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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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24:ガイルたちは今·····(別視点


「·····嘘だろ?マジなのか·····。 なんてことしたんだ!誰が大変な目に遭うか分かってやってんのか?本当に勘弁してくれ!!」


シックな調度品で揃えられた隊長室でガイルが膝をつき絶望を色濃くうつした顔を両手で隠して吠える。それを机に左肘をつき楽しそうに目を細め、口角を上げた歳若い青年が見つめる。


「しょうがないだろ?ちょっと気になったんだもん」


アッシュグレーの髪を無造作に1つで縛り、目にかかるほどの前髪から愉快そうな気持ちを隠そうともしていない緑に金が混じったクリソベリルのような瞳が細められ、へらっと笑って軽口のように言う。


「っ! そもそもお前が手を出すなって言ったんだろっ!藪をつつくようなものだと!それなのにっ!!」


「だから、ごめんって。まさかこんなに早くピアスの細工に気づくなんて思わなかったんだ」


「·····で?あいつらは何処にいる?」


ガイルは目を瞑り軽く息を吐き目を開けた時には落ち着きを取り戻し、対処のために頭を動かしながら少しでも情報を得ようと目の前の年齢不詳の隊長グリムの表情、動作1つ見逃さないよう観察しながら質問をした──────────





今朝早くに西門より出都していたカーナ達を追いかけ、昨夜の礼と移動手段の軍馬を渡して別れ、直ぐに情報を集め精査しながらまとめていき組み立てた内容を元に隊長に報告をしたのだ。人魚達の関与の可能性や情報の漏洩などを報告しながらカーナ達のことも報告をしたところ、隊長よりこれ以上カーナ達に関わるなと忠告を受けたため、表向きの網を引きあげ日常へと戻り、部下と訓練(扱き)をしていたはずだった。なのに·····夕方近くに隊長に呼び出され嫌な予感がした。隊長の執務室に入室した俺の顔を見るや隊長はヘラっと笑い「やっちゃった」と左手で頭をかいたのだ。


そして、カーナ達に渡した軍馬のピアスに元々付与されている探知魔法に秘法魔法の追跡魔法を組み込み、これまた秘法魔法の隠蔽魔法で隠して付与していたこと、それらを駆使しカーナ達の動向を観察していたことを説明された。

昼過ぎに軍馬の歩みが止まり、昼休憩かと思ったら軍馬がカノリアへ帰ってくるのを確認。何かあったのか確認のため部下を使って調べさせているところだが、先程軍馬の回収が出来たようで、軍馬に傷もなく装飾品にも変化がないことが報告された。現在、回収した軍馬を連れて軍馬が放たれた場所まで向かっているとのこと。


それだけの情報で軍馬に付けたピアスの魔法がバレたと判断し、俺を呼び出したようだ。──────────





カーナ達と別れてから呼び出されるまでのことを思い出しながら一息ついて冷静になり、目の前の隊長に向き合う。

俺を呼び出した時点でこいつの頭はカーナ達の動向を予測し筋道を立て終わったということだろう。

カーナ達が何処にいるのか、どこへ向かっているのかを聞くと、一瞬目に真剣な光が掠めたが、直ぐにいつもと同じ愉快そうな光を湛えた目に戻り笑いかけてきた。


「サザリンヘ向かっているはずだよ」


「なぜそう考えた?サザリンヘ向かうなら南門から出ているはずだろ。わざわざ西門から出ていく必要は無いはずだ。西門から出ていったんだ、マリスへ向かっていると考えるのが妥当だろ?」


マリスはカノリアから西に位置した都市だ。

マリスはマルリナ聖国の信徒が多く住む都市で、この国で1番大きな聖堂がある都市として有名だ。マルリナ聖国へ出国する者は必ず巡礼も兼ねてマリスを訪れる。


隊長が言ったサザリンはリンザール国との国境近くにある都市だ。国境と言ってもリンザール国と我国の間には非常に険しい山脈と魔の森と言われる高ランクの魔物が蔓延る森があり、それらが国境としての役割を担っている。

サザリンは、魔の森目当ての冒険者や荒くれ者が多く暮らす都市で年中祭り騒ぎ、バカ騒ぎの都市だ。グランベリル辺境伯の領地であり、有能なグランベリル辺境伯が目を光らせていることで成り立っている都市とも言える。他の貴族では奴らを治めることは出来ないだろう。冒険者も荒くれ者も良くも悪くも単純で自分より強者でないと聞き分けが悪くなるのだから。

そんなサザリンはカノリアから南に位置する都市だ。


つまり、出都するべき方角が違うのだ。

西門から出たら遠回りをしなくては行けないし、道も狭く整備もされていないため悪路になる。南門から出ていれば大通りで整備もされている道を通れるのだ。

なのになぜ、わざわざ大変な道を選ぶ必要がある?

いや、本来はマリスへ向かっていたが、軍馬のピアスのせいで目的地を変更したのか?

だとしたら·····今度あいつらに会った時は地獄を見るな·····


死んだ魚のような目で未来の地獄を予想して遠くを見つめ、遺書などを考えていたら、グリムが軽く首を傾げながら理解し難いような顔で話しかけてきた。


「ん?何勘違いしてるんだ?あの子達は元々サザリンへ行くつもりで行動していたし、たぶんリンザール国に行く予定なんだと思うよ」


「はぁ?俺の話聞いてたか? だったらなんで西門から出ていったんだよ」


呆れる俺を見ながら机の端にあった書類を手に取り、ニコニコと笑って俺に渡してきた。


「あの子達は西門から出て迷いなく旧道を進んでいたんだよ。それにその書類を読めばガイルなら分かるよね」


旧道はカノリアからマリスへ最短距離で進める道だが、森の中を突っ切ることになる。その分魔物に襲われる率が高くなるため、ほとんどの者が北側から迂回するように森を避けた新しい道を選ぶ。


娘を大事にしているカーナがそんな危ない道を選ぶのがそもそもおかしい。例え、武力に自信があっても息子のキリアが止めるだろう。だが、グリムが言っていることが本当なら知らなかったのか?いや、冒険者は必ず危険の把握を行うはずだ。それもAランクの冒険者がそれを怠るはずがない。なら、カーナ達は知っていて旧道を選び進んでいたことになる。

あんな事件があった次の日にそんな道を選ぶか?

安全を確保するためには騎士の巡回がされている新しい道を選ぶのが妥当のはずだ。それなのに·····いや、だからか?

カーナ達のことを考えながら、グリムから渡された書類に目を通した。


「つっ!お前っ!·····これ、またやったな!」


グリムから渡された書類には、この街であいつらが何を購入したのかという物品のリストとあいつらの所有している衣類などが記入されたもの、軍馬に乗っていた時の移動時刻が記入されたものなどがあった。


いつもグリムは、どこから集めたのか分からない情報を持ってくる。その情報に嘘偽りがなく信頼性の高い情報であることは今までの経験上確かなのだ。ただ、この様に情報を集めるのは楽しそうなことが起こると確信しているためであり、最終的には国のためになるが、俺たち部下には厄介事でしかないのだ。だから、俺たち部下はそれをグリムのイタズラと呼んで恐怖している。ほんと、嫌な上司だ。


あいつらの服装やこの街での購入内容から寒い地域へ行く準備はされていなかった。逆に暖かい地域へ行くための衣類が多数を占めており、年中温暖な気候のリンザール国に向かっていると言われても納得出来た。しかし、マリスも今は暖かい季節のはずだ。

薄手の衣類が多いから温暖な国へ行くなど安易な考えでグリムが判断するはずがない。なら、なぜ·····

細かく記載された情報の中からカーナとキリアの情報が出てきた。他の情報に比べるとあまりに少ないが、俺が独自に調べた情報より詳しく記載されていた。

カーナの登録ギルドはリンザール国のパルドネであることやカーナの親族があのガーネット商会の一員であることが記載されていた。


「おいっ!あいつ、あのガーネット商会の親族だったのか!?カーナ達の情報が入ってこないわけだよ。おい、知ってたなら俺に一言あってもいいだろうが!大変だったんだぞ!!」


「だから、藪をつつくようなものだと言っただろ?それに、そんなに怒鳴り続けたら倒れるぞ」


「誰のせいだと思ってるんだっ!ほんと·····勘弁してくれ。大人しいと思ったら、また厄介事を持ち込みやがって·····はぁ」


気にしたら負けだ。こいつの隊に引き込まれた時点で俺の立ち位置は決まってしまったんだから、この劣悪な環境に順応した方が早い。こいつの行動は俺には変えられん!

早々にグリムの説教や説得、調教を諦めて考えを巡らせる。


ガーネット商会は、世界有数の商会でその品揃えはどこの商会にも負けず、その品は全て高品質な状態で適正価格で売られているため、王侯貴族から庶民にまで慕われている商会だ。情報網が凄まじく、どこの国の情報機関より多くの有益な情報を所有していると言われている。

商会主達は色々な国を行き来しており、一所に留まらないためか、ガーネット商会の名前は広く知られているのに商会主の情報は知られていない。貴族が絡んだ公の場にも出てこない徹底ぶりで、顔も知られていない。それでも、ガーネット商会を断罪することは出来ないのだ。手を出せば痛い目を見るのは明らかなのだから。

ガーネット商会は手を出されなければ大人しいため、眠れる獅子を起こそうとするバカは国が密かに排除しているほどだ。

カーナ達に手を出したあの馬鹿どもやグリムの行動がどれだけ面倒事になるか分かることだろう。


まぁ、カーナ達はガーネット商会の関係者だと言わなかったから、商会の力を使うつもりはないのだろう。

そう考えて、カーナ達の行動を予想する。


この間入った情報にガーネット商会の動向があったな。

確か、今はリンザール国のパルドネにいるはずだ。親族の集まりがあるって話だったから、あいつらもそれに参加するためにリンザール国に向かっているのか。

まだ、納得のいかない点が多々あるが、ガーネット商会の関係者にこれ以上首を突っ込めば痛い目に遭うのは俺たちの方だ。ここは水面下で情報収集に努め成り行きに任せるしかないだろう。

それに·····ほっといてもグリムのイタズラで嫌でも関わることになるだろうしな。それまで、平凡な日常の幸せを噛み締めながら、あらゆる事に対応できるよう準備して過ごすが吉だろう。


諦めの境地に立ち、目が死んだ状態でグリム隊長を見ると、面白そうに笑いながら「やっぱりガイルを引き抜いて正解だったなぁ」と呟いた。


「ほんと、勘弁してくれ。俺がお前のせいでどれだけ大変か分かっているなら、自重しろっ!」


「酷いなぁ、まるで全て僕のせいみたいじゃないか。国のため、民のために一生懸命働いているだけなのにぃ」


机に顔を預けて、だらしなく両手をばたつかせるグリムを呆れた目で見ながら溜め息がでてしまう。


「いや、自分が面白そうに感じないものには見向きもしないくせに、何良いふうに言ってるんだ?1度、客観的に自分を見つめ直せよ」


「ふふふ、嫌だ。面白くないものは嫌いだよ」


直ぐに顔を上げて、ニヤリと笑いながらなんの反省もしないグリムに俺は愕然として崩れ落ちた。


そうだった。こいつはそんな奴だった。

ただ、面白そうな事にしか興味を持たない、とてつもなく迷惑な奴で、それに巻き込まれる部下が俺たちだった。

ダメだ·····俺ではこいつの手網を握れない。

また、振り回されるのか·····勘弁してくれっ!!




今日もグリム隊長に振り回されるガイルであった。



「·····ガイル·····がんばっ」


「どうにかしてくれっ!゜(゜´Д`゜)゜。」


「ごめん。私にも無理だ」


「クソっ!作者にも直せないんじゃ、ずっとこのままなのかよっ!」


「·····たぶん、いい事あるよ!元気だしてっ!」


「·····くっ!やけ酒だっ!飲みに行くぞっ!(ノД`)」


「付き合うよ。私がおぼっちゃる!好きなだけ呑んでっ!スッキリしちゃいなっ!(。´・ω・)ノ゛」



ガイル、本当にお疲れ様です!

私はきみが大好きだぞッ!

頑張れ!応援してる!あと、胃薬用意しておくね!



皆様!

お久しぶりです⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝

元気ですか?

いつもありがとうございます° ✧ (*´ `*) ✧ °

皆様のコメントやブックマークに喜びまくっている私です!

誤字脱字もありがとうございます!

本当に助かります⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝

これからもよろしくお願いします(*´艸`)

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