてこいって言ってんだよ!あの女、冒険者してただけあって長く持ったからなぁ」


「ガルガ兄ぃ、こんな辺鄙な所に女冒険者がそうそう来るわけないですよ。ただ·····今日はガルガ兄ぃにお土産を持ってきたんですよ!」


「あ゛ぁ?土産だぁ?」


「えぇ、初めてあの村に旅人が訪れてくださったので、こちらにご招待したんですよ!母親と息子と娘の3人仲良し家族をね」


まるで日常会話のようにテンポよくご機嫌に胸糞悪い会話を繰り出していたが、いきなりガルガの機嫌が下がり足元で倒れている女性を足蹴にしながら不満を訴えだした。ヤヤグはガルガの訴えに同意しながらも理由を説明したが、ガルガの機嫌は更に下がるだけだった。ヤヤグは、そんな状態のガルガを怖がることなく、逆にニッコリ笑顔で嬉しそうにお土産を持ってきた報告をした。

お土産と言う言葉に少し機嫌を良くしたガルガが反応を示すと、ヤヤグはより一層嬉しそうに説明しながら、私達にゆっくり指先を向けてガルガに紹介をした。

ガルガが私達3人に舐めるような視線を這わせ、舌なめずりしながらニヤリとご機嫌に気味悪く笑った。


「いいねぇ。どれも美味そうな土産だ。気に入った!さすがヤヤグだ」


「ガルガ兄ぃにそう言って貰えると嬉しいですね」


ガルガがヤヤグの肩に手を置きながら、嬉しそうに私達を見て嗤う。未だ私達を舐めるように見ており、その目には残虐的な鈍い光も見てとれた。ガルガの視線がカーナさんの腕の中で狸寝入りをしているシエルを捉えると、何かを思い出したような顔をしてヤヤグを見て声をかけた。


「おっと!どれも美味そうだが、あの子供はアレの所に入れるしかねぇな」


「まぁ、檻はあそこしかないので、どちらにしてもアレと一緒ですけどね」


「そうだったな!さて、どちらにするか·····あの男も美味しそうだが、女が先だな!後で残りも可愛がってやるから大人しくしておけよ。あっ、こいつはもう要らねぇ。お前ら好きにしていいぞ!」


そう言うと、ガルガが持っていた鎖をなんの配慮もなくグイッと引き寄せて奴隷の女性を男達の方へ放った。

「あ゛ぁっ」と目から涙を口から涎を垂らしながら地面に倒れた。すぐさま土に汚れた顔を上げて周りを見回し、男達の数とその男達の欲望に塗れた目を見て、絶望と恐怖から失禁して気絶をしてしまった。


そんな女性に対し優しさなど持ち合わせていない男達は、主から貰えたご褒美に舌なめずりしながら、戸惑う様子もなく手を伸ばして迫っていった。

あれほど、頭のガルガを恐れ、青ざめ震えながら微動だにしなかった男達がご褒美を貰えたことで、気を大きくしたのか血色がよくなり、興奮しだしザワザワと煩くなってきた。


気持ち悪い。

この盗賊達が気持ち悪過ぎて、吐き気がする。

あぁ、そうだった。

人とはこういう者達が一定数いるんだった。

最近は、優しい人達に会うことが多すぎて失念していたわ。


ガルガとヤヤグが私達に近づいてこようとし、男達が奴隷の女性に手を伸ばしたその時、まるで断末魔のような叫び声が洞窟から聞こえてきた。


先程まで興奮しだしていた男達が怯えたように洞窟を見つめ、それぞれ武器に手を置いている。ヤヤグは冷めた目で、ガルガは苛立ちを隠そうとせずに洞窟を見つめて叫ぶ。


「チッ!おい!アレが起きたぞ!アイツらが近くにいるのにどうなってやがる」


「ガルガ兄ぃ。多分あの女がいないからですよ。アレはあの女を母親とかと勘違いしてるようですから」


ガルガが苛立ちながら怒鳴ると、ヤヤグが心底面倒そうに気絶している女性を睨みつける。


「はぁ?マジかよ。めんどくせぇなぁ!お前ら、その女をやるのは止めだ。ヤヤグ、その女とその子供2人を檻に入れておけ!そこの女は俺と一緒に来いっ!」


そう言うと、私を抱えているカーナさんの腕を無理やり掴み、引っ張ろうとした。

その手を凍らせて砕いてやろうとしたら、キリアさんにサッと抱きかかえられて未遂に終わった。

カーナさんは顔を俯けてガルガに逆らうことなく引き摺られるようについていく。ただ、俯いて見えない顔が凶悪に笑っているのに誰一人として気づく者はいなかった。


キリアさんに抱きかかえられなかったら、ガルガという男の指を凍らせて砕いて使い物にならないように出来たのに·····残念だと思っていたら、キリアさんに「もう少し待とうね」と小声で囁かれてしまった。どうやら、私がやろうとしたことに気づいてカーナさんの腕から私を素早く引き取ったようだ。


ガルガがカーナさんと共に洞窟の中へ消えると、ヤヤグが私達の方へ振り返り、チラッと女性の近くに未だ手を伸ばしていた男を一瞥すると指示を出し、キリアさんに軽く声をかけると洞窟内に向けて歩き始めた。


「·····というわけでお開きですよ。皆持ち場に戻りなさい。お前、その女を担いで一緒に来てもらいますよ。さっ、行きましょうか」


屈強なスキンヘッドの男が気絶している奴隷の女性を肩に担ぎ、私達の後ろをついてくる。しかし、男の顔色が悪い。

何をそんなに怖がっているのか?


洞窟内は結構広いようで、大人5人くらいなら余裕で横一列に並んで進める広さがある。洞窟に入って少し進むと4つの道に分かれており、その右端の道へ進んでいく。

先程、耳をつんざく様な絶叫と同じ声が聞こえてくる。まだ、叫んでいるようだが、初めの声よりは小さい。ただ、言葉にならない叫び声が洞窟内に反響して聞き続けていると耳が痛くなるほどだ。

先をゆくヤヤグは忌々しそうに耳を抑えながら、檻の前まで来ると檻を3度叩いた。


「うるさいですよ!今すぐ声を止めさせなさい!」


檻の中にいる誰かに支持しており、指示された方も必死に宥めているようだが、成果は芳しくないようだ。


「はぁ、その女をそこの水につけてサッサと起こしなさい!耳が痛い」


苛立ちながら、檻の前の湧き水を貯めている桶を指しながら女を担いでいる男へ指示を出す。

男は何も言わず、担いでいた女を床に下ろすと、髪を掴んで桶へ女性の顔を突っ込んだ。始めはなんの反応も無かったが、息が出来ないことで苦しみ目が覚めたようで、手と脚をばたつかせて抵抗を示した。

男は髪を掴んで無理やり桶から顔を引っ張りあげると、水が肺に入って咳き込む女性の髪を離して、サッサと檻から離れた位置に戻っていった。

髪を離されて支えをなくした女性は、床に額をつけて咳き込みながらも必死に息を整え、顔を上げてヤヤグを見た。

ヤヤグは女性を冷たく一瞥して、懐から檻の鍵を取り出すと扉を開けた。


「サッサとアレを黙らせなさい。出来なければ、男共のところへ戻しますよ。あぁ、貴方たちもここに入りなさい。ここでのルールは中にいるものにでも聞きなさい」


男達の元へ戻されるのを恐れた女性はサッと立ち上がり、よろけながらも何かへ駆け寄って宥め始めた。

ヤヤグは扉を開けたまま、檻に入るよう手で促し、キリアさんは私を抱いたまま大人しく女性に続いて檻の中へ入った。


叫び声が少しずつ治まり無くなったことを確認すると、ヤヤグはニッコリと嗤って、私達に手を振ると背を向けて来た道を戻っていった。


「せいぜい、母親が壊れずに戻ってくることを祈りなさい。まぁ、その後は貴方たちですけどね」


途中、顔だけこちらを振り返り、嗤いながら絶望させようと言葉を発する。

思うような反応が返ってこなかったのに対し、興味を無くしてそのまま振り返ることも無く道を戻っていった。







「シエル。もういいよ」


「ありがとう」


盗賊達が檻から離れ見えない位置に行ったのを確認すると、キリアさんが私に声をかけ、床にゆっくりと足から下ろしてくれた。

しっかり立ちながらキリアさんにお礼を言って、檻の奥の方へ視線を向ける。ずっと目を閉じていたことで暗闇に慣れた目は朧気に人を認識することが出来た。

檻の中には光源がなく、檻の近くにある道を照らすランプだけが光源となっていた。そのため、檻の奥はよく見えない。

気配察知で何人いるのかは分かるが、その人達の体の状態は把握出来なかった。


エプロンバックの裏地のスリットから小さなランプを取り出した。

一見しただけでは分からないが、エプロンバックの裏地にスリットが入っており、そのスリット内に魔法鞄とおなじ魔法を付加して結構な量の物が入るように細工をしていたのだ。

ランプに光を灯し檻の奥を照らした。


そこには気配察知で確認していた子供が5人と女性が2人、それと·····6歳くらいの子供みたいなナニカがいた。


皆さん!

こんばんは!

いつもコメントやブックマークありがとうございます⸜(* ॑꒳ ॑* )

いつも楽しみにしています!

次回も少しグロいのが続きます(´∩ω∩`*)

苦手な方ごめんなさいm(_ _)m

今後もよろしくお願いします!

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