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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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26: 子供達はどこに行ったのでしょうか?



真っ暗な部屋に1人の男が入ってくる。

男は静かに歩きながら、カーナさんの近くまで来ると手を伸ばしてきた。その手はカーナさんに触れる前に捕まれ、素早く拗られ背中に押さえつけられ布団の上に倒された。

驚く男は焦りながら「ま、待ってくれっ!」と小声で叫び、要件を伝えてきた。


「すまない。警戒させてしまって、火は点けんといてください。奴らに勘づかれたくないんです」


男は村長の隣にいた中年の男で村長の息子だった。

確か目が村長と似た穏やかなタレ目が印象的で他はパッと思い出せないくらい馴染みやすい顔というか、平凡な顔というか、嫌味のない顔の男だと記憶していた。

カーナさんから開放された男は拗ねられた手を摩りながらも、頭を下げてきた。


「すまない。どうしても君達を起こさなきゃいけんくなって、最初に母親のあなたから起こして事情を説明しようと思っとったんです」


「何かあったのか?」


「·····この村は今、盗賊達に逆らえん状況なんです。村の子供達が盗賊に捕まっているので·····。その盗賊が貴方達に目をつけてしまった。貴方達というか·····娘さんに·····。娘さんを連れてくるよう奴らから要求がありました。まだ、奴らは村に着いない今のうちにこの村から·····盗賊から逃げてください。·····もう·····子供を失う絶望を·····見たくねぇ」


頭を下げた状態のため顔は見えないが、その必死さは伝わってきた。額を床に擦りつけ、泣いているのが分かる。体が震え必死に怒りや絶望、悲しみなどが混在した気持ちを押さえ込もうとしているようだった。

最後の言葉はこの人の本音だろう。たぶん、この人も被害者の親の一人なんだろう。

村長とあった時に、お茶を出してくれたやせ細った女性はこの人の妻だとしたら·····どれだけ悔やんで苦しんで食事も喉を通らないくらい辛かったか。そんな妻を、村人達をずっと見ていたこの人が可哀想で、そんなことをしでかした盗賊達が憎く感じる。


民を見放した私がそんな感情を持つのは烏滸がましいのかもしれない。でも、こんなに苦しんでいる人を前に憤りを感じないほど落ちぶれてもいない。

この国から早く逃げなくては行けないのに、この村人達に何か出来ることはないかと考えてしまう。


「·····私達が逃げたら、手助けしたここの村人達は盗賊から報復を受けるだろ?いいのか?それに私の娘を奴らに渡すことでお前達の子供が返ってくるからもしれないだろ。それなのに、お前達は見ず知らずの私達を逃がすのか?」


いつものカーナさんらしくない問いかけに、男は顔を上げて何もかも諦めた涙で濡れた顔で弱々しく笑った。

暗がりでよく見えなかったが、暗さに目が慣れ男の顔をよく観察すると、この人も首元や手首などやせ細っており、顔色も悪いのが見て取れた。


「初めてじゃないんです。今までも色々な要求がありました。その要求を飲めば子供達を返してくれると·····でも·····帰ってきたことはないんです。期待して絶望することに·····私達は疲れてしまった」


「·····いつだ?」


「はっ?」


「だから、いつ子供達を連れ去られた?」


カーナさんが膝を着いた状態の男に視線を合わせ、真剣な顔で聞く。


「·····3ヶ月前·····です。·····分かっているんです。さ、3ヶ月も経ったら·····っ、もう、手遅れっだって·····わがっでいるがらっ、うぅっ·····ぐすっ·····」


限界だったのだろう、男は話しながら肩を震わせ、顔をクシャクシャにして額を床に着けて再び泣き出してしまった。

連れ去られてから3ヶ月、生きている保証も返ってくる保証も限りなく低い期間だ。生きて盗賊達のところにいたとしても、まともな精神状態を保てている可能性は低いし、五体満足である保証もない。

既に、奴隷として売られているか、お弄ばれて殺されていると考えるのが普通だ。

それにしても、何故子供達だけ攫われたの?


ある程度成長した子供は、食料になる木の実などを取りに行ったり、畑仕事や家畜の世話をするために村の囲いの外へ行くこともあるとは聞いた事があるが、必ずしも1人で行動することは少ないはずだ。

それに、1人でも子供がいなくなったら、その後は子供達だけで行動させることは控えるはずだ。

それとも、無事な子供たちは家の中に匿われているのか?

同じことを思ったのかカーナさんが男に聞いていた。


「·····泣きたい気持ちは分かる。私も子供達がいるからな。でも、今は答えろ。村の子供全員が1度に攫われたのか?」


「んぐっ、ずっ、そ、うです。んっ、あの日、真夜中に突然、子供達が·····村の外へ歩き出した。ぐすっ、年長の子が中心に歩けない小さな子や·····眠っている子を抱き上げて·····門番していた者達が気づいて·····止めようとしたけど、子供と思えない力で抵抗をされ·····村の外へ出してしまった。そして·····村の外で待っていた盗賊達の元へ行ってしまったんです。なんで·····うっ、なんで、あん、なごとに·····っ」


蹲って嗚咽をもらす男の声に、姿に·····胸が痛くなる。

なんで、この村人達がそんな辛い目に遭わなければ行けないのか。

この小さな村でなんの変わりもない日々の日常に幸せを感じていただろう、この人達がいきなりその幸せを奪われるなんて·····どれほど苦しんだか。

それでも、他人である私達に逃げるよう手を伸ばしてくれるなんて·····村の人達全員の考えでは無いかもしれないが、こうやって行動してくれるこの人が苦しむのは見ていたくない。


私にできること少ないかもしれない。いや、こんな非力な子供では足でまといにしかならないだろう。それでも·····この人達の苦しみが少しでも和らげたら·····


·····ねぇ、何を考えているのです?

私は今、追われている身なのですよ?

少しでも早くこの国から出て、安全を確保するのが最優先でしょう?

私を見捨てた国民に対してそんな気持ち·····いらないのよ。


誰かが囁くかのように耳に入ってきた声はとても甘美な響に聞こえた。

慌てて周りを見回すが誰も背後にはいない。

前世の私が囁いているのか、それとも私が心の奥底で思っている本心なのか·····


少し俯いているとキリアさんに抱き上げられて、胡座の上で座らされ後ろから頭を撫でられた。

あまりの突然の行動にビックリして振り返りキリアさんを見て、無表情の中に微苦笑を讃えて「あまり考えすぎるな」と言われた。


そんなに顔に出ていたのだろうか?

いや、顔には出てなかったはず·····

やはりキリアさんは私の考えていることが読み取れるのかしら?


頬を両手で揉み首を傾げながら、色々確認し始めているカーナさんと村長の息子さんを見たら、カーナさんが丁度私を見たところで目が合った。途端にカーナさんが蕩けるように目を細め笑いかけてきた。その目が、表情が、カーナさんの心を表しているかのようで先程のあの甘美な囁きで揺れた心が静まっていくのを感じた。


「シエル。ごめんな、少し出るのが遅くなるがいいか?」


少し申し訳なさそうに聞いてくるカーナさんに、自然と笑顔が溢れる。


「うん。大丈夫」


「そうか。シエルは優しい子だな」


そう言って頭を撫でられて、この返答が間違っていないと安心する。


私の心はいつからこんなに弱くなったのか。

あの時、どんな責苦をされても無実の罪を認めなかった私はどこに行ったのかしら?

そう·····そうよ、私は元来強欲だったはずよ。

この先の未来も目の前の欲も全てこの手で掴み取ろうと慢心してここまで来たのですから、あんな些細な甘言に心が揺れるなんて·····なんて愚かなの!

確かに、あれも私の本心で一面なのでしょう。

でも、目の前で苦しんでいるこの方々を見捨てられるほど、人でなしでも、無欲でもないのよ。

それに、今はカーナさんにキリアさん、コハクがいるもの。

まだ·····疑心はあるわ。晴れることは無いかもしれない。

それでも、それさえも受け入れ、欲のために突き進まなくては私ではないわ!


自身の心を見つめ返し、少しだけ視界が明るくなった気がした。



「それにしても、領兵による巡回は来ないのか?それとも来ても助けを求めなかったのか? だとしても村の雰囲気から何かあると疑ってもいいだろうに·····バカなのか?」


「いえ、領兵の方々が巡回されることは半年に1回程度で、納税と買い出しのために毎月領都に行くんですが·····盗賊の監視役が付いてきますし、荷物内の改めもされるので、手紙などで知らせることも叶わず·····領の端にあり、大きな街道が近くにひとつもない、辺鄙で小さな村などに来るものいない。情けない話、あなた達がこの3ヶ月で初めての客人なんだ」


カーナさんと話すことで少しずつ気持ちが落ち着いたのか、嗚咽混じりの声はなくなり、しっかりとした受け答えができるようになっていた。


「そうか。盗賊は全部で何人くらいか分かるか?」


「·····20はいる。この村に来る奴らの顔を覚えているから、把握しているだけでそれだけいます」


ここの村人達は、ただ嘆いて暮らしていた訳ではなかった。

村長を中心に働き盛りの男達が集まり、ひたすら情報収集を続けていたようで、大体の拠点の場所や構成人数、他の村へ被害がないことなどを把握していた。

詳細情報ではないが、軍等で働いていた訳でもない、今まで田畑を耕し作った作物で収入を得ていた村人達にしたら、大変な事だっただろう。

辛い中挫けず、前を向き続けたこの村の人達はとても強い人達なのだ。こんな素敵な人達の子供達が今も辛い目にあっているかもしれないなんて許せなかった。


カーナさんと話している男も門兵の方達、村長も嫌な感じはしなかった。カーナさん達の反応も踏まえても、この村人達は悪い人達ではないと判断できた。

だったら、得た情報を元に奴らを潰すだけだ。


隠蔽した察知魔法を行使した。

村の入口に門兵が2人、その先に盗賊らしき者達が5人いた。詳しくは分からないが、5人とも武装しているようで、槍らしき武器を装備しているのが2人、他の3人は剣を持っているようだ。


私の察知魔法では、他の者達を察知することはできなかった。

もう少し広範囲で察知魔法を行使できれば、奴らの拠点も分かっただろうに·····自分の未熟さが悔しく感じた。

そんな気持ちを察したのか、キリアさんが私の頭を撫でて後ろから顔を覗き込み小声で話しかけてきた。


「何人いた?」


「村の入口から少し離れた場所に武装した人が5人」


「そうか。シエルのおかげで敵の情報が詳しく聞けて良かったよ。ありがとう」


キリアさんの優しい声でお礼を言われて、先程まで落ち込んでいた気持ちが少し浮上した。

それまで大人しかったコハクも私の前で寝そべり、片足を私の足に軽く置き、フワフワの尻尾で私の頬を撫でてきた。

フワフワの毛が首に触り、くすぐったくて笑っていたら、いつの間にか話を終えたカーナさんに抱き上げられていた。


「もう!ずるいではないか!まぁ、可愛いから許すけどっ!今度は私も混ぜてくれ!」


「カーナさん、お話終わったんですか?」


「あぁ、これからも村長達とあって軽く話をするぞ。シエルは私のお膝で寝てていいからな!」


あっ、私の場所は決定なんですね。

キリアさん、大きなため息つかないで!私も同じ気持ちです。


カーナさんは余程先程の私達の光景が羨ましかったようで、そのあとの移動も私はカーナさんの腕の中で囲われていました。その間、キリアさんとコハクの目が終始呆れた様子だったのはしょうがないと思います。


「アップが遅くなり、申し訳ありませんm(_ _)m」


「おい、いい加減にしろよ!お前のせいで·····」


「ちょっ、ストップ!カーナ落ち着いて!その私の胸ぐら掴んでる手を離してっ!く、苦しいから!∑( ̄Д ̄;)」


「お前がアップするの遅いせいで、私とシエルのラブラブ親子生活を皆に伝えられないじゃないかっ!。゜(゜´ω`゜)゜。‬」


「えっ·····そこ? てか、カーナとシエルは親子じゃないじゃん!それなら、カーナとキリアのラブラブ親子生活じゃないの?」


「あ゛?怒」


「ちょ、待って!ご、ごめんなさい!キリアちゃん!謝るから!今にも殴ろうとしているその手を下げてぇぇぇえぇぇ(ノД`)」


「私·····ぐすっ(´•ω•̥`)」


「あぁ!シエルちゃん、泣かないで!シエルちゃんとカーナ達はとっても仲良し親子だよ!·····ちょっ、待って!なんで二人共、私を殴ろうとしてるの?本当、止めて!シエルちゃん!あの二人止めて!!ちょっ、痛っ!痛いって!シエルに見えないように小突くヤメテっ!」


「わふっ!( *¯ ꒳¯*)」


「コハク!フワフワ° ✧ (*´ `*) ✧ °素敵」


「ちょっ、コハクと和んでないで!本当に助けて!痛っ!」


「コハクだけ狡いぞ!私もシエルが大好きだぁ!」


「シエル、あんなの気にするなよ」


「ちょっ、酷くない?私作者なのに!ちょっと扱い雑じゃないっ?」


「シエルに酷いこと言う奴は·····とりあえず死んどけ´A`)⌒゜」


「酷いよォ(´;ω;`)謝ったのに」




皆さん!こんにちは!

本当にいつもアップお遅くてすみませんm(_ _)m

いつも皆さんのコメント、ブックマークに癒されています!

ちょっと、現実世界がバタバタしておりますが、皆さんお元気ですか?

私は元気です!

これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝

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